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【鯛の小噺】其の参 鯛の産地

 やはり鯛の産地として名が挙がるのは、明石海峡や鳴門海峡、愛媛の来島くるしま海峡といった急流で知られる場所です。荒波にもまれた鯛は身が締まり、味も良いとされておるためでございます。加えて、これらの地域はエサも豊富なため、身の締まった大物がよく揚がる地域と言われております。

 稀に天然物の鯛を捌いていて出くわすのが、骨にコブがある個体。これは、あまりの流れの速さに一度骨が折れ、それが治った跡だと言われております。異説もございますが、いずれにせよこのコブは急流で育った上物の証とされております。

 鯛は日本全国たいていの場所で獲れる魚なのですが、どういう訳か名産として名が挙がるのはいずれの西の地域。とりわけ瀬戸内海の沿岸部がほとんどです。明確な理由は存じ上げませんが、やはり長い歴史の中で、上方の方が鯛をよく食してきたからでしょうか。瀬戸内海を囲むようにして、今でも各地に鯛を使った様々な郷土料理が残されております。

 その中で例外的なのが、神奈川県は三浦半島の「佐島さじま」。葉山にもほど近いこの地は、関東にありながら上物が水揚げされる地として知られております。

 余談でございますが、真鯛の漁獲高を都道府県別にまとめますと、意外なことに一位が長崎県、二位が福岡県、次いで三位が愛媛県となるそうでございます。

 この他でも、小浜おばまを中心とした若狭一帯では小ぶりの鯛を塩と酢で加工した「小鯛の笹漬け」が名産となっているほか、この地で揚がる甘鯛は「グジ」と呼ばれ、京料理には欠かすことのできない食材となっております。

 鯛は一年を通して需要が高い魚であるため、技術が進んだ現在では養殖も多く出回っております。今では一般に出回るほとんどの鯛が養殖ものと言っても過言ではないでしょう。豊洲や土地の漁港にでも出向かない限り、まず天然物はお目にかかれないのではないかと存じます。

 養殖鯛の一大産地は、やはりこれも瀬戸内に面した愛媛県。その中でも、南予なんよ地方と呼ばれる宇和島市を中心とした地域でそのほとんどが養殖されております。養殖の場合は愛媛県が圧倒的一位の収穫量を誇り、そこに熊本県が続きます。

 天然の鯛のように荒波にもまれることがないので、一般的に養殖物の方が脂気が多く身の締まりがないとされております。このような理由から、養殖が普及した現在でも、一部の食通の方や料理人は挙って天然物の鯛を求めるようでございます。

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