【蓮根の小噺】其の参 加賀蓮根と岩国蓮根
前のお話で後回しにした、加賀蓮根と岩国蓮根。
ともに江戸の頃より、それぞれの城下町で名産品とされた蓮根でございます。
加賀蓮根の産地は、言わずと知れた加賀百万石のお膝元、金沢。
加賀蓮根は、その昔前田綱紀公により美濃の国より持ちこまれたのが始まりと言われ、現在でも金沢市の小坂地区を中心に栽培されております。
金沢には「加賀野菜」と呼ばれる地物野菜がいくつか残っておりますが、もちろんこの加賀蓮根も「小坂蓮根」としてその一つに数えられております。
加賀蓮根の特徴は、何と言ってもそのデンプンの多さ。すらりとして白く、やや小ぶりなのも特徴的なのですが、最大の特徴は、蓮根自体が非常に緻密で、すりおろして加熱すると餅のような粘りが出ること。その特性から、加賀蓮根はまたの名を「餅蓮根」とも。
金沢には作中でご紹介した「蓮蒸し」や「蓮根羹」のような、その特性を存分に活かした料理が今に伝わっております。
さてお次は、山口県は岩国市の「岩国蓮根」。
この地も錦帯橋で知られる古くからの城下町であると共に、江戸時代から蓮根の栽培が盛んな土地でございます。
岩国蓮根の特徴は、何と言ってもその穴の数。
嘘か誠か、岩国の物はぐるりと穴が九つ空いているのだそうでございます。これが代々岩国の領主を務めた吉川家の九曜紋に似ていたことから、殿様に大変喜ばれたとか。
岩国では江戸期から蓮根栽培が奨励され、現在まで脈々と栽培され続けております。また岩国蓮根にも、栽培地の名から取った「門前バス」との異名がございます。
なお、辛子蓮根の話で登場した細川氏も別の九曜紋を家紋に用いており、一説には忠利公が辛子蓮根を気に入られたのはそのことが原因だったとも。蓮根の断面が家紋を連想させたというのは、蓮根の由緒を語る際の常套句なのかもしれませんね。
岩国蓮根も、この地特有の押し寿司「岩国寿司」の具や、煮〆の材料として親しまれており、岩国出身の女流作家である宇野千代も、自身の料理本の中で岩国蓮根を使った料理を紹介しております。




