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十膳目 「空豆ご飯」

 「さ、これでとうとう最後だね」

 「最後はご飯だっけ?」

 「そう、空豆ご飯」

 「まんまだね」

 「ま、フツーにご飯炊いて塩茹での空豆混ぜるだけだからね」

 「陽平さんがそれ言っちゃおしまいでしょ」

 「だってそうなんだもん。まぁ一応、フツーの白ご飯じゃなくて出しで炊くけど」

 「それで、さっき出し多めに作ってたんだ」

 和樹はようやく合点がいったらしく、ボールに入った合わせ出しを見る。

 「そそ。すり流し作る時にね」

 「そーゆーことだったんだね」

 「和樹、ザルに洗い米が入ってるから、それ取って」

 陽平が顎で流しの隅を差し示す。

 「はいはい。また俺は何か雑用させられるの?」

 「もう大丈夫。後は俺だけで何とかなる」

 「っしゃぁ! またこき使われるかと思ったよ」

 和樹が軽くガッツポーズをする。 

 「お望みなら、別に手伝ってくれてもいいんだよ?」

 「いや、丁重にお断りします」

 「だと思ったよ」

 ため息をつきながら、陽平は文化鍋を調理台の下から出す。

 その中に洗い米を入れ、出しを注ぎ、料理酒と醤油を入れて通常の炊飯と同じ分量にする。

 その横のコンロでは、小鍋の中でも空豆が蜜で煮含められている。

 「ホントは浸水させた方が美味しいんだけど、今日は時間がないからそのままで」

 陽平が弱火で火をつける。

 「てかさ、いつも思うんだけど、何で炊飯器でご飯炊かないの?」

 「え? こっちの方が美味しいから」

 「あと、空豆とご飯一緒に炊いちゃわないの?」

 「空豆の色が悪くなるから」

 「へー。ちゃんと全部理由があるんだ」

 「そりゃそーでしょ。水じゃなくて出しにしたのは、そっちの方がご飯と空豆の相性がいい気がしたから。白ご飯だと、空豆の青臭さが出ちゃう気がするんだよね」

 「やっぱ陽平さんってスゴいね」

 「そう思うなら、もう少し労ってくれてもいいんじゃない? その…、一応…、彼氏なんだし」

 滅多に口にしない単語だけに、陽平は口に出したことに気恥ずかしさを覚えた。

 「俺、十分陽平さんに優しくしてるつもりなんだけど?」

 「まぁ、それは否定しないけど…」

 「ならいいじゃん」

 陽平は和樹に上手く言い負かされた気がした。文化鍋の横で、無言のまま塩茹でにした空豆の甘皮をむいていく。

 「ねぇねぇ、陽平さん怒ってる?」

 「怒ってない!」

 和樹が後ろから陽平の腰に手をまつわらせてくる。

 「和樹、仕事しにくいんだけど」

 「いいじゃん、俺こうやって陽平さんが料理してんの見るの好きなんだもん」

 陽平が振りほどこうとしても、和樹は一向に離れたがらない。ご飯が炊き上がったタイミングで、陽平はようやく和樹を力づくで振りほどいた。

 そのままご飯に空豆を混ぜ合わせ、少し蒸らしておく。その間に、これまで作った料理を皿に盛りつけていく。

 五分ほど置いて、もう一度文化鍋のフタを開けた。見た目は白米と大差ないが、出しのいい香りが立ち上ってくる。

 「はい、彼氏の特権」

 「ありがと」

 一口大に握られた空豆ご飯のおむすびを、和樹は大事そうに頬張る。

 「どう?」

 「空豆のほろ苦い味が生きてる。でもご飯も味がしっかりしてて、青臭くない」

 「生意気なことを…」

 陽平が和樹の片頬をつねる。 

 「さ、つまみ食いはそこまでにしてご飯にするよー」

 陽平が皿を食卓に運んでいく。

 「はーい」

 和樹が楽しげな顔で陽平の後に続く。

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