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六十三膳目 「金平蓮根」

 陽平は花蓮根の入ったタッパーを冷蔵庫にしまうと、それと入れ替わりに冷蔵庫から人参を出してきた。

 「次は人参使うの?」

 「うん。人参と蓮根で金平きんぴらを作ろうと思って」

 「陽平さん、たまに蓮根の金平作ってくれるよね?」

 「牛蒡で金平作るより、蓮根で作る方が楽なんだよね」

 「そうなの?」

 「あっ、そうだ」

 陽平が何かを閃いた顔をする。

 「どした?」

 「今日は和樹に金平作ってもらおうかなぁ、と」

 「えー」

 「実際そんな難しくないから。今のお前なら、十分作れるレベルの料理だよ」

 陽平は和樹にピーラーを手渡す。

 「とりあえず、人参の皮をピーラーでむいてごらん。蓮根も必要な分切り分けてあげるから、同じように皮むいてみて」

 「うん」

 和樹が流しで人参を洗い、その場でピーラーを使って皮をむいていく。

 「はい、人参むけたよ」

 「おけおけ。じゃぁそのまま蓮根もお願い」

 陽平が切り分けたばかりの蓮根の塊を和樹に渡した。ややぎこちない手つきではあるが、和樹は蓮根の皮もするするとむき取っていく。

 「はい、蓮根もむけたよ」

 「人参切るなら、和樹は包丁よりスライサーの方がいっか」

 「俺、スライサー怖いんだよね…」

 「ちゃんと固定して使えば大丈夫。無理に力を加えるとケガの素だから、手の力抜いてゆるーく滑らせてごらん」

 陽平の指示を受けて、和樹が手の力を抜いて人参を輪切りにしていく。その様子を、陽平が脇から見ている。

 「ゴメン、ここまでが限界」

 和樹は人参を四分の三ほど削ったところでギブアップした。

 陽平がやれやれといった顔で残りの人参を手に取った。

 「まぁ、最後少し残っちゃうのは仕方ないね。よし、今度はその輪切りの人参を何枚か重ねて、包丁で細切りにしてって」

 「こんな感じ?」

 「そうそう。ゆっくりでいいから」

 同居を始めてから陽平にこき使われてきたお陰で、和樹の包丁使いもそれなりのものである。到底陽平に敵うものではないが、簡単な刻み物ぐらいなら陽平が安心して任せられるぐらいに成長していた。

 「で、蓮根は包丁で切れるだろ?」

 「ま、まぁ…」

 「じゃぁ蓮根はいちょう切りで」

 和樹は立て続けに蓮根も切っていく。陽平は時々指示を出しながら、その横でこれからの料理の支度をしていた。

 「はい、蓮根終わったよ」

 「お疲れー。これで下ごしらえはこれで完成。和樹、フライパン出して」

 「油敷いて、炒めるんだよね?」

 「はい、ではここで和樹君に問題」

 「いきなり何?」

 「ここで使う油は、オリーブオイルと胡麻油、どっち?」

 陽平は和樹にオリーブオイルと胡麻油のビン、両方を渡す。

 「えー、どっちでもよくね?」

 「まぁ、どっち使っても作れなくはないけど、この後胡麻を入れるから、胡麻油の方が相性いいかな」

 「で、胡麻油を敷いて炒めるんでしょ?」

 「まぁ、そう先を急がずに…。次にこの時、人参と蓮根、どっちから加える?」

 「えー、蓮根じゃない?」

 「その根拠は?」

 「テキトー」

 和樹の頭を陽平がポカリとやる。

 「蓮根の方が厚みがあって、火の通りが遅いからです」

 「はいはい」

 指示の通りに、和樹は胡麻油をなじませたフライパンで蓮根から炒め始め、蓮根が少し半透明になってきた段階で人参も加えた。

 「んで、ここに、醤油、砂糖、酒、味醂を加えて」

 「どれをどれぐらい入れるとかあるの?」

 「んなの感覚よ」

 「それじゃ分からないってば」

 「じゃぁ…、まず酒の容器持って。ストップって言うまで入れて」

 「分かった」

 和樹は他の調味料も、陽平の指示でフライパンの中に入れていく。

 「後は…、少し水入れて、そのまま汁気を飛ばして、仕上げに白胡麻と一味を振って完成」

 「まぁ、そんなに難しくはなかったね。疲れたけど」

 「この程度で音を上げないの」

 「だってー」

 五分ほど煮立たせ、フライパンの中の汁気がほとんどなくなった頃合いで、陽平は和樹に再び全体をもう一度混ぜさせ、白胡麻と一味を入れさせた。

 「さ、自分で作ったんだから、先に味見してごらん」

 そう言われて、和樹は菜箸から直に味見をする。

 「せめて別の箸で取ってほしかったんだけど…、まぁいっか。それで、味は?」

 「いつも食べてるのと同じ味がする!」

 「どれどれ…」

 陽平も自分の箸で味見をする。完全に自分の目分量で味つけをさせたが、何とかほぼいつも通りの味に収まっていた。

 「よし、これで作り方覚えたでしょ? 次からよろしくね」

 「えー、俺また金平作らされるの?」

 和樹があからさまに嫌そうな顔をした。

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