この度、召喚されました―2―
「この国の現状を話す前に質問などはあるか? 質問があれば先に答えようと思う」
俺達は顔を見合わせる。
――よくある、教育実習生(女)に「質問ある?」と聞かれ、
「お前いけよ」
「いやお前がいけよ!」
「えっと〜先生は彼氏いますかー?」
「ぎゃははは! お前それ聞くのかよ!」
――とか言うような雰囲気ではなく、どこか神妙な雰囲気を醸し出しながら、
「お前いけよ」
「いやお前がいけよ!」
と目で訴えかけている。
「えーと...では俺――私から一ついいでしょうか?」
確か謁見ではまず、王の許可を得ないといけなかったはずだ。
(地味に面倒くさい。)
「良いぞ」
「元の世界へは帰れるのでしょうか?」
みんなが疑問に思っているであろう言葉を言う。
すぐそばから、唾を飲み込む音が聞こえそうだ。
「それに関してはこちらで用意している。ただ、帰るにもこちらの条件を飲んでほしい。先も述べたように、魔族共を退けてほしいのだ」
(それ半強制的じゃねーか!)
魔族を退けるまで帰さないと言外に言っているが、
「帰れる」という言葉を聞いたみんなは安心した様に胸を撫で下ろしていた。
「他に質問はあるか?」
「一ヶ月後に試合をするとおっしゃいましたが。私どもに戦闘の知識はおろか...経験もないのですが」
――さっきの質問で安心できたのが起爆剤となったのか、みんなは次々と質問をしていく。
まず一ヶ月後の試合。
これに関しては、この世界には『ステータス』というのがあるらしい。『勇者見習い』は軒並みステータスが高いらしく、そこらの雑兵では相手にならないくらいだとか。
俺達の使命を詳しく。
『ユーラザード国』は大陸の南側を大きく占領している国らしく、南側は海に囲まれているらしい。
北側には『メルドアーム帝国』があり、この大陸一の大きさを誇るらしいが、周りを他国に囲われているためか、頻繁に小競り合いが起こっているとか。
東北側には『エルドワーフ連邦国』がある。この国は『エルフ』と『ドワーフ』が共存している国で、友好的な関係らしい。
北西側には小国『ドラゴニア国』がある。この国は竜人達の国で、小国だが戦闘能力が非常に高い者達が多く、帝国とも頻繁にドンパチしているらしい。
そして問題の魔族達だが、どこから侵攻してきているのかというと――海を隔ててさらに南側から進行してきているらしい。
魔族が来るまでは、
「この国北だけ守り固めれば最強じゃん! マジ卍」
みたいな感じだったらしいのだが、魔族が侵攻してきたことにより南側へ兵力を割かないといけなくなる。
その情報がどこからか漏れたのか、帝国から今まで以上に啄まれ、上層部は混乱状態らしい。
だから、一刻も早く勇者を召喚しようということになったそうだ。
つまり、要約すると。
「早く強くなってくれたら、帝国への牽制と魔族の撃退が両立できるから、なるはやで頼むよ♡」
ということだ。
これからの活動。
まずは一ヶ月後に向けての特訓。
最初の十日は体を慣れさせるのと、剣や魔法の修行。その後は魔物相手に連携練習と並行してレベル上げ。
今までの統計上『勇者見習い』の素のステータスは高いらしく、まずはそのステータスに慣れるのが先決らしい。
一ヶ月後に試合をし、それが終わったらまた予定を組み立てるらしい。
「質問は以上か?」
俺達は互いに顔を見合わせ、頷く。
「それではステータスを開示してみせよ!」
王はそう言いながら、左手をバッと横に振る。
「カッケェ...」
(え...カッコいい? あれが?)
ギョッと目を見開き、そう言葉が聞こえた方を見てみると、顔の濃い坊主に近い髪のテンパ少年が居た。
一瞬おっさんかと思ったが、制服を着ていたので多分学生だろう。
(いや、コスプレという線も...?)
「それでは皆様、
『ステータス』と言葉を発して下さい」
目の前に走ってきたおじさんがそう言う。
(文官的な役職の人か?)
『ステータス』
そう皆が口々に唱えた。
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