表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

秋葉原ヲタク白書86 萌え印の絆

作者: ヘンリィ

主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。

相棒はメイドカフェの美しきメイド長。


この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第86話です。


今回は、前話で"萌え印"を押され"喜び組"に売り飛ばされかけた王女の上司に人身売買カルテル黒幕の疑惑がw


王女の解雇の真相を探るコンビの前に謎のパパラッチや萌え系オバさんが入り乱れる中、明かされる上司の正体は?


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 真夏のレイオフ


「君はクビだ。調査は中止」

「…ココ、何処?」

「アキバ」


クビになった王女は最悪ょ。金もカードも職歴も奪われて…

はい、ソレまで。ショボいアキバのヲタクにも食らいつく。


ヲタクも頼りナイ。


ソロバンづくの今カノ「売っちゃえば?」

仲間を売る相棒「ヲタクは金欠だからな」


しかし、私は会社に復帰スルまで、決して諦めない。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


あ、オープニングはエビアのコトだょ。


エビアは、産油国の王女だが王位継承順位は346位と御気楽な身分。

アキバが気に入って、保険会社の調査員としてオフィスも持ったが…


突然解雇(バーンノーティス)されました!うえーん」

「えっ?お目付け役のミライさんは?」

「ロンドン出張中で何が何やら…」


海外ドラマで見る失業者みたいに色々と入ったダンボール箱を抱え泣き顔だ。

確かオフィスは中央通りだから、昭和通りまでダンボールを抱え歩いたのか?


あ、ココは僕の推し(てるメイド)ミユリさんがメイド長を務める御屋敷(メイドバー)

王女様が御帰宅スルから"ティファニー(でちょうしょくを)バー"と呼ばれる。夜だけどw


「私を突発解雇(バーンノーティス)した人の名前を知りたいの!そうすれば、また元の"国際秘密保険調査員"に戻れるわ」

「え?何?その昭和テイストのお色気番組から抜け出たような肩書きは?絶対ミニスカでハイキックとかしちゃうょね?」

「プレイガーlululu…」


おおっ!期せずして御屋敷常連達が一斉に超スロー録音再生ボイスのマネを始めるw

しかし、みんなよく知ってるなぁ!生まれる前だろ?口マネは幼稚園児レベルだが←


「何でも陰謀論にしちゃうヲタクパワーには毎度敬服しますが、とりあえず、今は名前を調べるだけで良いわ」

「いや!ソレだけでは全く不十分だ!ソイツがエビアの上司なのは、タマタマじゃなく、意図的なら?採用の際には何度も面接や身辺調査があったンだろ?採用って身辺調査には絶好の口実だ」

「情報?私に関するコトなら、王家のHPに全部出てるわ。ママが処女懐胎した(パパがいない)コトも、みんな載ってる」


僕は、人差し指を立て首を横に振る。


「甘いな。僕達のコトだょ。エビアの解雇通知者は、自分にとり何か不都合なコトがあり、エビアを解雇した。しかし、奴はエビアがアキバでも直感鋭い僕達とツルんでると知ったら?」

「あらあら。テリィたんは、自分の心配をしているの?」

「自分"達"の、だょ。アキバのヲタク全てさ。奴は、僕達の存在を知り恐怖スル。いずれ、アキバのヲタクが一丸となって、自分の不都合に迫ってくると!数は強みだ!1人1人は気弱なヲタクでも、アキバ全体が敵に回ればひとたまりもナイ!」


…フト気づくと、エビアはカウンター越しにミユリさんと"1度塗ると絶対落ちないリップ"の話をしてるw完全に乾かすのがコツ?


「あのね…とにかく!奴は僕達に身代わりの犯人を差し出すコトにしたワケだ。バーに指紋つき携帯を仕込ませてサイモをハメた。奴をメラニ誘拐の犯人に仕立てれば、全て終息スルからな」

「そうよっ!…って、何の話だったっけ?」

「僕のプロファイリングに拠れば、解雇者は資産家で究極の変態野郎に違いナイ。もちろん、イケメンカルテルの人身売買屋とも親しい御友達だ。変態だから」


ん?僕は、とっくに解決したイケメンカルテル事件を独りで蒸し返したがってるのか?

しかし、カルテルを操る黒幕はホントにいるのカモ…ま、良いか。誰も聞いてナイし笑


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ところが、翌日、僕は万世橋(アキバポリス)に呼ばれ、マジックミラー越しに取調室を見てるw

1人のスーツ姿のクールなビジネスマンを2人がかりで取調中。息を殺し見守る。


「デルバさん。この写真の男に見覚えがあるかな?」

「さあ?知らない顔ですが」

「アーヴ・リアコ。半島系のマフィアで主に人身売買をやってる」

「この男ならスマホTVのニュースで見ましたよ。萌え系店員の拉致監禁でしたっけ。ねぇ私の容疑は何でしょう?」

「貴方は、今、話が出た事件の重要参考人だ」

「御冗談でしょう?私もニュースを見ましたが、犯人はこの男で解決したのでしょ?」

「実は…その点に疑問の余地がアル。と逝うのも貴方は5年前、日本橋(にっぽんばし)にいたょな?」

「在阪企業の買収のため、半年ほど滞在しました」

「その期間に、別のメイドがメラニ同様暴行されて同じ焼き印を入れられてる。だが、彼女は逃げた。犯人の足の指を折って逃げた。まさか貴方も右足薬指と中指を骨折したりしてナイょな?」

「足の指ですか?!た、確かに大阪に逝ったらキックボクシングが流行ってて、サンドバックと戦い敗北を喫し…でも!ソレって全部単なる偶然ですょ!状況証拠にもなりゃしナイ。じゃ、コチラからも伺いますが、そのメラニって子が暴行を受けたメイドの名ですか?」

「(あ、口が滑ったw名前は非公開だた)捜査上、話せない」

「では、私も以上です。メラニさんには同情を禁じ得ません。ところで、私は警察のOB会、遺族会など複数の団体に多額の寄付をしています。その寄付を気まぐれで引き上げるコトにならぬよう、この件は善処しろ。じゃ帰る」


そのままガタンと椅子を引いて立ち上がり、スタスタ部屋を出て逝く。

茫然と見送る刑事達。え?こんなんで帰して良いの?止めないのかょ?


「クロだょねぇ。鮫の旦那、奴の顔にそう描いてあるゼ」

「だょな。あの男、まんまと話をメラニに持って逝きやがった」

「アキバには、サイモの犯行を示す物証しか無いモノなぁ」


僕は、傍らの新橋鮫に話しかける。彼は、万世橋(アキバポリス)の敏腕刑事で、彼には色々貸しがアル。

今回僕を呼んだのも彼で、どうも関西から情報を得て万世橋(アキバポリス)は本件を蒸し返すみたいだw


この王女モノ、結局3部作になりそうw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


早速"蒸し返し"の件をエビアに御注進。


「まぁ。でも、何で鮫さんは、テリィたんに取調べを見せたの?」

「関西から新情報が寄せられたのに捜査が行き詰まってたからさ!僕の鋭い直感と洞察力が最後の切り札となる。鮫の旦那もお目が高い」←

「鮫さんは、自分では蒸し返す気が起こらなくて、テリィたんに丸投げしたがってルンじゃナイの?」


カウンターの中でメイド服を着たエビアが笑っている…メイド服?

そう。突如失業したエビアはミユリさんに泣きつき臨時ヘルプにw


開店直後のカウンターは、ミユリさんに正ヘルプのつぼみん+副ヘルプのエビア。

ヤタラ華やかと逝うかコロナ不況下に無駄に賑やかな気もスル…御帰宅(おきゃく)は僕1人←


「で、テリィ様。新橋鮫さんは今、何を?」

「だから、そのデルバってクールなビジネスマンを詳しく調べて…うーん、でも彼は帰っちゃったからな。確かに鮫の旦那のヤル気は微妙だw実は、取調べの模様をコッソリ動画に撮って来たンだけど、見る?」

「あっぶないマネを!全くテリィ様は…あら?どうしたの、エビアちゃん?」


ミユリさんに逝われ、エビアの方を見ると…

大きく目を見開いて、ワナワナと震えてる!


「この男が大阪でメイドに焼き印を押したのですかっ?!」

「いや。カモしれない重要参考人だ。証拠不十分で不起訴になってる」

「動画の声を聞いただけで息苦しくなった。この声は、私が拉致監禁され"萌え枠"の"焼き印"を押された時に聞いた声です。そして、彼は…私がいた保険引受会社の上級副社長。恐らく私を突発解雇(バーンノーティス)した男に違いありません!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"萌え枠"とは、半島の"喜び組"にアルと噂をされている"ヲタク女子枠"のコトだ。


領袖の代替わりに伴い"喜び組"も総取替とナルが、ソレに伴い新設された枠らしい。

新領袖のヲタク趣味に合わせ、アキバ系女子に"焼き印"を押し拉致してるとの噂だw


僕がアキバで知ってる"焼き印"女子は2人で、1人は"モロッコビル"の外人バー勤務のメラニ、そしてもう1人がエビア王女だ。


確かに2人共"萌え顔"してるw


ただ、この2人は2人共、半島へ"輸出"される直前にカルテルが壊滅、難を逃れている。

と逝うのも、カルテル幹部のアーヴが万世橋(アキバポリス)の男娼館へのガサ入れで検挙されたからだ。


コレで終息と思った矢先に関西からの情報で役者が1人追加になる。

確かに、男娼館を実際に仕切ってた悪漢サイモも逃走中と来てるw


「私、やはりアキバを出て逝くわ。数日前、テリィたんの忠告通りに帰国すべきだった。もう、こんなの耐えられない。私には、人身売買カルテルと戦うなんて、早過ぎるわ。王妃(ママ)とも話して、明日の朝1便を予約した。憧れのメイド服も着れたし、もう悔いはありません。ヲタクを休みます。御迷惑をおかけしました」

「バカ言うな。ヲタクがアキバでヲタクを休むなんて聞いたコトない。コチラこそ大変申し訳ナイが、その謝罪は無効だ」

「気づいたの。私はヲタクとしても明らかに未熟で、みなさんの足手まといになるって。帰国します」


第2章 最終便が飛ぶ前に


王女3部作になるや、肝心の王女が帰国w


「テリィ様、ごめんなさい!"メイド長権限"でショートノーティス稼ごうとしたのですが…でも、記念品の"メイドウォッチ"は渡せました」

「ありがと!ソレに、彼女が帰国してもリクエストは未だ有効だ。引き続き、ヲタクパワーで真相を暴こう」

「サイモは、つぼみん経由で虎吉さんに探してもらうコトにしました。でも"いかがわしい筋"からの情報だと、既にアーヴに消されてルンじゃナイかって…」


虎吉さんは、界隈を仕切る若頭で、つぼみんは"その筋"の会長の孫娘だ。

しかし、クールなビジネスマン、デルバとの接点がどうしても得られナイ。


「ココ数年で"輸出"されかけたのがメラニとエビア王女だけとは思えない。かと逝って"焼き印"のあるメイドは他に見つからナイし…」

「もしもですケド、常習犯なら死体処理にも熟練してるカモしれません。特殊部隊(デルタストライク)にいるサリィさんから、死体が出ないか、出ても焼き印の痕跡が消されてる可能性がアルって逝われました」

「ソコで、この箱だ!この箱に入ってるのは、アキバで起きた過去10年分のメイドの拉致・殺人事件のファイルだ。無理逝って鮫の旦那から借りて来た。全部未解決だが、デルバが何れかに関わってる可能性はアル」


僕とミユリさんで昼下がりの御屋敷。開店は夕方だから、僕達以外には当分誰も来ない。


「さぁ!夕方までに全資料を読み込むぞ!」

「はい!干し草の山から針を捜し出しましょう!」

「おお!長い昼下がりになりそうだ…あ、あれ?」


ん?誰かから写メが…ややっ?!


「テリィ様!何ですかっ!コレはっ?」

「ミ、ミユリさん…では?」

「いえ。こんな…こんなに大きくは…」


バストショットだw


いや、証明書用の上半身ではなくて、赤ビキニのブラに包まれたバストのドUP写メだ!

まぁ無理して寄せて上げてるから超巨乳とは逝えナイがミユリさんより大き…わわっ!


逆上した?ミユリさんが(ササやかな)自分の胸の谷間を僕の顔に押し付けて来て…

おおっ!何すんだ?コレから読み込み…え?服、脱げ?ソコへ謎メールの本文がw


「私の"バストフレンド"へ」


は?何だって?


助けてくれぇ!

僕は…無罪だ←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


流行りの電波ソングを歌いながら、外階段を登って来る規則正しい足音は…つぼみんだw

タフなミユリさんを仕留めてからグッスリ眠り込んでしまったのだが…ぎゃ!もう夕刻←


慌ててズボンを履き、裸のミユリさんを狭いバックヤードに押し込みw資料を読むフリ!


滑り込みセーフ←


「あら?テリィたん、おはよーございます。どーしたの?上半身が謎の裸ですが…わ!暑いっ!」

「やぁ、つぼみん!実は"メイド焼き印"事件の資料を読み込み中だ。集中力を持続させるために冷房を切ってイル。その関係で"止むを得ず"上半身が裸だが、このお陰で資料と僕の間の邪魔モノを省けて理想的なプロファイリングが可能だ。なお、全てミユリさんのOKを得てイル」←

「ああっ!ソレなら何の問題もありません!で、何か進展はありましたかっ?!」

「も、も、も、も、もちろんだ!エビア王女とメラニに外見と年齢が近く、遺体が未発見、或いは焼き印が判別不可の状態で発見された者達の中から、薬を盛って連れ去る誘拐の手口と異なる、或いはデルバが海外出張中に発生した事件を取り除くコトにより、そうやって絞り込んだ結果を俯瞰するトコロの…」

「でも、確か昨夜はメラニは私達を欺く罠だから無視しようって仰ってましたが」←

「そーナンだ!しかーし!メラニにした他の行為は罠とも思えない、カモしれない。異常者でも正常者でも、等しく己の性癖には嘘はつけないカラね。性癖!コレにはヲタクも逆らえない。きっとデルバは、何か作戦ミスを犯してる、と考えた結果から導き出される結論は…」

「…うーん最早何を逝ってるのかサッパリわからなくなりましたが、ミユリ姉様は何処?今日は早番のハズなのに。バックヤードで着替えてンのかな…」

「わー!違う!絶対着替えてない!バックヤードでは!」

「ん?テリィたん、何か怪しい…」

「えええええっ!何で?心外だっ!辛亥革命1911年!あっ!電話だ!さぁ出ろ!今すぐに電話に出るンだ、つぼみんっ!」


ホントに電話だ。


「あ、新橋鮫さん?テリィたんがいるからスピーカーにします…」

「テリィ、ミユリとちゃんと資料の読み込みやってるか?(あちゃあw)サボってイチャついてンじゃねェぞ(余計なお世話w)。で、デルバの私生活を調べてたら、ある名前が出てきたぞ。レアドって女だ」

「ビンゴ!実は僕も彼女のファイルを読んでたトコロだっ!」

「…そっちのファイルには無い名前だwとりあえず、彼女は未だ生きてる。今からマンションへ行くが、ミユリと来るか?」

「いや。つぼみんと」

「え。つぼみ?」


ガチャン。

叩き切る。


「さぁ、つぼみん!出動だっ!」

「え?コレから開店なんですけど…ってか、テリィたん貴方、裸ょ?」

「え…うわ!」

「きゃ!」


(いぶか)るつぼみんの腕を掴んで、御屋敷のドアを蹴り開けて外階段に飛び出したら…


「恐縮ですっ!テリィたん?貴方がテリィたんですね?おお!上半身裸ですが、何かなさった後なのでは?」

「ま、まさかコチラのヲタク女子と?ソコの貴女、エビア王女からの略奪愛に勝算はアルの?」

「しかし、エビア王女の"バストフレンド"を寝取るとは大和撫子恐るべし。で、テリィたん、国王とは、いつ会われるのですか?」


外階段全体にフラッシュが瞬く!

闇からマイクが突きつけられる!


な、何だ?コレは…パパラッチ?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「我々はパパラッチなのっ!」

「たまごっち?」

「え?何ソレ?笑える。ギャハハ」


なるほど低俗な連中だ…

連中?あれ?お一人様?


御屋敷から出たトコロでいきなりステーキ…じゃなかったフラッシュを焚かれて目が眩んだけどパパラッチは独りだw寂しくないか?


「"週刊 デイリー王族"のルシルです!恐縮ですっ!」←

「え?パパラッチって普通フリーランスだろ?ソレに週刊とデイリーって、どっち?ハッキリして欲しいな」

「いやーん。裸のテリィたんとのツーショを撮られたぁ!私も脱ごうかしら?!TO(トップヲタク)に怒られるぅ(ウレしそうw)」


外階段で向き合い、ソレゾレ思いついたコトを述べ合ったが、特筆すべきはパパラッチw

今回お休みのミライは白い肌のブロンド美人だったが、ルシルは正統派アラビアン女子!


グラマラスなチョコ肌の恋人。

パパラッチにしとくの惜しいw


「おいっ!テメェお嬢に何しやがる!そのカメラ寄越しやがれ」

「Oh!Japanese YAKUZA!How are you?」

「Fine thank you」


いきなり"基会話例文集"になったケド、外階段を下から上がって来たのは虎吉さんだ。

助かった!パパラッチを蹴散らしてくれ!急ぐんだ…日常会話は英語で出来ルンだねw


ところが…


虎吉さんに腕を掴まれても、パパラッチのルシルは微動だにせズ、カメラも手放さないw

虎吉さんも瞬間おや?と逝う顔になったが、睨み合いのママ、僕達に先へ逝けと目配せ。


僕は、床に落ちてたシャツを拾い外階段で睨み合う2人の傍を抜けて昭和通りへと出る。

後から虎吉さんも降りて来て、険しい顔を急に和らげ頭をかきながら、つぼみんに報告。


「すみません、お嬢。カメラは取れヤせんでした。何やら、妙な武術の使い手らしくて間合いがとれねェ」

「良いのよ、虎吉!何処の国の新聞か知らないけど、テリィたんとのツーショが載ったら20部欲しいわ。親戚にも配るから」

「あはは…で、テリィさん」


虎吉さんは僕の耳元で囁く。


「お気をつけてくだせェ。あの女の目つき、間違いなく何人か殺してヤスぜ」


第3章 父と娘


つぼみんには用を頼んで別れ、新橋鮫とは万世橋(まんせいばし)の上で落ち合い、デルバが足繁く通うと逝う、謎の女レアドのマンションを訪ねる。


御茶ノ水の高層マンションだwセレブ?

コンシェルジュに用件を伝えて33Fへ。


ピンポーン。


「ごめんなさーい。少し待って下さるかしら?ジェシ。お絵描きしてママに見せて。ハイ。何でしょう?」


マンションにしては重厚なドアが開き、出て来たのはパーティドレス姿の…おばさん?

透ける繊細レースの襟元が素敵だけど、何処と無く生活臭もwモチロン全く萌えない←


絶対に"焼き印"とか押されて無いょ笑


「すみません。コレから会社のパーティで。でも、何かのお間違いでは?警察には何の通報もしておりませんが…」

「コレは失礼。お勤めは、奨学基金"スタディ&ハード"でしたか?」

「ハイ。上司のデルバさんは理事ですわ」

「数年前、彼の件で警視庁の"セクハラ110番"に相談されましたか?」

「あ、あれは誤解だったの。デル理事とは仲の良い友人よ。今は」

「当時は、セクハラと感じておられた?」

「私、彼の秘書で…確かに理事に御就任の頃に何度か、その、事件と言うか、ソレ以前の男と女の出来事(インシデント)が…」

「男と女のインシデント!何て甘い響き!」

「でしょ!でね。彼のビーチハウスに招かれたの。水着を持ってジェシとおいでと。数週間後また誘われたので迷わズ警視庁の"セクハラ110番"に相談したら、翌日速攻でお詫びが(そりゃそうだw)。彼は好みではなかったの。私、萌え系だから」←

「うーん。申し上げたいコトが肩に降り注ぐ雪のように…」

「何を疑ってるにしろ勘違いよ。デルバ理事は、優しいし、親切にしてくれてます」


新橋鮫が耳元で小声で囁く。


「どうする、テリィ。本人が萌え系と思ってる以外に彼女が"萌え枠"の"焼き印"を押される要素は無さそうだ」

「確かにパーティドレスを脱がして"焼き印"確認スル気も全く起きナイやw」

「恐らく、デルバはナルシストだ。このオバサンや娘に親切にして、善良な自分に浸るチャンスと思ったのだろう。奨学金の理事も注目を浴びたいがためだ」


じゃココで鮫の旦那と選手交替。

虎吉さんから仕入れた情報披露←


「レアドおばさ…レアドさん。お嬢様のジェシちゃんは養子ですか?」

「それが何か?」

「生物学上の両親と会った事は?」

「ないわ。赤ん坊の時に、未だ野菜市場だった秋葉原駅の前に捨てられた子で…なぜ?」

「裏社会のネットワークでは、実の父親は、コチラに足しげく通われるデルバ理事だとのコトです」

「お、お、お、お引き取りください」

「ジェシの頰の内側の粘膜を採取させてください。デルバのDNAと照合します。結果は、直ぐに出ます」


ソコへ、つぼみんから連絡が入る。


「デルバのマンションに着きました。万世橋のおまわりさんも一緒です。令状があるので突入します…あら?誰もいないわ」

「好都合だ。何かDNAを採取できるモノを探せ」

「ヘアブラシで良いですか?髪の毛が付いてます」

「上出来だ。手袋したおまわりさんに渡せ。鑑識(ラボ)でDNA分析をしてもらうンだ。あ、ソレから…」

「はい、何でしょう?」

「おまわりさんに何かお願いする時は、丁寧にな!何でも、御苦労様ですが、って必ず付けルンだぞ!」

ROG(りょうかい)


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


デルバの話は、レアドおばさんはモチロン、新橋鮫も初耳で驚いていたけど…ソレでもパーティの幕は開くのだ。Show must go on!


「皆様のお力により、本年も数多くの志アル学生達が、最先端の大学教育を受けるコトが出来ました。当"スタディ&ハード"奨学基金の今後の展望を語るのは、惜しみない寄付と支援によって当基金の精神を体現する人物です。デルバ氏!」

「このインスタ映えする場で御挨拶する栄誉に浴したリッチな私も、いつの日か天国の門で審判を仰ぐ運命にアリ…」

「あはは…」


駅近のホテル"24"のメイン・バンケット。

満員の客を前にパーティジョークが決まる。


ロイズ傘下、世界でも有数の保険引受会社(アンダーライター)の上級副社長デルバの弁舌が冴える。

ジョークに沸き、論点に頷く聴衆に交じって彼を冷ややかに見遣る2組の視線w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田川沿いの廃ビル地下室。


「ねえ?"焼き印"って、どの位熱くするの?こんナンで焼き加減はどう?デルバ?ねえ?話してよデルバ?何とか言ってデルバ?自分を焼こうとスル奴達から名前を呼ばれるのって嫌なモンでしょう?私も嫌だった。そのせいもあって、名前を変えたの。アンタにまた見つからないために変えたワケじゃナイ。今夜アンタはヒドい"焼き印"を押される。爛れた皮膚は、私がシンクで溶かす」


世にも恐ろしいコトを逝っているのは…エビア王女?既に帰国したのでは?ココで何を?

そして…王女の前の粗末なイスに厳重に縛りつけられサルグツワを咬まされているのは…


デルバ上級副社長?


さっきまで、華やかなパーティ会場で挨拶してたデルバが廃ビルに拉致監禁されてる?

その彼のサルグツワを更にキツく締めるのは…チョコ色の恋人、パパラッチのルシルw


「パパ、パパってうるさいのょ。私のパパラッチの変装って、そんなに微妙?」

「うー、うー、うー!パパ、パパ!」

「"焼き印"の焼き具合はこんなモンかしら?ルシル大尉」


ルシル大尉?軍人なのかw

もしかして、拉致のプロ?


僕は、地下室の鉄扉を思い切り叩く!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「僕も以前やった。以前に1度、こんな境遇にいたょ。王女と同じコトをしようと」

「死んだ方がマシな恥辱を受けて、その復讐を?」

「薬漬けにされた元カノの代わりにね。でも、やり遂げられなかった」

「アキバのヲタクはやさしいから」

「この匂い。ナツメグで皮膚を溶かすつもりだったの?」

「…なぜココが?」

「ミユリさんが渡した"メイドウォッチ"に追跡アプリが入れてアル」

「全く…じゃ私が実際には帰国してなかったコトも…」

「知ってた」

「そして、こーして私の邪魔に来たの?」

「コレはヤハリ邪魔なのか。アラビアンな王女の気持ちは、アキバのヲタクには謎過ぎる。王族として逝きるって、時にこんなコトも必要なのカナと」

「必要なのよっ!」

「だが、確信がなくて、目の前の警察の捜査に身を委ねた。王女が何か行動に移す前に、警察が全容を暴けば、王女とコチラの美人傭兵は厄介な決断をせずに済むかもしれない。だが、もし暴けなかった場合は…」


ココで、パパラッチのルシルが割って入る。


「失礼、テリィたん。私は、王女の危機的状況を知った本国より、警護のために急遽派遣された王室警備隊のルシル大尉。傭兵(PMC)ではないの」

「よろしく、大尉。僕達はヲタクだから、敬礼はナシだ」

「テリィたんは…なぜココへ?」

「王女のリクエストだ。僕達は、王女を突発解雇(バーンノーティス)した者が誰かを暴きに来ている」

「コレが私のリクエスト?テリィたんの、この介入が私のリクエストだと逝うの?」

「デルバ氏を辱めて王女の傷が完全に癒えるのなら、僕達は止めない。だが、彼が王女にとり特別な存在である明らかな証拠を掴んだ。ソレを知らせておきたかった」

「私と何か関係あるの?デルバが私に"押印"したコトに関係がアルの?」

「大アリだ。因みに"押印"したのは、デルバ氏ではなく、サイモだ。彼は目下、逃走中だけど明日早く、ナゼかビニールテープにグルグル巻きにされて、万世橋(アキバポリス)前に放置される"予定"だ」

「では、このデルバは?サイモの黒幕なの?」

「サイモの黒幕はアーヴで既に検挙済み。彼がラスボスで、ソレより上はいない」

「じゃ、このデルバ…さん、は何者?」

「僕には、わからない。王女が今夜、どんな運命を受け入れ、決断をしようとも、王女は僕達にとって、ずっと特別な存在だ。そして、王女はコレからも、ずっと僕達の友人でアリ続ける」


僕は、深呼吸して告げる。


「このデルバ氏は…君のパパだ」


第4章 アキバの全てを学びたい


デルバ氏は常軌を逸した病的ナルシストだ。


仕事柄、世界各地に愛人がおり、妊娠に気づくと、いつも異常な行動に出る。

恐らく、自分が命を見出したコトに感じるモノがあるのだろう。出産まではw


「矛盾してるわ。何かを感じたのなら、なぜ新たな命を見捨てるの」

「所詮は私生児だ。社会に説明出来ない」

「貴方が見出した命なのょ?」


サルグツワを解かれたデルバ氏とエビア王女、世界で最も不幸な父と娘の会話だ。

デルバ氏は、大阪で、アキバで、世界各地で奨学金の理事に就任、寄付を繰り返す。


ソレが、自分が見出した新しい命の人生に関わりを持ち続ける唯一の手段と考えるから。


「貴方は今夜はツイてる。貴方に"萌え印"を押すのはヤメるわ。今夜、貴方が見たのは、仮面をつけた偽りの私。仮面には詳しいでしょ?貴方が生涯つけてきたモノだし?でも、私は今夜、仮面を外すわ。次は貴方の番ょ。パパ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌日の御屋敷(ミユリさんのバー)


「結局、デルバ氏は人身売買(イケメン)カルテルとは無関係だったワケ?」

「無関係?鑑識のDNA鑑定書付きの実の娘が拉致されかけたンだから、無関係ではナイでしょ?」

「うーん。エビア王女が"萌え顔"だったのが全てを繋ぐ唯一の接点だったワケか。間違いなくパパ似じゃナイから"王妃"が"萌え顔"ってコトにナル。見てみたいな」←


そう逝えば、御茶ノ水の高層マンションにいたオバさんも自称"萌え系"だったな…

常連の会話を聞き流し、そんなコトをボンヤリ考えてたら、つぼみんが絡んで来る。


「結局、虎吉がサイモを見つけたのは、神田の駅前だったの」

「あの猥雑さもコロナで閑散として、探し易かったンじゃナイの?」

「駅前風俗を仕切るロザリ姉さんが探すの手伝ってくれたそうょ。テリィたんによろしくって…」


危ない!ミユリさんの目からデス光線が…

飛んで来ない?柄にもなく…しおらしい?


「テリィたんが書類の読み込みした日の夜、結局ミユリ姉様が遅刻して御屋敷を開けたらしいンだけど、頭につけたカチューシャが後ろ前だったんだって。ソレも一晩中ょ?珍しいって思わナイ?」

「そ、そ、そ、そ、そぉか?」

「あ。コッチです!おかえりなさいませ、大尉」


今回の主役?エビア王女と警護のルシル大尉が御帰宅して来る。

仰々しい肩書きだけど、傍目には普通のヲタクな女子の2人組。


「あら、つぼみん!ゴシップ用の写真、撮り直しに来たわょ。外階段でOK?」

「え?ゴシップ用の写真?」

「ホラ、私は表向きはパパラッチだから。王女の"バストフレンド"が秋葉原でメイドと浮気!コレは絶対スクープよ!素晴らしい絵になるわ!」


つぼみんとのツーショットは、前回撮られてるが、あの時は、つぼみんが私服だったのでメイド服バージョンで撮り直すとのコトだ。


外階段に連れて逝かれ、メイド服のつぼみんと腕を組み、飛び出して来たパパラッチに思い切り驚いて変顔wテイク6でやっとOKだw


ヤレヤレと思ったら今度はエビア王女に腕を引かれ外階段の踊り場で向き合う。大忙しw


「テリィたん。私は正しいコトをしたのかな?」

「当たり前さ。危うく実のパパに"萌え印"を押すトコだったンだぜ?」

「そう逝って貴方はいつも私が救われた、と言うけど、ホントはアキバが私を救ってくれたのょ」

「…この街を出るつもりなの?」

「何処が良いかしら?テリィたんの教えを生かせるどこか。そして、私が無邪気なヲタクでいられるどこか。ねぇ。質問とかあったら、タマに連絡しても良いかしら?」

「モチロンだ。歓迎する」

「ううん。やっぱりウソ。そんな"どこか"なんて何処にもナイわ。私、アキバが私に教えてくれるコト、もっともっと学びたい」

「じゃ…明日も、明後日も、その次も御屋敷に来れば良いと思うょ…ねぇ王女様。もう1回生まれ変わったら、君は何になりたい?」

「アキバのヲタクになりたい!ソレから、この言葉は長いコト、誰にも言ってなかったけど…"愛してる(アイラブユー)"。貴方は私の…ストフレンド」

「えっ?何だって?」

「貴方は私の…ストフレンド」


うーん、バ?べ?どっち?笑



おしまい

今回は海外ドラマでよくモチーフになる"パパ探し"をネタに、秋葉原が大好きな産油国の王女、彼女につきまとう謎のパパラッチ、王女を突発解雇スル上司、セレブな萌え系オバさんとその娘、界隈を仕切る若頭などが登場しました。


海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、コロナで夏コミのない初めての夏を経験した秋葉原に当てはめて展開しています。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ