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エニシミエシミ~異能女子お仕事徒然帖~  作者: 綾乃雪乃
第1話 先祖返りの山蜥蜴
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先祖返りと山蜥蜴

山蜥蜴(やまとかげ)…」



見た通り、炎を纏う巨大な妖怪、山蜥蜴やまとかげ

じろりとこちらを見た後、さらに浮かび上がって激しい炎に包まれていく

そして、昨日見たチョココロネの姿になって飛んで行った。



「先祖返り…先祖に妖怪や精霊など、祖先に人外の血が混じっている人間に起きる現象」

「そーそ、源川のおっちゃんの先祖にいたじゃん?『火の符術が得意』っていうヤツ」



そいつはおそらく、山蜥蜴の血が入っていたか山蜥蜴そのものだったんじゃね?

灯ちゃんは私の考えを言い当てた。



「先祖の山蜥蜴の血をいまさら色濃く受け継いで、いまさら発現させちゃったーってトコじゃね?」



木々の隙間から火の渦がぐるぐる飛んでいるのが見える。

時々「あっはっはー!」と楽しそうな声が聞こえるので、本人に危険なことは起きていないみたいだ。



「ああやって力が制御できてねーヤツがこうなったら、もー力尽きるまで待ちルート確定だわ」



チョココロネのチョコ部分から、山蜥蜴の顔がひょっこり出ている。

その楽しそうな姿を眺めながら、私たちは源川さんが力尽きるまで夜通し見守ることになった。


その後、源川さんの力が尽きて、落ちた先でぐーぐー寝ているのを発見し搬送したのは翌朝4時のことだった。




―――――――――――――――――




「終わったぜーーー!!」



3日後、7係の執務室で灯ちゃんがうんと背伸びをしながら大声を出した。

今回の報告書は灯ちゃんが作っていたのだけれど、ようやくまとまったみたい。

「お疲れ様」とコーヒーを渡して私は自分のコーヒーに口をつけた。

頭を使った後の甘いラテは体に沁みる。



「そーいや源川のおっちゃん、あれからどーなったの?」

「さっき会ってきましたよ」




「先日はご迷惑をおかけして…ありがとうございました。」



病院で全身綺麗にしてもらった源川さんは、ベットの上で上体を起こしたまま、データ通りの愛想のよい笑顔で感謝をしていた。

2か月ほとんど何も食べてなかったそうで、しっかりと栄養補給をしてからというもの、蜥蜴へ変化してしまう回数は大きく減ったらしい。



「いえ、源川さんはこれからどうされる予定ですか?」

「特殊能力者となってしまいましたので、今の仕事は辞めます。

 特殊技術訓練学校で今の力をうまく使いこなして、別の仕事を探そうかと」



セカンドキャリア、ですかね。と私が聞くと源川さんはにこりと笑って頷いた。



「急なことで私も受け入れきれていない部分はあります。

 登山も禁止になってしまいましたし…」

「はは…」

「でも、新たな挑戦ができるのは良いことです。

 常に挑戦をしていかなければ、仕事も人生も豊かにならないですからね。

 今の状況を前向きに捉えてますよ」



どこかで恩を返させてくださいね。ピンク色の髪の女性によろしくお伝えください。

源川さんはどこか晴れ晴れとした顔で私を見送ってくれた。




「おっちゃん、いい人そうだったもんなー!あたしも今度ちょっかい出しにいこっかな」

「うん、きっと喜びます」



灯ちゃんがニカッと笑う。

つられて私も笑顔になった。




それは初夏のある日のこと


とある先祖返りの山蜥蜴の話

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