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エニシミエシミ~異能女子お仕事徒然帖~  作者: 綾乃雪乃
第1話 先祖返りの山蜥蜴
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火の渦の正体表す

金田山の中腹あたり、山道から茂みに入った先。

もうすぐ日没となる暗い空の下、低い草木が生い茂る小さな空間に、

私と灯ちゃんと真っ黒焦げな男の3人は揃って正座をしていた。


改めて見ると男は異様な状態だった。

ちりちりと燃えた髪。

皮膚は真っ黒に焦げ、腕や足を覆っていたはずの服は焼け落ちてしまっている。

なのに、本人は全く痛そうでも嫌そうでもなく、背中を丸めて正座した状態でただただ申し訳なさそうに恐縮しきっていた。



「いやあ…私もどうしてこんなことになっているのか、わかりかねていまして…」



男―――源川(げんがわ) (いさむ)は、困った声をあげた。



「確かに金田山で行方不明になったって聞いたけどさあ…まさか黒焦げで見つかるとかヤッベーわ」



灯ちゃんはなぜか楽しそうだ。


話を聞くと、2か月前、確かに金田山に登ったのだという。

いつものように入山すると、すぐに体に変化が現れた。

感じたことない心地よい暑さ、身も心も解き放たれたような快感。

その後、毎晩のように夜空を飛び回る夢を見ては、昼に目を覚ますようになったという。



「まさか…私は2か月も夢を見続けたということでしょうか?」

「いや、夢じゃねーんだな、これが」

「え…?」



いまいち意味が分かっていない源川さん。

灯ちゃんは困ったように頭をかいて、夜な夜な山に現れた火の渦の話をした。

おそらく、その渦こそ源川さん本人であると。



「は…?私が?火を纏っていたと?一体…」

「混乱するのも無理ありません。ですが、ごく稀ですがあり得る事象なのです。

 なぜならあなたは…」



ぴり、と縁の糸が張り詰めるのを視て、私は言葉を切った。

何事かと灯ちゃんが私を見る気配を感じるが、無視して周りを見渡す。

うん?なんか…別の赤い糸が視えたような…。

そう、赤いオーラを纏っていて、まるで炎のような…。



「源川のおっちゃん!?どーしたんだよ?」

「!」


「ああ…日没だ……時間だ……」



源川さんは突然頭を抱えて震えだした。

私は灯ちゃんが飛び出さないように手をあげて、糸をじっと視る。

危険な色ではないけど…これはもしや…。



「う、う、うわあああああああああああああ!!」

「灯ちゃん、下がって!」

「うおわあ!?」



叫び声と共に源川さんが大きな炎に包まれた。

後ろに飛びのいた私たちはギリギリ火傷を回避する。

もう一度抜刀の準備をして、赤いオーラの縁が源川さんにまとまりついていくのをはっきり視た。



「何!?符術の暴走ってやつー!?」

「わからないけど、なんか、違うような…」

「! 見ろ菜子っち!!」



後ろにいた灯ちゃんが私の隣に出た。

再度前に行かないよう腕で制止するけど、灯ちゃんは気にも留めず一点を見つめて指さす。


浮かび上がった炎の塊に、源川さんの姿はなくなっていた。

代わりにいたものは―――



山蜥蜴(やまとかげ)だ!菜子っち、源川のおっちゃんは山蜥蜴の『先祖返り』なんじゃねーの?!」



細い手足に大きな茶色の瞳。

炎を纏い黄金に輝くそれは、巨大なトカゲだった。

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