目撃者と火の渦
目撃者の家を訪れたのはもう夕刻だった。
人のよさそうなおばあさん――今井さんは快く私たちを迎えてくれた。
「すんませーん、おばあちゃん。もしかして、今夜ご飯の準備中的な？」
「そうだけど、いいのよ～。あ、よければ食べていく？」
「え、いいの？やったー！」
灯ちゃんのコミュニケーション力は相変わらずすごいな。
せっかくだからと私は彼女を止めず、そのまま家にお邪魔した。
一軒家の平屋、かつては子供たちの声が絶えず響き渡る家だったんだろう。
今は旦那さんに先立たれて、広い部屋に1人で住んでいるみたいだ。
心を読まれたのだろうか、今井さんはお友達がたくさんいるから全然寂しくないのと笑っていた。
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「あの、金田山で『火の渦』を見たって聞いたのですが、詳細を教えていただけませんか？」
家に入ってそのまま味噌汁づくりを手伝い、豚肉の野菜炒めを食べながら私は話を切り出した。
そーそー、そーなんだよばあちゃん！という灯ちゃんだったけど、一瞬目を見開いたのを私は見逃してない。
さては完全に忘れてたな。
「ああ、そういえばあなたたち話を聞くために来たお役人さんだったねえ」
私たちの白い服装を見ながら、おばあちゃんは思い出したようにあはは、と大きな声で笑った。
あ、この浅漬け美味しい。
「最近近所のお友達ともよく話しててねえ、金田山の周りを火の渦が見えるんだよ」
「へー、いつごろ？」
「そうねえ、早い時は8時ごろから見えるわねえ」
「いつも見えるんですか？」
「ええ、2～3日に1回は見るの。2か月前から変わらないねえ」
へー、という灯ちゃんの反応を聞きながら私はキャベツときのこをまとめて口に入れた。
ちょっぴり辛めなのがたまらない、ご飯が進む。
「そんな前からって危なくね？山燃えねーの？」
「いいや、火事になったことはないねえ。
山からちょっと離れてるから、燃え移らないんじゃないかしら」
「へー」
ごっ
あたっ
肘鉄されて灯ちゃんを見るとジト目で返された。
食べてないでちゃんと仕事しろってことかな、ごめんごめん。
「ちなみにですが、『火の渦』ってどんな見た目ですか？」
「見た目かい？そうね………………
ああ！あれよ！」
