遺された物
(ナンダアイツ?)
学校の帰り道に変な男がいた。電柱のかげから校門から出てくる生徒一人一人におもちゃの銃みたいのを向けている。その男はとなり町の高校の制服を着ていたがマスクとサングラスをしているから顔がわからない。
目が合った。
あまり関わりたくないと思った陽は早歩きでその場を立ち去ろうとした。すると、それに気付いた男はこっちに向けて銃口を向けたかと思うと銃をリュックにしまいこっちに向かってきた。
「やっと見つけた。」
男はそう言うと肩に手を置いてきた。聞いた事がある声だ。男はサングラスとマスクをとって顔を見せた。
「吉田?」
陽は驚きを隠せなかった。変な男の正体は中学2年の時によく遊んでいた吉田だったのだ。そして陽は吉田に連れられ近くの公園へ行く事にした。
何故あんな格好で俺を探しているのだろう?
何故顔だけで俺だと判断せず銃のようなもので判断した?
公園へ行く途中、陽は色々な事を考えていた。
中学の時とは様子が全く違う……歩き方も少し変だ。
あまりにも雰囲気が違うので話を切り出せずにいた。
公園へ着いていきなり吉田は口を開いた。
「今までありがとう。」と、
「どした?今日死んだりするのか?」
いきなりの事で陽は笑いながら聞いた。
「……。」
何も答えない。
「何かあった?」
「これから起こると言うかなんというか。」
「何が?」
「……。」
話が進まずイライラしてきた陽は塾があるからと嘘をついて帰路についた。帰る時救急車のサイレンが鳴り響いていたのを覚えている。
次の日の朝、陽はいつも通り学校へ行こうと学校へ行く準備をしていると母に呼ばれた。
昨日リビングの机の上に置いておいた成績表でも見られたのか。
深刻な顔をしている母を見て不安がよぎる。
「昨日吉田くんが交通事故で死んだらしいの。」
陽はそれを聞いた瞬間頭の中が真っ白になった。
「今朝吉田くんのご両親から連絡があってね。渡したいものがあるから家に来て欲しいって。」
「‥わかった。」
その日学校へ行く気になれなかった陽は学校に行くふりをして吉田の家へ向かった。
昨日もっと話を聞いておくべきだった。
時間と共に後悔の念が大きくなっていく。
程なくして吉田の家に着いた。
三年前と何も変わってない。
まだ吉田が死んだの実感もない。
インターホンを押してすぐに吉田の母親が出てきた。
昨日からずっと泣いていたのか、目はひどく腫れていて赤くなっている。
「あら学校終わってからでもよかったのに、ごめんなさい ね、いきなり呼んで。」
「いえ、学校行く気になれなくて。」
どこかへ出かけるのか玄関の鍵を閉めている。
「呼んでおいて悪いけど、これから病院へ行かないといけないから迅が昨日、明日陽くんに渡してって。」
そう言って吉田の母親は小さい箱を渡してきた。
箱の中には手首につける金属のアクセサリーの様なものが入っている。
「じゃあもう行かなきゃ、ごめんね。」
そう言うと吉田の母親は小走りで駐車場の方へ行ってしまった。
今から学校行ってもなー
仕方なく陽はよく吉田とよく学校帰りに寄ってダベっていた河原へ行ったが話相手もいないし、やることもない。
そうしているとふとさっき貰った金属のアクセサリーの事が頭をよぎった。
箱を開けて取り出してよく見るとスマホの電源ボタンに似ているボタンがある。
腕時計?
試しにそのボタンを押してみると空中に画面が出てきた。
「うわっ。」
驚きのあまり声が出た。
「ようこそ。」
「うわっ。」
また驚いて声を上げてしまった。
周りの通行人がこっちを見ている。
「魂魄認証クリア、ロック解除。」
音量ボタンを探してもどこにもない、それどころかスピーカーのような穴もない。
「どっから音出てんだ?」
「骨伝導です。」
⁈
どうやら操作は全部声でやるらしい。
「説明書はないの?」
「では私が全機能を説明致します。」
‥数時間後
‥以上がこの端末の全機能です。」
長!
細かいことはよく覚えていないがこれはスマホとほぼ同じ物で、違うことと言えば人工知能がその端末自体に入っていること、通信速度はスマホの100倍、手首の骨から耳まで軟骨さえも骨伝導で音声が届いている。
その為、周りにはこの端末の音声は聞こえていない。
どうりでさっき通行人にジロジロ見られていたわけだ。
こんな物聞いたこともない。
「これ何年製?」
「2016年製です。」
「なわけねーだろ、誰も持ってねーわ。」
「2020年現在の普及率は80%です。」
「いや持ってる人多分誰もいない。」
「君!」
いきなりすぐ後ろから大人の男の声がした。
振り返ると後ろには警官が立っていた。
「はい。」
「君薬とかやってない?ちょっと署まで来てくれるかな?」
「……。」
陽は警察署に連れてかれた。