とりあえず行動してみた
「入学するには少なくとも住居が無くては困るようだな。それに家族の記載欄がある。どうしようか」
タタンは困ってしまった。いままで特定の住居で暮らすことのなかった彼は家を借りたことなど無いし、保証人もいないし、定職もない。加えて、帝国の名門学校に姫を入学させるにしてもこのままでは保護者面接に通らないのではないかという危惧が生まれていた。
「おい、私は学校に入らなくてもいいぞ。それよりも実戦経験が積みたい。」
(すまない姫。高いレベルの教育を施したかったのだが、俺のせいでそれも無理なようだ。)
「すると、名門は諦めて公立の中でもレベルの高い学校に行くしかないか。」
書類を偽造することなどそこまで難しくはない。だが、名門の学校となるとどうしても貴族社会とは無縁では入れない。他国とは言え、姫は一応は王位継承権を持つ王族なのだから、下手に関わり合いになるのは宜しくない。その点、公立なら入試もないし、簡単に入学できる。
「おい、聞いているのか?」
「はい聞いてますよ。友達100人と彼氏ですね、はいはい」
「ふざけてんじゃねえ」
将来の大陸の覇者に姫がなるためには人材が不可欠だ。スポンサーとなる手駒を用意して、強靭な組織を結成する必要がある。魔王タタンは自分の力の限界をわかった上で、次の手を考えていた。
「まあ、とりあえず姫は適当な学校に通わせるとして、俺は姫が学校に行ってる間に下準備を進めるか。」
「勝手に決めるな。」
こうして、姫の公立学校入学とタタンのリクルーティング活動が始まった。