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プロローグ

「おいクズ、飯の用意はできたか。」

「はい、ただいまお持ちします。」


17代目魔王タタンの朝は早い。日の出る前に起床し、自らに課した鍛錬をこなしたのちに、姫の起床前に朝食の準備を整えなくてはならなかった。


「今日こそは伯爵領を鮮血で染め上げてやる。もぐもぐ。」


タタンの仕える姫は、半年ほど前に嫁候補として攫ってきたはずなのだが、気づいたら彼女の従者として王国を攻略することになっていた。


「姫様なら必ずやこの大陸の覇者になれますぞ。」


タタンは現状に不満はない。引きこもりの魔王として周囲から嘲笑を受け続けた彼からすれば姫からの罵倒はむしろご褒美であった。自らが諦めた夢を追い続ける姫の姿はタタンには輝いて見えたのだ。


「言われるまでもない。必ずやあの屑どもを根絶やしにしてくれるわ。」


目鼻立ちの整った端正な顔は怒りで悪鬼の如き形相に歪んでいた。タタンはそんな姿も美しいと思えていた。


ドン!


「おい、うるせえぞ!ぶっ殺すぞ!」


壁の薄い安宿であったので、隣人の民度も相応に低かった。


「ひい、すみませんでした!」


反射的に魔王タタンは謝罪を口にする。下手に争わないことが彼の処世術であった。


「おい、なぜ謝る、まずは隣の豚を血祭にしてやらなくては……」


バタン


姫が余計な口を開こうとした刹那、タタンは神速の手刀で姫の意識を刈り取る。


「何か口答えしなかったか?犯すぞおら」


沸点の低い隣人がこちらの部屋の扉の前に移動していた。カチャカチャと金属の鳴る音が聞こえてきた。どうやら、話し合いではどうにもならないらしい。


(仕方ない。俺は平和が好きなのだがな)


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「……ん?ここはどこだ?」


「目覚めましたか姫様。ここはアルセーヌ帝国にございます。」


「待て、なぜ王国の外に出た?すぐに引き返せ。」


「少し黙れ。貴様は学がない。それに俺も人のことは言えない。だから学校に入って勉強をするぞ。」


中年の魔王と8歳の姫の学園生活が始まろうとしていた……







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