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夢の生活~1日1000万円のお小遣い~  作者: フェフオウフコポォ


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第三十話 出来ることからコツコツと


 お金を得る方法は沢山ある。


 得るだけであれば『奪う』『盗む』ということが真っ先に思い浮かぶ時代もあったが、現代においてこれらの行為は許されない。

 現代で許される合法的にお金を得る方法を考えると、ある一定の方法にしか行きつかない。

 それは『何かを提供し、その対価としてお金をもらう』という方法だ。


 例えば、食べ物を用意して、それを欲しいと思う人に適当な価格で売ってお金を手にする。

 情報を欲しがる人に、情報を分け与え、その対価としてお金を手にする。

 サラリーマンやOLのように、労力を提供する対価にお金を手にする。


 このように『何か』を用意して、その対価としてお金を得る。

 この方法が現代において最もスタンダードなお金を得る方法だ。

 

 このスタンダードな方法の『何か』は『お金』に置き換えることもできる。

 そう。金を使って金を得る。

 金を元手に金を稼ぐ方法があるのだ。


 例えば銀行や消費者金融のように、お金を貸し付けて利子・利息を取る方法は、金で金を稼ぐ代表例だろう。だが、これを一般人が合法的に行うことは難しい。


 一般人が可能なお金を使って、お金を得る方法として、すぐに思いつくのは……ギャンブル。


 胴元の提供する賭けに手持ちの金を賭ける。

 もし勝てばレートにあった金銭に変わって返ってくるし、負ければ賭けた金が無くなる。それがギャンブル。


 ギャンブルというとカジノなども思い浮かぶけれど、日本でも競馬、競艇、競輪など気軽に参加することができるギャンブルがある。

 もっと身近に、なぜかギャンブルの癖に遊戯とされているパチンコなんかもあったりするのだが、これは社会の闇だろう。


 だが、このギャンブル。お金を使って、お金を得る方法ではあるが『金で金を稼ぐ』という面からはとても推奨はできない。

 なぜなら基本的にギャンブルは胴元が利益を得る為の仕組みでしかないからだ。


 稀に『俺は勝ってる』なんてのたまう人間が居たりもするが、そんな人間は存在しない。『あいつが勝つなら俺も』と思わせるだけの、ただの客寄せパンダでしかない。

 もし継続的にギャンブルで勝ってしまう人間がいるのであれば、それは『絶対に勝てる方法がある』ということになる。人の口に戸は立てられないから、その方法を知る人間は増え、胴元はすぐに賭け場の運営を止めることになる。


 ギャンブルは、負けて金を失う人が大量にいて、その失われた金が胴元に入るからこそ胴元が活動できてシステムが成り立つのだ。

 胴元が大金をつぎ込んで立派な建物を建て、ランニングコストのかかる働く人達を雇い、広告費を大量に払ってガンガン宣伝を流すことができるのは、それくらいに儲かっているからだからだ。つまり負けて胴元に貢ぐ人がそれほどに多いということ。遊んだ人が勝ち続けられるような胴元に旨味のないシステムでは誰も賭け場を運営しようなどとは思わない。必ず胴元が勝って胴元に旨味があるからこそ面倒で金のかかる賭け場を運営するのだ。金を得る為に労力という対価を払っているから胴元が金を得るのだ。


 ギャンブルはお金を得たいという心をくすぐって集金する胴元の為に考えられたシステム。だから胴元に不利なシステムなど作られるはずが無い。

 故にギャンブルは『お金を得ようとして浪費する』方法でしかなく、残念ながら『金を使って金を得る方法』にはなり得ない。


 ギャンブルと似たような物で『宝くじ』もあるが、宝くじなんてのは当たる確率を考えれば、実質ただ現金を捨てているだけ、胴元に現金を差し出しているだけでしかない。


 買う人は、皆『当たるかもしれない』『買わなければ当たらない』と、自分に幸運が訪れる可能性を信じて買う。だが、その幸運が訪れないことなど始めから分かりきっている。


 なぜ幸運が訪れないのかは具体的に想像すれば誰でも理解できる。しかも実は簡単に理解できる。

 その方法は、ただ『学生時代の教室』を思い浮かべればいいだけ。


 1クラスは通常40人くらいで構成されるから、学生時代の教室で完全にランダムで生徒を指す先生に指名されてしまう事を思い描けば良い。この先生に指名される確率が40分の1だ。

 具体的に想像すればするほど『40分の1』という確率の時点で、まず当たらないだろうことが想像できてしまう。


 そして宝くじの当選確率は、なんと20,000,000分の1。


 40分の1の確率でも当たらないだろうに、その50万倍の数の中から選ばれなければならないのだから、当然当たらないと言っていい。


 ただ『50万倍』という数字がリアリティを消して想像し難いので、もっと具体的に考える必要が出てくるが、全校集会で1000人くらいの学生が体育館に集まったとして、その人数の中からランダムで選ばれる確率が1000分の1。

 この全校集会中に生徒の中から一人だけ選ばれるような確率でも、まずもってほぼ当たらないと断言して良いレベルになる。


 だが当選確率はまだまだ遠い。なにせ20,000,000分の1だ。

 1000人集まる体育館なら、同じ体育館が2万あって、その中から選ばれるような確率。

 まだ『2万倍』という現実離れした数字で、想像しにくくなる為『当たるかも?』という幻想を抱いてしまう人もいる。なので、より現実に寄せて具体的に考えることにする。


 現在の日本における小学生生徒数は643万人、中学生の生徒数は約325万人。高校生の生徒数は約322万人。高等専門学校や大学生、大学院生の数が約300万人だ。

 日本全国の学生の数を足しても1590万人。とても2000万人には及ばない。


 つまり宝くじの1等が当たる確率は、日本全国の小学生から大学院生までの学生全てを対象にした中から1人だけランダムに選びだす確率よりも、更にもっともっと厳しい確率でしか当たらないことになる。


 ここまで想像してみると、まず「当たるかもしれない」と思える人はそうそういないだろう。


 もちろん当たる可能性は0ではない。

 当たるかもしれない。

 ゼロではないのだから。


 ただ、その『当たるかもしれない』と感じた可能性は、自分が学生になったとして、日本全国の小学校、中学校、高校、高等専門学校、大学、大学院の全ての学生達の中から、見事1人だけ選ばれるのだと確信できるほどなのだろうか?


 20,000,000分の1という、確率の桁が、あまりに途方もないせいで当たらないことすら想像できなくなってしまうというのが宝くじが当たるかもしれないと思えるトリック。そのトリックに騙された人が宝くじを買ってしまうのだ。


 宝くじは買うことで社会貢献になるなどの救済感を出して寄付のようなイメージを付けたがっているが、結局は胴元が勝つ為の集金装置でしかない。


 このように胴元が必ず勝つ仕組みの物は全てがギャンブルであり、ギャンブルに金を使うことは、ただ金を捨てるだけのものになる為、金で金を得る方法としてギャンブルを活用する方法は、まずもってあり得ないこととなる。


 となると、金で金を得る方法として考えられる方法は『資産運用』しかない。


 『資産運用』という言葉からは、まず『投機』や『投資』が思い浮かぶ。

 この投機と投資は似ているが、投機には損をするかもしれないようなギャンブル性が加算される点が大きく異なる。

  

 例えば、収益が上がると明確に予測できる土地を購入し、その土地を人に貸して収益を上げる。さらにその土地での収益性を上げる為に、お金をかけて建物を建てて貸す。これは『投資』だ。

 収益が上がるかもしれないけど上がらない可能性もある。そんな不明な土地を、収益を上げる目的で購入する。これは『投機』になるだろう。

 土地自体が資産の意味合いもあるので絶対的な損にはならないかもしれないが、買い手がつかない土地の場合、資産も負債になりかねない。


 日本円でアメリカドルを買うなどの場合、外国為替は常に変動していて損をする可能性は付きまとう。

 だが、絶対に使わずに眠っている資産があり、為替変動でマイナスになっている時には換金せずに塩漬けして眠らせ、収支がプラスになる時に換金するのであれば、これは投資と言えるだろう。


 為替取引で投入する資金を担保にして取引金額を増やし1円の為替変動でも担保した資金が大きく減ってしまうような為替取引は投機。1円の変動で担保した資金が無くなってしまうような取引は、投機でもなくただのギャンブルだ。


 要は、投入した資金に応じて確実性のあるリターンが見込める物。利が少なくても『損はしない』というのが投資。

 利が大きく得られるかもしれないけれど『損をする可能性がある』物は投機に分けられる。


 世の中には、この投資・投機で金を稼ぐ人たちがいる。

 土地、先物、株、為替などの金融商品での投資と投機で金を稼ぐ人たちがいる。トレーダーと呼ばれる人達だ。

 さらにこのトレーダー達を抱えて巨額の資産を運営する集団がヘッジファンドと呼ばれたりもする。


 トレーダーたちは日夜金融商品をやり取りし、利益を追求し続けている。

 日々、金で金を稼ぎ続けているのだ。


 だが、このトレーダー達は人工知能の登場で、その数を減らしているという。

 海外で名のあるヘッジファンドではトレーダーの首を大量に切って、その代わりにプログラマーを雇ったというのはニュースで何度も聞いた。


 これが意味するところは何か。


 『金で金を稼ぐシステムは作れる』


 ということだ。



「で、タダユキさんは、そういうシステムを作れる人を育てる支援をしようというのですね。」

「うん。そういうのって、よくわかんないけど、経済に詳しかったり、プログラムに詳しかったりする必要が当然あるんだろうと思う。でも、多分それだけじゃなくて、その他にも医療に詳しかったり、金属に詳しかったり、ファッションに詳しかったり、とことん専門性が高い情報を沢山集める必要があると思うのね。」


「私はトレードについてはよく分からないですけど、でも株の売買とかで製薬関連の株を買うとしたら、今、どんな薬が求められていて、どこが熱心に開発に取り組んでいるかとかの情報を知っていると有利に動けそうだとは思いますね。」


「うん。でもそういった専門性の高い情報って結局専門家しかわからないじゃない? そして今、学生な子たちは将来、その専門家になるかもしれない可能性を秘めているわけですよ。」

「なので将来的な専門家を集める為に、返済の代わりにシステム構築に協力することを条件に奨学金をばらまく。と。」


「いぐざくとりー。」

「うーん……」


「まぁこれまでに色々使っちゃったから、今、動かせる金額は5億円くらいが最大なんだけど、とりあえず経済学を学びたい子とか、プログラマーになろうとしてる子を積極的に応援することはできると思うんだ。」


「……タダユキさん。この後、会社に発生する支払いとか諸々、銀行で借入しない場合、現金で10億円とか必要になるかもしれませんけど、貯めておかなくて大丈夫なんですか?」


「えっと、その必要になるのって、どれくらい先のことかな?」

「そうですね……早ければ3ヶ月後、普通に考えて半年後くらいでしょうか……」


「90日か、半年……180日後ね。うん。なら全然問題ないよー。早まっても、10日くらいの猶予は稼げるだろうし、10億円なら準備できる。」

「そうですか。分かりました。であれば、私が止める理由もないですね。確認ですけど今回の目的は子供の恒久的な支援がメインで、その方法として利益を上げるシステムの構築がある。これで間違ってないですか?」

「うぃ、まむ。」

「でしたら目的の内容から財団法人でも作ってみたらどうです?」

「財団法人……また役職が増えるのか……」


「財団法人だと理事長ですね。」

「なにそれカッコイイ! やるー!」


 形さえ整えてあれば、俺が動かなくても勝手に事態は動き出してくれる。

 どうせ俺は、人に任せることしかしないからな。

 流石サトミさんは俺をよくわかってるわ。


 なので俺のやることは、金を出して、動き出せるように形や準備を整えること。

 一度動き出しさえすれば、そこに金があれば動かしてくれる人はいくらでもやってくる。


 自分に出来ることをコツコツと。

 目標の為にコツコツと。だ。


 というわけで会社とは別に、子供たち支援の為の財団法人を設立し、理事長に就任することにした。


「奨学金を渡す学生も探さなきゃですね。」

「学費の他、生活費も出すってやったら来ないかな?」

「殺到します。」

「じゃあそれで!」


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