エレエロ。やっぱり、第一印象の差
「たまには私がボケをやりましょうか?」
「漫才なんかしねぇよ」
今泉ゲーム会社、営業担当の2名。
「そう暗い顔していますと、顔の雰囲気も相まって怖いですよ。三矢さん」
「うるせーな、弓長……ツッコミ疲れなんだよ。それと仕事の疲れ。俺ばっかりツッコミじゃん」
ヤクザ面の強面営業マンの三矢正明と、イケメン優男な営業マンの弓長昌。
一緒に休憩を取っている時の雑談である。
「急に暖かくなりましたよね。クールビズも近々始まります」
「そーだな」
「先日の営業先では早くも始まっているようでして、新人社員の皆様も涼しい姿でお勤めされておりました」
「いやー、頑張ってるね」
「そこで私、エレベーターをご利用したわけですよ。6階の会議室で打ち合わせだったものでして、えー」
「階段を使え、走って汗をかけ」
「鬼ですか?三矢さん」
はははは。ってプチ笑いする弓長。
「とまぁ、なんですか。私が1人でエレベーターを使うじゃないですか」
「うんうん」
「そこにですね。『待ってくれませんか~』って、女性の声がしたんですよ。私も急いではいたんですが、声を聞いたんでそりゃ。開くボタンを押して、待ってあげるわけです」
「優しいな」
「女性の方、早くはないですが走って来ているんです。いやぁ、偉いですね」
「本当だ」
「『ありがとうございます』ってお礼を言って、私も『どーいたしまして』っと言うじゃないですか。」
「ほぉっ」
「そして、エレベーターが動いて、私は6階。女性は5階で降りるそうだったんです。そしたら、私、後ろに移動してあげるじゃないですか。出やすいように」
「するな」
「その時ようやく気付いたんですけど、入って来た女性のYシャツが汗のおかげで、ブラ透けしているの見えたんですよね。後ろから丸わかりで」
「なんつーところ見てるんだ!!」
不可抗力だってのは分かるが、まじまじと見るなよ。
「目を瞑るのも良くないなぁって思って、ちょっと眺めてました。優しい事をすると、良い事があるんですね」
「そうかな!?」
「エレベーターという密室で、2人きりだと余計にあれですね。向こう気付いてなかったのもねぇ」
「もうその辺でオチにしてくれ!」
「ともかく私が言いたいのは、優しい事をすると、たまに良い事があるよって事です」
◇ ◇
ある日。
「ふーっ」
三矢は営業先の会社に向かうため、ビルの8階までエレベーターを使う。
「待ってくださ~い」
そんな時、女性の声が聞こえる。その時、弓長のお話を思い出し、優しさを見せるため。閉まりかけた扉を開いてあげる。
「どーぞ」
「あっ……」
優しい声を出し、待ってあげるわけであるが。女性は三矢の強面の顔を見て、警戒してしまった。
「あ、やっぱり良いです。次で大丈夫です」
「……………」
ガーーーーッ
エレベーターを締めて、1人で昇るのであった。
「やっぱり顔と容姿だよな……」
監視カメラにはエレベーターの壁をゴンゴンと叩く三矢の悲しい姿が映っていた。
残念。
今日、たまたまだったんですが。
弓長のお話みたいな事が起きました。
汗をかくシーズンになりそうなので、色々と気を付けましょう。それと、エレベーターのような密室だと妙に意識しちゃうよね。