表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編

時を戻す時計

作者: 小沢琉祢

ずっと君が好きだった。

でもずっと言えなかった。

そうこうしているうちに時は過ぎて、君は死んだ。

事故にあって、即死だったという。

時を戻せたら。

そしたら、君を助けに行けるのに。

そんなことを考えている時、古くなった時計を見つけた。

それはおじいちゃんから貰ったものだった。

一度だけ時を戻すことができる時計なんだ。

そう言っていたことを思い出す。

でも絶対使っちゃダメだよ。

そうも言っていた。

一度使うともう二度と元の時間に戻ってくることは出来ないんだ。

戻った時間の自分が優先されるから、使った人はなくなっちゃうんだ。

それでも。

君が生きている世界を望んだ。



いた。君がいる。

過去の君。

華奢な背中。

てくてくと僕の前を歩いていく。

その背中を突き飛ばした。

彼女はうわっと声をあげる。

僕は分かっていた。

僕はここで死ぬんだって。

彼女の代わりに。

遺体が残ってたら困るかなあ…

そんなことを最後に考えた。



彼が死んだ。

初恋の人だった。

私が死ねばよかったのに。

そんなことをずっと思った。

でも死ねなかった。

何故か自殺しても未遂になってしまうのだ。

何をやってもすぐに人に発見されてしまうか、都合のいい事が起こって死ねない。

もしかしたら。

彼が守ってくれているのか。

幽霊なんて信じていなかった。

でも今は、いるのかもしれないって思う。

だって。

死のうとするたびに悲しそうな彼の顔が見えるのだから。

「…これで、いいんだよね?」

うんうんうなずく彼が見える気がした。

私は笑った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 叶わない恋、辛いです。 儚く、とてもやさしいお話だと思いました。 素敵な気持ちが込められていますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ