天地調整大臣トクナガと天地調整省調整第一課長ホクサイ!
生命管理大臣ゼウスと破壊大臣ザキエルが天界最高議会に人類滅亡議案を提出する1ヶ月前の11月15日に、天地調整大臣トクナガは生命管理省のラファエルからその事実を告げられた。
ラファエルは同時に、天界最高議会運営事務局を設置するため、天地調整省からも2名の人材を派遣してほしいと依頼した。
ラファエルが大臣室から辞去した後、トクナガは苦笑いを浮かべながらも、すぐにある人物を大臣室へ呼んだ。それが、天地調整省調整第一課長のホクサイであった。
「ということで、運営事務局にはホクサイ課長に行ってもらいたい。」
トクナガ大臣がそう告げると、ホクサイはしばらく黙考した。
「その役目を受け給う前に、一つ確認させてください。3月15日に開かれる本議会で、議案が否決されるのが天地調整省のゴールでしょうか。」
ホクサイの確認に、トクナガ大臣は自分の立派な顎髭を撫でた。
「今回は生命管理大臣と破壊大臣が組んでるからね、否決は相当に難しいし、それに否決だけがゴールじゃないよ。可決されるとしても、できる限りの譲歩を引き出せたら、それでよしとしようか」
トクナガ大臣の返答に、ホクサイはうなづいた。
「そういう前提条件なら、その大役をお受けさせていただきます。ただ、2点ばかりお願い事があるのですが。」
ホクサイがそう言うとトクナガ大臣は大仰に笑った。
「かっかっか!ホクサイ君のそういうところが好きだよ。言ってごらん。」
「ありがとうございます、大臣。1点目は、事務局に連れて行く若手職員の人選を私に任せてください。」
「目星がついているんだね。うん、いいよ。して、2点目は?」
「はい、2点目は、事務局開設後、しばらくの間、私を大臣室にかくまっていただけないでしょうか。」
ホクサイがそう言うと、トクナガ大臣はさらに大きく笑った。
「君は本当に面白いね!いいよ、しばらく一緒に将棋でも打とうか」
「無理なお願いを聞いていただき、ありがとうございます。では、事務局開設後にまた参ります」
ホクサイは深々とお辞儀をすると、大臣室を後にした。
事務局開設後、ホクサイはしばらく大臣室へ通い詰めることになる。誰にも知られず、2人はしばらく将棋を打ち続ける日々が続いた。