ライバル関係!
芸術文化省のベルと天地調整省のポップが中庭での昼食を終えて、事務局に戻ると12時55分だったが、すでに他の事務局員は仕事を始めていた。
ベルとポップの席は生命管理省のマルコス、破壊省のカポーティ、自然環境省のマチルダと5つのデスクを並べた場所にあった。
ベルとポップが席に座ると、向かいで仕事をしているカポーティが、
「三流官庁は余裕だな。」
と、呟いた。カポーティの隣のマルコスは、聞こえないふりをしてパソコンに向かっている。
ベルは対面のカポーティに、
「今、何か言いました?」
と尋ねたところ、カポーティは舌打ちをしながら、こう吐き捨てた。
「あれ、聞こえちゃったかな?芸文と天調は仕事が遅いって先輩から聞いてたんだけどさ、ホントだったんだーって感心しちゃったの。」
「仕事が遅いってさ、まだ昼休みでしょ。それにさ、これから3ヶ月間いっしょに仕事するんだから、仲良くしましょうよ。破壊省さんは、職場環境まで破壊するのが仕事なんでしたっけ?」
「なんだと?お前、うちの省をバカにしてんのか?」
ベルとカポーティの言い合いが熱を帯びてきたところで、マルコスが止めに入る。
「君たち、そこら辺でやめときなさい。ここで、問題を起こすと将来にハネますよ。」
マルコスがそう言うと、各々が黙々と仕事に取り掛かった。
生命管理大臣と破壊大臣が共同提出した議案は、「そろそろ人類なんとかした方がいんじゃね?」である。具体的には、天界最高議会の場で、天界五大臣が人類を存続させるべきか滅亡させるべきかを話し合った上で、無記名投票を行い、存亡を決定するというものである。
運営事務局員の仕事は、天界最高議会の開催準備、当日の議会運営、そして議決結果の公表であるが、5人の若手事務局員の主な仕事は、それぞれの省庁の立場から、人類の存亡が地上界と天界に与えるメリットとデメリットをシュミレートし、資料にまとめることである。各事務局員が作成した資料は、事務局幹部の修正を通して、最終邸に事務局提出資料として、天界最高議会当日に、天界五大臣に配られることになる重要なものである。
5人の若手職員には自分の省益に資するデータやシュミレート結果を、最終的な事務局作成資料に残すことを求められている。
12月15日、事務局発足当日の仕事を終えたベルとポップは一緒に家路へついた。
空には大きな水月が浮かんでおり、並んで歩く2人の影を地面に写している。
周囲を確認してからベルはポップに話しかけた。
「あいつら、完璧に準備してきてたな。」
ポップは夜空に向かって大きなため息をつきながら答える。
「破壊省のカポーティさんが僕たち人類擁護派を潰す役で、事務局幹部との調整を生命管理省のマルコスさんがやるって感じですよね。みえみえ過ぎて少し笑っちゃいましたけど」
「だよなー。でもあいつら、天界第一大学卒のスーパーエリートだぜ。しかも、事務局長のラファエルさんとか補佐のドガさんも大臣の顔を立てようとギラギラしてんじゃん。」
「三流省庁の僕らが抵抗してなんとかなりますかね?」
「まあ、勝ち目は大分薄いけどさ、できることを全部やろうよ。じゃあ、また明日な」
そういうと、ベルは手を振って、自分のアパートの方向へ向かった。
「先輩には、一応僕がついてますからね!明日もがんばりましょう!」
ポップがベルに向かってそう言うと、ベルは苦笑しながらも手を上げて応えた。