谷の底から--1
SIDE--???
万魔の谷の中に、今一人の青年が森の隙間から隙間へと駆け巡り、何かを追っていた。
その青年に追われているのは 万魔の谷 で生息している珍獣 ジ・オーク だ。
この世界 アデン の中に普通に生息している魔物のオークと似て姿をしているが、オークと違い皮膚は真っ黒で、歩き方は両足ではなく獣の姿に合って四足で歩く魔獣だ。
この ジ・オーク の習性は極端の臆病者で、逃げ足は凄く速く、その動きは途轍も無く素早い、捕まえる所が、仕留めるにも至難と言われている。
そして、その肉は珍獣の名を恥じぬ味を持ち、この世で一二を争う美味しさと 言われで居る。
こんな逃げに徹している ジ・オーク を追う青年は、息が上がってない上に、余裕な表情を浮かべながら、駆け抜けで行く。
青年は 万魔の谷 の決して平坦とは言えない地面を滑るように走り、ジ・オークの動きを読み、距離を縮めて行く。
時々 ジ・オーク は急に左や右に曲がり、しかし青年はそれ際も予測したように ジ・オーク よりも早く曲がり、更に速度をまったく落さない。
そんな ジ・オーク と青年のこの‘追いかけっこ’は数分もしない内に終わり、勝利したなはもちろん青年だ。
ジ・オークに最後曲がった時、青年はその動きを正確に捉え、曲がるその瞬間を狙い 一瞬で速度を上げ ジ・オークに近付き、腰に差している剣をも抜かずに手刀で一撃を放ち、ジ・オークの意識を刈り取った。
青年は立ち止まり倒れている ジ・オーク を見下ろす。
そして腰にある剣の柄を握り、一瞬に剣を引き抜き、そのまま下から上に切り上げた。その放たれだ一撃は迅速で、一般人には決して見えることはないのだろう。
青年はまったく血の着いていない剣を腰にある鞘に納刀し、そしてしゃがみ ジ・オーク の尻尾を掴み再び立ち上がる。
青年がそのまま立ち、逆さに吊らしたように ジ・オーク を持ち上げた。そしたら ジ・オーク から大量の血が溢れ出した。
良く見たら ジ・オーク の首筋に一つの切り傷があり、その深さは丁度 ジ・オーク の大動脈を切り裂いていて、一寸の違いも無かったのだ。
少しの時間が経ち、青年は血抜きした ジ・オーク を片手に持ち、歩き出した。