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悠久チェイン  作者: 四季 ヒビキ
2章
6/6

燻る存在

やっとプロローグが終わります。 RPGゲームなら第2章くらいでしょうか。 影の薄かったヒロインエドナがやっとヒロインらしい動きができました。 ごめんよ・・・・・・。

一面、炎だった。 渦を描き、周囲を巻き込む炎に飲まれ、それを許容した。

 

 熱い筈なのに、熱さを通り越して痛いはずなのに、平気だ。

 

 ―――――――俺は、死ぬのかな。

 

 

 

 燃える街だったものを眺め、刻限木に、やめてくれ、こんなの、望んでいない、と願った。 不思議なことに、刻限木は燃えていない。

 

 ああ、そうだ。 俺は、燃えていない。 熱から体を守るように、周りを何かが蠢いている。 ・・・・・・ずるい。 なんてずるいんだ。

 

 ―――――――この炎は、罪を洗い流してはくれないのだろう。 俺が。 俺が燃やした街は・・・・・・もう戻らない。

 

 

 あれ、どうして俺は燃やしたんだ? なんで街なんか・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 夢に、すがった。 夢であってくれ。 もし、この夢を見る前に戻れるなら。 眠りにつく前に戻れたら―――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・・はあ、煮詰まった。 オチも何もかも見いだせない」

 

 

 

 「没、だね。 一応、案だけはとっておこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・

 

 

 

 

 

 俺は、一体何をしているのだろう。 なぜ、森にいるんだろう。 俺の名前がルイスで、飢えをしのぐ為に食料を探していることはわかるんだ。

 

 でも、それ以上はわからない。 どうして、この森じゃなくてはいけないのだろう。 俺は、何度もこの考えに至ったはずなんだ。 でも、なぜか―――――――このパンをひとかじりすると、すべて忘れてしまう。

 

 何度も同じことを繰り返す。 そして、また腹が減ると、食料を求め森をさまようのだ。

 

 ループ、というのだろうか。 たまに、雨が降ったり、雪が降ったり、快晴の時もあった。 しかし、俺の行動に何も変わりはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・いや、俺はルイスだ。 ウエストウェリアの、とある教会の、神父の―――――――。

 

 

 

 

 

 「あ」

 

 

 

 

 「おばさんが、待ってる。 エドナも・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩くこと二十分。 帰路についてからの足取りは重い。 正直、帰りたくない。 何故か、急に居心地の悪さを覚え、頭痛に見舞われた。 頭が重い。

 

 

 吐き気までには至っていないが、これ以上悪化すると面倒だ。 無理せず急ごう。 今日の夕飯のことでも考えながら・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 大きな門がある。 上を見上げると、首が九十度反るくらいには高さがある。 兵隊に会釈すると、黙って腰を九十度に折ったお辞儀を返され、門を開けてもらう。

 

 神父の息子、と言っても、血は繋がっていないが。 おじさんが一番可愛がっている孤児なので、ある程度丁重に扱われている。 いい気分とまではいかないが、嫌な気はしない。

 

 

 

 「ああ、ルイス。 今までどこにいたんだい」

 

 

 「・・・・・・ちょっと散歩していた」

 

 

 「今は危ないから、外出は控えなさいね」

 

  

 「ありがとう」

 

 

 

 

 

 街の人との会話は、正直疲れる。 ・・・・・・今は冷戦状態で、誰もが精神的に疲弊しているのだ。 わけもない。 いつまた血を流すことになるか、わからないのだから。

 

 

 すると、若葉色のお下げをぶら下げた少女がこちらに駆け寄ってきた。 この辺で若葉色の髪の毛は珍しく、思い当たる人物は数人しかいない。

 

 

 

 「ルイスーっ!」

 

 

 

 

 

 

 明るい声で駆け寄る少女。 エドナだ。 俺の、幼馴染で、俺をよく知る人物だ。

 

 ぴょんぴょん跳ねるお下げは、小動物みたいだ。 カゴいっぱいに花をいれ、手を振りながら元気に笑う。

 

 

 

 

 

 「ルイス、どこいってたの? ずっと探してたんだよ?」

 

 

 

 「ああ、ごめん。 森に行ってた。 おばさんとおじさん、些細なことで喧嘩してさ」

 

 

 

 「もー、ならわたしに言ってくれればいいのに。 話し相手くらいにはなってあげたよ?」

 

 

 

 「エドナだって、今日は仕事非番なんだから、ゆっくりしたいだろ」

 

 

 「だからこそ、だよ」

 

 

 

 「? よくわからないが・・・・・・今から帰るよ」

 

 

 

 

 「・・・・・・そう、きをつけてね」

 

 

 

 「・・・・・・」

 

 

 

 エドナがしゅん、としぼむようにうなだれる。 ・・・・・・エドナには両親がいるが、今は理由があって会えない。 ひとりで過ごすリビングは広く感じられるのだろう。

 

 

 

 「・・・・・・嫌じゃなきゃ、飯くらいは出すよ」

 

 

 

 

 「・・・・・・ほんとに?! やったー!」

 

 

 

 ぱあ、と音が聞こえるほどのオーバーなリアクションだ。 エドナの笑顔は嫌いじゃない。 見ているとどことなくむず痒くなって直視できないのだが、彼女の笑顔は周りを幸せにするのだ。

 

 

 

 

 「ほら、転ぶぞ」

 

 

 

 

 「歩けなくなったらおんぶしてね」

 

 

 

 「・・・・・・そうならないように善処してくれよ」

 

 

 

 「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――教会、そしてルイスの家にて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 からんからん、とドアのベルが鳴る。 人の気配はするが、会話が聞こえない。 俺の両親は、別に愛妻家でも夫婦円満な感じでもない。 教会の神父と住み込みのシスターというだけなのだが、恋仲なのであろうと街の人々は口にしている。

 

 

 そもそも、この街の人たちはそんなに熱心な信者はいない。 宗教を通しての、街全体という大きなグループを作り群れているだけなのだ。 お布施とかも、気が向いたら捧げる。 イベントには特に用事がなければ参加する。 あまり参加しないと、それとなく遠ざけられる。

 

 

 なのに、どうしてこの教会は大きいのか。 ・・・・・・あなり触れない方がいいのだろう。 今回の喧嘩も、そんな話題だったのだろう。 今は、エドナがいる。 あまり考えないでおこう。 おじさんたちも、空気を読んで明るく振る舞うだろう。

 

 

 

 

 

 「ただいま、おじさん、おばさん」

 

 


 「お邪魔します!」

 

 

 

 

 

 ガチャ、と書斎の扉が開く。 すると、ジェーン・ボックスおばさんと、レオン・ボックスおじさんがこちらを見て表情を変えた。 二人共、聖職者らしく落ち着いて、優しい微笑みをエドナに向けた。

 

 

 

 「・・・・・・あら、エドナ。 いらっしゃい」

 

 

 

 「エドナか。 最近冷えるね。 温まっていきなさい」

 

 

 

 「ありがとうございます!」

 

 

 

 ニコニコと笑顔を返す。 悪意のない、ピュアな笑顔だ。 俺が笑った時の顔は、引きつって愛想笑いすらできない。 俺もぎこちなく笑い返すが、おじさんが俺を見て引きつっていた。 ・・・・・・俺の表情筋は仕事をこなさないみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・・じゃあ、俺着替えてくる」

 

 

 

 「え? ご飯食べないで寝るの?」

 

 

 

 「寝間着じゃないよ、家着に着替えるだけさ」

 

 

 

 「なんだ、びっくりした」

 

 

 

 「いきなり変な事言うなよ」

 

 

 


 

 エドナは良い奴だが、どことなく変なやつだ。 俺と同い年のはずなのに、小さな子供たちと戯れ、同世代からは疎まれる世間知らずだ。 それゆえ屈託のない笑みや綺麗な思考が張り巡らされているが、ほっといたら死ぬタイプだ。

 

 

 だからか、気がついたら俺が構っていた。 それが、彼女との出会いだ。

 

 

 

 

 「ルイス、お客さんがいるのに家着に着替えることはないだろう。 そんな暇があるなら手伝って」

 

 

 

 「・・・・・・わかった」

 

 

 

 

 おばさんにため息をつかれた。 隠していても、漏れ出す疲れが俺を犯しそうで、あまりおじさん達と閉じられた空間に長く痛くなかったのだが・・・・・・仕方が無い。

 

 

 

 

 キッチンには、スープが入った鍋とパンが入ったかご、ベーコンを焼いているフライパンなどがあった。 炊き上げの余り物もあるようで、決して豪勢とは言えないが、十分すぎる量がある。 俺は、食卓にパンを持っていく。

 

 

 

 

 ・・・・・・ん?

 

 

 

 

 

 「おばさん、そういえば・・・・・・どうして、ここに縄がかけられているの?」

 

 

 

 

 「ああ、それね。 昔、鳥とかの屠殺をする時に使っていたロープだよ。 いまじゃ、よその国から輸入するから、不審者を拘束するロープにしかならないけどね」

 

 

 

 「ふーん・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・なんで、ロープなんか目に入ったんだろう。 食欲をそそる胡椒の匂いが鼻に留まっても、その疑問は頭をめぐる。

 

 

 漠然とした安心感と緊張で、食事がまずくなりそうだ。 やめよう。

 

 

 

 ・・・・・・これは「既視感」というものなのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 「わー、おいしそー!」

 

 

 

 「エドナの家の食事ほどじゃないけど、きっとね」

 

 

 

 「・・・・・・誰かを思って作った食事って、美味しいよね」

 

 

 

 「そうだな・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうやって、当たり前の幸せを紡いでいるはずなのに。

 安心して眠れて、食事も取れて、虐げられることもなく生きているはずなのに。

 

 

 

 

 目から、耳から―――――――焼き付いた何かが俺を惑わす。

 

 

 

 他人事には思えない、そんな記憶が。

 

 

 あの縄。 何か、俺は知っている気がする。 どうでもいいはずなのに。 頭から、離れない。

 

 

 

 目を伏せると見えてくる、豪華に包まれたウエストウェリアではない街。 肌を焦がす熱気に、俺は涙を流していた。

 

 

 自身が体験したかのように、胸が締め付けられて、消えてくれない。 "夢"かなにかで、そこで生きていたような―――――――。

 

 

 

 知りたい・・・・・・知りたい・・・・・・。

 あれはいったい何? あの光景は、いったい・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 「ルイス?」

 

 

 

 

 「・・・・・・」

 

 

 

 

 「うーん、またなにか考えてるのかな?」

 

 

 

 「・・・・・・」

 

 

 

 

 「・・・・・・今日は、何考えてるんだろう」

 

 

 

 

 続く

話しが急展開でわかんねーよ!とおもうそこのあなた。 だいじょうぶ。 作者もわかってない!!




急展開は予定通りです。 決して飽きたからじゃありませんよ汗



あー今回文字多い!!! ツカレター!!

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