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悠久チェイン  作者: 四季 ヒビキ
1章
5/6

役を奪われた演者

クィンディアちゃんは可愛いですよ、髪の毛で襲ってきますけど。 根はいい子なんですよ。


あと、今回ダークファンタジー臭強いです。

怪しい輝きを放つ宝剣。 しかし、自身を宝剣になんて作れるなんて考えられない。 彼女から、目に見えないものが、今まさに具現化されている。

 

 すべてを呪った思念、聞こえずとも感じる悲鳴、何度も何度も見せられたかのようにはっきりと視認できた。


 

 

 

 「―――――――ねえ、あなたもしかして」

 

 

 

 無鉄砲にもハマルは宝剣に問う。 意思を持つ宝剣に話し合える余裕があるとは思えない。 ハマルを引き留めようとした腕を払われ、マルタにその腕を掴まれた。

 

 マルタは俺の横でひたすら俺の腕にしがみつく。 ぎゅっと目を瞑り、頑なに開けようとしない。

 

 

 

 「あのとき、行き倒れてた女の子?」

 

 

 

 

 「―――――――」

 

 

 

 

 

 ぴし、と髪の毛の一部に亀裂が入る。

 

 

 

 

 ぼろぼろ、と崩れ落ち、髪の毛だったものは床に散らばっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・・だ、だ、だァれが女の子じゃあっっっ!!」

 

 

 噛み付くように吠えかかるクィンディア。 口には犬歯のような鋭い歯が生えていた。 ただ、クィンディア自身のサイズが小さいので、ただの八重歯に見える。

 

 女性に歳を聞くべきでないとは分かっていたが、若すぎても老けすぎていてもいけないらしい。 女の世界は怖い。


 

 

 

 「えー、だって私よりちょっと大きいくらいでしょー? それに、あなた人間っぽいし」

 

 

 

 「だからさっきクィンディアって名乗ったでしょう!? ちっぽけな人間ごときに与えられた名前じゃないの!! 二千年くらい生きてるし!! 」

 

 

 

 「えー・・・・・・見えないよ」

 

 

 同感だ。 人であれば十二歳くらいだ。 大人びた顔つきではあるが、やはり子供だ。 くまがひどく、衰弱しているため若々しくはないが、きっと美しいのだろう。

 

 

 

 

 

 「んぬ、んなななな・・・・・・!!」

 

 

 

 

 「・・・・・・あ、あのとき道端で髪の毛で移動していたあの子」

 

 

 

 

 「言うな!! 弱小妖精に言われたくない!! 羽ひんむくわよ!!」

 

 

 

 「や、やめてよ・・・・・・この羽、肩甲骨から生えてるんだから、取れたら生え変わるのに四年かかるんだよ」 

 

 

 

 「あたしは!! あんたらよりも!! 強いんです!! 生きてるんです!! 知恵もあるんです!!」

 

 

 

 「どこから来たの? 刻限木の近くで倒れてたから、もしかしてと思ったんだけど」

 

 

 

 「・・・・・・は?」


 

 

 「うーん、見ない顔だけど、旅人には見えないし」

 

 

 

 「え、ちょ、刻限木?」

 

 

 

 「うん、刻限木」

 

 

 

 「・・・・・・」

 

 

 

 

 おいてけぼりの俺、考えこむクィンディア、それを心配そうな目で見つめるハマル達。 刻限木というやつは、俺たちの世界に深く関わっているようだ。

 

 

 

 

 「―――――――パラレルからの招かれざる客、か」

 

 

 

 

 「・・・・・・おとうさん?」

 

 

 

 静かに、エドガーがそこにたっていた。 幼い容姿からは想像もつかない渋い声で、淡々と、俺たちを無視して語った。

 

 

 

 

 「ねえお父さん、ぱられるってなに? どういうこと? 知ってるの?」

 

 

 

 

 「・・・・・・クィンディア、なぜここにいる」

 

 

 

 「うっさいわ、こっちが知りたい」

 

 

 

 「・・・・・・前ほど、力はないようだな」

 

 

 

 「ふん、ズルしてるあんたに言われたくないね」

 

 

 

  子供みたいに拗ねたふりをするクィンディア。 険悪そうに見えて、そこまで仲は悪くないのかもしれない。

 

 いっぽうエドガーは、伏せがちに視線を逸らす。 なにか、隠しているのだろうか?

 

 

 

 

 

 「・・・・・・三人は外でアリエラおばさんのお手伝いを頼めるかな。 この子は、私に任せてほしい」

 

 

 

 「お父さん、クィンディアに何するの・・・・・・?」

 

 

 

 「・・・・・・彼女は、方向音痴でね。 彼女の故郷に送ってくるよ」

 

 

 

 

 「・・・・・・あっはっは、故郷、ねぇ」

 

 「あんたの故郷なんて、もうどこにもない。 あたしの故郷は、いつだってなかったわね」

 

 

 

 「私のことなぞ、どうでもいい。 クィンディア、お前はここにいるべきじゃない」

 

 

 

 「あんたが知らないだけかもしれないじゃない。 それに、あんたもそうでしょ?」

 

 

 

 

 「・・・・・・子供たちの前では、やめてくれ」

 

 

 

 

 「やーよ、あんたにはいっぱい借りがあるからね。 ま、いいわ。 チビ共、さっさと出てきな」

 

 

 

 「・・・・・・うん」

 

 

 

 

 

 そういって、チビ共は家をあとにした。 時々、不安げに目を伏せながら。

 

 

 

 

 

 「・・・・・・」

 

 

「・・・・・・」

 

 

 「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 「なんであんたいるのよ!!!! 何? あたしより背が高いからって当てつけ?!」

 

 

 

 「えっ、俺は小さいのか・・・・・・」

 

 

 

 

 こんな俺より小さくて頼もしい種族もいるんだ。 その逆だっているだろうさ。 クィンディアの知っている種族に、そういう者はいないのだろうか?

 

 

 

 

 「ああああああもう、ほんっとはらたつ!! キエロ!!」

 

 

 

 「よせ、クィンディア。 ルイスはお前とは別な生き物だ。 お前がかなうはずもない」

 

 

 

 「何・・・・・・?」

 

 

 クィンディアが、顔を歪ませる。 怖い。 だって、エドガーの言葉は俺がクィンディアよりも上だというものだ。 襲われるんじゃないのか。

 

 

 

 それに―――――――俺が、別な生き物? 当たり前じゃないか、だって。

 

 

 

 

 「ルイスは・・・・・・刻限木付近で発見され、あの森を頃くさまよった。 大体二年ほど。 そして、あいつがルイスを生かした」

 

 

 

 

 ・・・・・・刻限木付近で発見された。 その後・・・・・・パンをかじるまでの時間を二年繰り返した。

 

 

 

 

 「じゃあ、あたしみたいに何度も生きてないってこと? そんなのが、あたしにかなわないですって?」

 

 

 

 

 「エリス・・・・・・。 あいつに深く関わる人物に近いのかもしれないな。 ルイスは」

 

 


 

  「待ってくれよ・・・・・・たしかに俺は自分がわからないが、俺は普通の人間だ!」 

 

 

 

 

 「!! ・・・・・・で、でも、なんで今」

 

 

 

 「ルイス、お前は知らないのか? 本当に」

 

 

 

 「し・・・・・・知らない」

 

 

 

 「そうか」

 

 

 

 「あ、ああ」

 

 

 

 「クィンディア。 お前は、私と同じようにズル(パラレル)をした。 だから・・・・・・ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「共に消えよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 固唾を飲んだ。 俺は。 俺は、本当に、生きていてはいけない人物だったのか―――――――?

 

 

 

 わからない。 なんだ、この気持ちは。 どうして、やるせなくて・・・・・・こんなにも腹が立つんだ?

 

 

 

 よくしてもらったエドガーに殺すと宣告されたから?

 ハマルとマルタを置いて消えようとしたから?

 クィンディアを消そうとしたから?

 

 

 

 

 「・・・・・・いやだ」

 

 「いやだ・・・・・・死にたくない」

 

 

 

 

 

 「ルイス・・・・・・?」

 

 

 

 

 「俺は・・・・・・俺は・・・・・・自分がわからないが、知るまでは・・・・・・死ねないんだ!!」

 

 

 

 

 感情の突出。 吹き出すように溢れる恐怖。 その影に、潜む殺意、憎悪。 いったいどこから湧き出るのだろう。 俺の体に、何も意味を持たない俺に、どこからそんなもの湧いてくるのだろう?

 

 

 

 

 

 

 「エドガー、早く逃げなさい!! コイツ、あたくしよりも強いんでしょう?!」

 

 

 

 

 「・・・・・・いや、強いんじゃない」

 

 

 

 

 

 「消えないんだ。 彼は、あの人の想い人だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 続く

エドガー・・・・・・良い奴だったよ(白目)

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