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今日から学校と仕事、始まります。①莞

キャロット

作者: 孤独

買うというわけでもない。しかし、可愛い生物と戯れたい。できれば、動物園よりも近くの檻まで触れるくらいの距離で。そんな気持ちで訪れたのは街にあるペットショップであった。


「毎度ー」


珍しい生物の鑑賞、それを目当てにするお客もいるから店員さんの挨拶は他と違い、緊張感もなく、レジにかけるものをちゃんとして、お金を引き取る。それのみの人に思えるレベルの店員。

今日、このペットショップに訪れたのは学校帰りの女子高生4人であった。


「ペットショップなんて生まれて初めて来た」

「あたしも。ペット禁止のアパートだし」


そーいう人もいるだろう。ペットを飼うというのは大変であり、自分は良くても近隣住民にとっては迷惑となることもある。


「カブトムシとか飼ったことないの?」

「それ男子に有りがちな事じゃない?女子はしないでしょ」


川中、御子柴、嶋村、迎。

四人の女子高生はこのペットショップに訪れたのは、ちょっとした未来的な話をするためであった。当然ながら彼氏がいてもおかしくない年齢であり、子供だって作っても不思議ではない。経済的にはヤバくなるが。


「犬、飼いたいなぁ。ゴールデンレトリバーみたいな賢くて大人しい犬。もふもふな毛並みを毎日楽しみたい」

「迎は犬派なの。あたしは猫ね。家でも飼ってるし(犬もいるけど)。嶋村と川中は?」

「猫とは御子柴の性格に合うねー。私はハムスターみたいな小動物ね」

「嶋村さんと同じかな。私も小さい動物、ウサギとか。鳥でもいい」


1人暮らしにそんな余裕なんてないが、金を稼ぐようになったら新しい家族を求めたくもなる。餌代、散歩の手間暇、色々とあるが。

そーいう設計を立て始める。夢の生活というものが、自分の手によって築けるのではないかという時代なんだ。そーんなこーんなで始まったトークはとてもドロドロとして、らしいっちゃらしいの話である。


「経済力のある男。ペットOKの家に住まわせてくれるだけの、男っていないかな?マンションでもいいけど」

「坂倉くんなら……坂倉くんなら一戸建てマイホームを約束してくれるよ!……先、分からないけど」

「迎、好きって気持ちだけが、必ずしも家計を助けるとは限らないんだよ?」

「嶋村さん、酷い。だけど、うん。私達高校生だもんね、いくらペットは買えても維持なんてできるわけじゃないし、バイトじゃ不安だからちゃんとした仕事に就かないとね」


そりゃ高望みは専業主婦。夫が出稼ぎしている間、家事をこなして、子供の世話、ペットのお世話、自分だけの時間ばかりの、そーんなところを目指したい者もいるが。


「ま、懐の深い奴が良いわね。車も買いたい、バイクも買いたい。私は結婚しても働きたいわ」

「御子柴、行動的ー。あたしはアニメ見たり、漫画描いたり、動画を作るような。とにかく私の趣味を寛大に許してくれる旦那が良い」

「それ家族でも難しいと思う……。って、御子柴は共働き希望なんだ」

「意外?」


御子柴。このグループのリーダー的な存在であり、小悪魔のように男子生徒に悪戯を仕掛けるのが趣味。


「だって、専業主婦より働いている方が色んな人と出会えるし、使えそうな男も見つけられそうだしねぇ」

「うわぁ、そんな理由で働きたいってあるんだ」

「別に逆でも良いのよ?旦那が主夫でも。不倫も、離婚も、色々とハチャメチャに生きてみたいの」


人生、モロに楽しみたい。そんな設計図。不幸だろうと、幸福だろうと。なんであれ楽しんだもん勝ちみたいに語る御子柴であった。


「確かに御子柴が一人の男にラブラブになるなんて、まずなさそう。結婚するにしても」

「迎はその点大丈夫?坂倉くんと両想いにしても、気持ちだけで社会は動かないわ(っていうか、今。凄くショックな事を言われた気がする)」


好き嫌い。それは人の価値観。気持ちで幸せか、金で幸せか、傍にいる人で幸せか。


「支えるもん!私だって、坂倉くんが困ったら助けるし。するのが、未来の妻でしょ!」

「高校卒業したら結婚だね、これもう」

「できちゃった婚の方が早いかもね」

「茶化さない!」


少しはもうちょっとだけ、待たなきゃいけない。色々なことがあるし、御子柴の言葉の方が正論っぽい。ただその気持ちがとても幸せだというのは迎にはよく分かっている。

続いて欲しいと願い続けるなら、進んでいくこと。


「私はアニメ三昧ねー。結婚とかよりアニメ」

「嶋村ちゃんは好きなんだね」

「アニメのランキングを作りたくないの。仕事終わって家帰って、録画したアニメなり、OVAのアニメを観ながら買って来た夕飯を食べる。それが毎日続いたらもう、サイコーでしょ!」


こいつ、ぜってー結婚しねぇな。とはいえ、


「アニメグッズを沢山置ける、大きな一戸建てに住まわせてくれる素敵な王子様なんか現れたりしないかな?できれば、アニメ好きで」

「嶋村にも結婚願望あるんだ……」

「単純に意気投合できる趣味を持つ人と。女の子同士でも良い」


結婚というより趣味が合う人を求める。奇跡的に、アニメ関係に興味のない御子柴達とも仲が良い嶋村だからこそ、願っているのはそーんな生活。

理想な彼氏もそうだが、理想な生活というのも考え始めている、最近の女子達。


「川中はどーんな人が好み?」

「え。好み?それはカッコいい人が良いけど」

「誰だってそうでしょ……」

「結婚したり、将来。どんな生活したいか」


残ったのは川中だけ。

御子柴は働きつつも、金も人も使って遊びまくる生活。迎は現在の彼氏とよりよい家庭を築く生活。嶋村は自分の趣味をもっと楽しむ生活。

川中に理想的な生活がないと言ったら、嘘になる。悩んだ時間はそうなくて、


「家族が多いと良いかな」

「お」

「私、1人っ子だったし。ペットも飼ったことなかったの。小さい頃、ウサギはきっと静かだから、飼って欲しいって親にも泣いて頼んだけど、それでも飼ってくれなくて」



……なーんて。ちょっとみんなとは違う答えになっちゃったかな?アバウト過ぎ。

将来は素敵な結婚だけじゃなく、良い家庭を持ちたいなぁ。


「つまり、沢山子作りをしたいと?川中って案外、エロいことを考えてたのね。そんなにしたいと」

「え!?」

「大家族は良いと思うけど!あんまり作り過ぎるのは大変だよ!不倫にしても、不幸な渦中で生まれる子供は可哀想だよ!ちゃんと考えてね!川中!」

「ええっ!?迎ちゃんまで!!」

「ウサギって○欲が強い動物らしいよ。川中もそんな感じ?」

「そんな情報は要らないよ!嶋村ちゃん!」


お前等、ペットショップで何を話しているんだ。



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