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絶対攻撃力1  作者: 桜毛利 瑠璃
第一章
15/35

15.王都での決断

 王都に着いてから1週間が経ち、俺はあることに悩まされている。


 別に、お約束のように、王都に入る時ひと悶着あったわけでも、約束の3ヶ月分の生活費を貰えなかったわけでもない。とうぜん王都だからと言って100万人も人が居るわけないでしょと呆れられた事をショックに悩んでいる訳でもない。



 なんせ入るときは、シュン達が普通に身元を引き受けてくれたし。3ヶ月分の生活費として、1000万デールを渡されていたので金に悩まされていることでもない。

 1000万デールと言えば、一般庶民が3ヶ月どころか、3年働かずにいられる金額だったりする。その事は王都に着くまでに、日本円とあまり変わらないことを確認していたので、貰いすぎだと言ったのだが、魔神の守護竜の死体を売れば何十億にもなるから、1000万なんてどうでも良い金額なんだとさ。だから3ヶ月分の生活費を寄越せと要求した時に変な顔をしていたらしい。流石は勇者チーム、半端なく稼いでいるようである。


 そんな勇者チームだけど、出ていく金も半端ない。専用と聞いていたが、シュンとバロンの武器と防具の修理・調整に掛かる費用が数千万掛かるんだとか。


 あのとんでもなく強いはずの魔神の守護竜と戦っていたにも関わらず、身体の怪我は殆ど無かったり、堅そうな尻尾や腕を切断していたりと、シュンとバロンの武器防具の性能は尋常ではない。


 それもその筈、ベースは古の錬金術師が全身全霊を込めて造った魔力の籠った武器防具とのこと。鑑定石と同様、今の技術でも同じものを造る事が出来ないが、多少の修復と調整なら可能だと言う。


 武器防具とは言っても、ただの金属の塊だと思っていたのだが、魔力の籠った武器防具は、別次元に高いんだそうだ。



 おっと脱線した。そう俺が悩んでいる話なんだが。シュン達から正式にワンピースに加入しないかと誘われたのだ。行動を共にしていたからわかっているが、人としてシュン達は、良いやつだ。俺がもう少し若くて、そして普通なら是非ともと即決していただろうが。俺には【絶対攻撃力1】と言う戦闘には役に立たないスキルがある。

 このスキルのせいで俺は、いくら非戦闘時になら役に立つとは言え、戦闘時は守られっぱなしの御荷物にしかなれないのだ。


 なので正直には言わず、年齢を盾にして断ったのだが、次はハウスキーパーとして雇われないかと打診してきたのだ。


 自分で言うのもなんだが、こんなオッサンを引き留め続けるなんておかしい、なのでその理由を聞いたのだが。


「ただの直感」


 さすが脳筋勇者。「考えるんじゃない!感じるんだ!」って感じで、直感で決めているんだと納得もしたし感心もした。


「シュンの直感は良く当たるよね。私もまだジン様から、色々と教えを頂きたいと思ってるし」


 ミリィの言い分は理解できる。俺が魔法を使えなかった様に、新しいスキルを宿すには知識だけではなく観ることも重要だから。


「ぬう、まだ強くなれる」


 俺のサポートは裏を返せば、味方を不利にも出来る。しつこく手合わせを求めるバロンに、悪条件を造り出せば修行が出来ると、アスレチック紛いな事をさせたらすっかりハマってしまって早朝訓練に付き合わせれてたりする。


「モジャ爺……サラダ美味しい」


 チモシーはスルーだ。ただ断じて餌付けした覚えはない。



 そんなこんなで引き留められて、取り合えず勇者チームの王都の家と言うか屋敷で、1週間過ごしているのだが、そろそろ決断をせねばなるまい。


 スズメを生産するか否かを。


 え? ハウスキーパーになるかならないか悩んでいたんじゃないかって?


 そんなの、なるに決まってるじゃないか。住居も生活費もすべてシュン達持ちで、のんびり家の管理をしていれば良いのだから。

 右も左もわからない異世界で、これだけ好条件な就職先なんて有り得ないでしょ。


 強いて言うならチモシーの爆弾だけど。チモシー付きの執事って設定なら有り得るけど、ただのハウスキーパーが巻き込まれるなんて話しは聞いたことがないから問題ないだろうし。

 勇者チームの冒険の旅に職業ハウスキーパーが着いていくなんて、それこそあり得ないっしょ。


 俺は、この大陸で最大国家の王都に住むことが出来た。これほど安全な地は無いでしょう。



 そんな訳で、周囲偵察をする必要がなくなったのでスズメを生産することにしたのだが、とんでもないことになっていた。





【疑似生産(小鳥)】

<擬似生物の小鳥を生産出来る。魔力を擬似的に固定した魔力生物。内包している魔力が尽きると霧散する。内包している魔力はダメージを受けると減少する。


※小鳥を無傷で連続1000羽生産したことにより【小鳥遊】スキルを得た。

※小鳥を無傷で連続1000羽生産したことにより【小鳥遊2】スキルを得た。

※小鳥を無傷で連続1000羽生産したことにより【小鳥遊3】スキルを得た。

※小鳥で強敵を倒したことにより【小鳥の鷹狩り】スキルを得た。

※小鳥で竜を倒したことにより【竜の息】スキルを得た。

※小鳥で最上位魔竜を倒したことにより【破壊の息】スキルを得た。

※小鳥で最上位魔竜を倒したことにより【殺戮の爪】スキルを得た。

※小鳥で最上位魔竜を倒したことにより【殺戮の牙】スキルを得た。

※小鳥で最上位魔竜を倒したことにより【最上位魔竜の魂】スキルを得た。

※小鳥で最上位魔竜を倒したことにより【相互理解】スキルを得た。


※【絶対攻撃力1】スキルの効果により、与ダメージは1固定>




 魔神の守護竜を倒した後、四文字漢字魔法の【能力閲覧】で自分の能力を何度か観ていたのだが【疑似生産(小鳥)】の表記は変わっていなかった。

 なので態々掘り下げる事をしなかったのだが、4羽目を生産しようとすると『本当に良いのですか』と確認される状況が気になって見直してみれば、スキルにスキルが宿ると言う事態になっていた。


 詳細は、はしょるが要するに。


【小鳥遊】は、親スズメを1羽生産出来る様になり、部下として子スズメを999羽まで統率する事が出来るらしい。親スズメは子スズメからの情報を得て、更に俺に伝える事が出来る様なっていたみたいだ。スズメと感覚共有出来たのは、このスキルのおかげだったようだ。【小鳥遊3】なので親スズメは3羽まで、部下の子スズメは2997羽まで生産出来る。と言うことは、これからは子スズメを生産していけば、偵察も、いざと言う時の時間稼ぎも出来るってことだ。


 今まで悩んでいた事が無駄になってしまった。


 それにしてもスキル入手方法が、小鳥を無傷で連続1000羽生産だなんて、普通無理だろ。今までに成し遂げた奴って居るのか?


【小鳥の鷹狩り】は、スズメが増えれば増えるほど、スズメの攻撃力が増し、尚且つクリティカルが出やすくなる。

【竜の息】魔力を使用して火、水、風属性のブレスが放てる様になる。

【破壊の息】最上位土竜が持つ、岩をも塵と化す特殊なブレスを放てる様になる。

【殺戮の爪】岩をも切り裂く爪を得た。

【殺戮の牙】岩をも砕く牙を得た。


 一見した時に正直、スズメ最強! 俺の天下!

 と思ったが、攻撃に関しては、すべてを駄目にする【絶対攻撃力1】スキルのせいで無駄スキルと化してしまった。

 あ。でも、無駄じゃないか。スズメが色々便利になったと考えれば良いだけだよね。


でもこの2つは、いざと言う時に使えるスキルだ。

【最上位魔竜の魂】格下の竜を威圧し成功した時に、従わせる事が出来る。

 そうそう竜に出くわすことは無いと思うが、保険にはなるだろう。


【相互理解】すべての生き物との意志疎通が出来る。


 意志疎通が出来ると言う事は、交渉が出来ると言うことだ。いざと言う時に戦いを回避することが出来るかもしれない。



 もしあの時に、俺が最後の一撃を与えていたら、このスキル達は俺のスキルになっていたのかもしれないと思うと勿体無い気がしたが、考えてみると、どのスキルを使うにしても接敵しなければならない。

 そんな状況で冷静に対処できる程、俺のハートは強くないから、これで良かったに違いないと思うことにした。


 スズメの生産の前にやることが出来た。

 そう、長い付き合いになるであろう、親スズメ3羽の名前付けだ。


 名前を付けるなんて、小学生の頃以来だ。それだって、ミーミー鳴く野良猫にミーちゃんと付けていた程度だ。はっきり言って得意じゃないけど、呼びやすい名前が良いよね。



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