14.王都目前での整理
辺境の村にしては立派な名前のフォレストア・リスタニアの宿でブリーフィングをしてから1週間が経ち。 俺達はジュピター王国の王都であるジェスターまで、あと半日の所まで来ている。
この1週間は、夜営する時を除くと、時折現れる魔物や天物を退治する時以外は、馬車は留まることなく進むことが出来ている。
ここまで来る間に、シュン達には内緒で、俺はスズメを3羽生産している。
寝る前に安全が確認出来る場所じゃないと危険なので、この数しか生産出来ていない。
出来ていないが、これ以上生産するかどうかの瀬戸際に立っていたりする。洞窟に居た時には、闇雲にスズメを生産していたが、魔神の守護竜との戦いで全てを喪ってしまった。
暫くは、生産する気になれなかったが、アリスに襲われた時に、決意してスズメの生産を再開したのだが。俺が生産したスズメさんは、実はかなり有用な存在だった。
なんと、ある程度なら感覚を共有することが出来たのだ。さすがに、自分がスズメになれたと勘違いするような感じではなく。スズメが何かを感じた時、そのイメージが届くと言う感じだ。
なので、元々簡単な命令には従ってくれていたので、上空から監視をしてもらっていた。街道に出てからは、スズメのおかげで、魔物や天物の早期発見が出来たので、対応の下準備がそれだけ早く出来てたりする。
シュン達にしてみれば、魔物や天物が奇襲してきた様な状況でも、俺は淡々と石壁を造ったり、広域魔法を放ったりして、準備万端落ち着いて遅延工作をすることが出来た。
その結果、シュン達に更に感心され、俺の評価はうなぎ登りだ。俺の役割分担と言うか、戦闘中の立ち位置も決まり、戦術としても確立したので、すっかり勇者チームに溶け込むことが出来た。
だが、このままスズメを生産する事が出来れば良かったのだが、4羽目を生産しようとした時に気が付いたのだが、これ以上増やすと感覚共有が出来なくなるらしい。
なぜそんな事がわかったのかと言うと、変な言い回しだけど、スキルがそれでも増やすかと言ってきた気がしたからだ。
このまま勇者チームと行動していくなら、戦術も確立したことだし、スズメ3羽体制で問題なさそうだが、俺の攻撃力は1しかない。ピンチに陥った時に、逆転の1撃を放つことが出来ない。
スズメを増やせば、今は3羽だが、3年も経てば1000羽となり、ピンチに陥ったとしても、逃げることぐらいは出来そうな気がする。
でも増やせば、上空監視が出来なくなるから、今までの戦術がとれなくなる。まぁ、元々俺なしでも勇者チームは強いので要らないことかもしれない。
急ぐことは無いかも知れないが、中途半端にしておくと後悔にしかならない。早々に決めたいところだ。
話しは変わるが。フォレストア・リスタニアの宿でブリーフィングをした時に引っ掛かったこととは、ミリィがスキルが宿ったのかもと言っていたことだ。
それとなく話を聞いてみると、自身のスキルを見るには、冒険者ギルドで管理している、能力鑑定石に触れる必要があるのだそうだ。
鑑定石は、古の錬金術師が、その頃に発足したばかりの冒険者ギルドの長に贈った物で、当時は今と違い、冒険者の中に強い魔法を使える者が極端に少なかった為、魔法を使える才能のある者を探す為に使われたのだそうだ。
そんなある日、田舎の農村で勇気の才能スキルと言う、謎のスキルを持った気弱そうな少年が見つかった。冒険者ギルドは、その少年をギルドに迎え入れ、どんなスキルなのか経過を観察した。すると勇気の才能は勇気となり、勇ましき者、勇者として覚醒した。同時に気弱そうな少年は、勇ましき者となり、当時猛威を奮っていた魔王を単独で退治することとなる。
この事態を重く見た列強各国は、我が国にも勇者をと錬金術師に能力鑑定石を量産させた。だが、錬金術師は既に高齢で在ったため。無理が祟り88個目を生産した所で、この世を去った。しかも数人の弟子が居たが、生産する事を最優先させたがため、弟子は能力鑑定石を作る事は出来ず技術は途切れた。
勇者を見いだした冒険者ギルドは、発言力を高め各国、各地域に支部を置くと共に、生産された能力鑑定石の内、62個を手中に収めた。残りの26個は当時13国在ったため2個ずつ配分したと言われている。だが時と共に盗難、事故、栄枯盛衰の果てに失われてしまい、現在存在を確認出来るのは20個に満たないと言う。
まぁ。長々と説明したけど、それとなく聞いたら、すげえ勢いで説明されたって話だ。
そんな貴重な能力鑑定石が、今向かっているジェスター王国のギルド本部にもあって、一定の功績をあげたものしか鑑定して貰えないそうだ。それだけ貴重な事らしい。
俺は四文字漢字魔法で【能力閲覧】が出来るが、この事がバレるのはヤバそうだと言うことがわかった。それだけでもミリィの『賢者様なのに、こんなあたり前な事も知らないのか』と言う冷たい視線に耐えながらも長話に付き合った甲斐があるってもんだ。
と、えらい脱線をしたが、巫女さんや天神の使いには、簡単に観られていたので警戒していたが、基本的に能力を他人に観られることはないようなので、ひとまず安心した。
因みにシュン達の主要スキルは、こんな感じだ。( )の中はレベル。
名 前:シュン
種 族:猿人
生命力:100%(健康)
年 齢:16歳
スキル:
武術スキル:
剣術(81)
盾術(79)
魔法スキル:
雷魔法(83)
火魔法(30)
水魔法(30)
風魔法(45)
光魔法(35)
特殊スキル:
勇者(62)
吸放電(79)
空歩術(45)
注目は【吸放電】と【空歩術】。
【空歩術】は魔神の守護竜と戦った時に、竜よりも高く跳躍した様に見えたが、このスキルで駆け登ったのだろう。
【吸放電】も同じく、コンボの最後で見せた頼雷剣の直前に、光の玉を受けていたが、アレはきっと、火と風と石の破片が擦れて起きた静電気を吸収したのだろうと思われる。
名 前:バロン
種 族:猿人
生命力:100%(健康)
年 齢:18歳
スキル:
武術スキル:
剣術(71)
盾術(83)
魔法スキル:
火魔法(60)
特殊スキル:
大防御(78)
剛力(88)
戦天神の加護(守)
注目は【戦天神の加護(守)】。
<味方からの誤攻撃を半減出来る>
魔神の守護竜戦で、ミリィとチモシーが魔法で放った土砂竜巻に突っ込んでいった時、自爆技かと思っていたが、このスキルの裏付けがあっての行動であったようだ。
だけど、たとえ半減出来たとしても結局は、自爆技には違いはないと俺は思う。
名 前:ミリィ
種 族:猿人
生命力:100%(健康)
年 齢:16歳
スキル:
武術スキル:
杖術(40)
弓術(40)
拳術(69)
魔法スキル:
土魔法(48)
特殊スキル:
聖天神の加護(癒)
注目は【聖天神の加護(癒)】。
<魔力と引き換えに、対象の傷の回復を早める。>
ミリィが、このチームの回復役ってこと。良くある回復魔法とは違い一瞬で回復するわけではないし、体力は回復しないし、戦いに向いていない中途半端なスキルのような気がする。
それにしても戦闘時に使ったのを見たことがない拳術が、飛び抜けているのは何故だろう。
名 前:チモシー
種 族:天魔神族
生命力:100%(健康)
年 齢:8歳
スキル:
武術スキル:
杖術(40)
剣術(40)
魔法スキル:
風魔法(69)
特殊スキル:
迷える幼子
閲覧不可
【迷える幼子】ってスキルなんですか? 確かに8歳だし幼子には違いないけど、身長175センチもあって幼子なんですか? しかも説明を見ても<迷える幼子>としかわからん。
更に閲覧不可。スキルを閲覧できないのは、魔神の守護竜こと竜さんに続いて2回目だったりする。因みに森の管理人のアリスは、それ所では無かったので観ていなかったりする。
「ジン様、王都が見えてきましたよ」
ミリィから声を掛けられたので、馬車の幌から顔を出すことにした。
「ほぉ、こりゃ驚いた。ずいぶん大きくて立派な城じゃの」
「そうですね。5年前くらいに建て替えたばかりですわ。この大陸最大国家の威信を賭けて建築したらしく、大陸で一番大きな城みたいですよ」
「ほぉ、そりゃまた豪勢な。そうなると、街並みも整っておるし、再建に掛かった費用とかで税金とか高いんじゃないかの」
「そうですね。でもここ数年、魔物や天物の活動が活発化しているおかげで、国家間の戦争なんてしてられない状況だからか、税金が上がったなんて話しは聞いたことが無いですよ」
先程、王都を初めて見たような言い方をしたが、実際はスズメ達を通じて王都を既に見てたりする。だから、早々に内政の情報を得ることにした。
因みに、上空から王都を見たイメージでは、城の北から北東側は湖があり、街は南西へと広がっている。城の城壁の周囲は、立派な建物が等間隔で並んでいることから、貴族等の身分が高い人物達の居住区だと考えられる、そして内壁を挟んで、一般居住区が外壁まで続いているって感じだ。
防壁として北から北東側は湖と川を利用してあるし、そこから半円を描くように、外壁、内壁、城壁の3重構造となっているので、見栄えだけではなく守りを重視した構造になっていることが見てとれる。
「王都と呼ばれるくらいじゃから、人口は100万人くらいかの」
そんな一般常識を聞きながら王都までの道を進むのであった。