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絶対攻撃力1  作者: 桜毛利 瑠璃
第一章
13/35

13.ブリーフィング

 森の管理者の言うことに従って、2日滞在してから、俺達は出発した。石小屋は、出入口にドアを造り、ミスリルコーティングした鍵を掛けてきた。鍵は、一応俺とシュンが持っている。


 再開した旅は順調に進み、2日で街道に出て、そこから最寄の村まで1日で着いた。


 この村の名は、フォレストア・リスタニアと言う村にしては仰々しい名前だが……って森の管理者さん、区切りがおかしいけど名前バレしてるよ。


 過去の詮索は置いといて、この村は元は冒険者だった者達が、最後に落ち着く場所として賑わっている。


 俺達が、この村に立ち寄ることになったのは、この村には、シュン達と、騎士団の馬車が預けられていたからだ。


 建前上騎士団は、稲妻の勇者を、魔神の守護竜の元まで無傷で送り届ける手筈であったが。


 実際は、シュン達が弱すぎる騎士団を守りつつ進軍するはめになってしまった。しかも弱いと言うのに、魔神の守護竜の部屋に着いたとたん、我ら竜の騎士団が竜殺しの名誉を得るべきだと、魔物の群れを強行したシュン達が魔力の回復を待っている間に、総勢20名の騎士達が突入した。


 20名? でも死体は多くても6人くらいじゃなかったかと聞いたら、突入した直後に、咆哮を受けて怯んだところで、ブレスの直撃を受けて防具ごと消し飛んだそうだ。


 残っていたのはブレスの効果範囲ぎりぎりに居た騎士で、それでも余波だけでバラバラになってしまったそうだ。


 騎士団は、道中は邪魔ばかりで、魔神の守護竜戦では、何もしない内に全滅したそうだ。


 シュン達は、その報告をするべく、居残りの騎士に報告しに行っている。因みに俺は、行っても意味がないので宿で待機中だったりする。


 そう言えば、俺の疑惑はあっさり解消された。


 俺が実年齢を言うと。


「なんだやっぱり爺さんじゃん」


 シュンの父親は32歳で祖父は48歳。シュンが8歳のころ、祖父にワシが、お前の爺じゃと紹介されたと言う。逆算すれば、祖父は40歳だったはずだから、俺は爺さんで問題なしだと言うことになる。


 異世界では、俺はもう爺さんなんだと考えると、やるせない気持ちになったが、気持ちはまだ若いつもりなので、気にしないようにすることにした。


 どうでも良いことだが、ミリィの爺さんは50歳。バロンの爺さんは62歳。チモシーは知らないそうだ。



 そろそろ夕飯が食べたくなってきた頃、シュン達がゲッソリとした風体で帰ってきた。


 何事が起きたのかと聞けば、居残りの騎士団の奴等に洗脳されたと返ってきた。


 詳細は省くが、騎士団はシュン達を、無傷で魔神の守護竜の元まで護衛し、シュンと共に竜と戦い、多数の死者を出すが瀕死寸前まで追い詰めた。だが、勇者達を道連れにしようとした竜が放ったブレスを生き残っていた騎士達が己の身を犠牲にして防ぎ全滅。そして勇者が竜の留めを刺したって事になったそうだ。


 このストーリーにするように騎士団から説得を受けて、渋々了承したが、そこから何度も復唱させられて、今では何が本当の事で何が虚偽かもわからなくなっていると言う。


 俺が合流する前の話だし、真偽はわからない。


 まぁ。騎士団のプライドもあるし、大人の都合って奴だから、御苦労様としか俺は言えなかった。



 シュン達が落ち着いたので、夕飯を食べることになった。この世界に来て初めての、外食だ。どんな調味料を使っていて、どんな味がするのか期待していたが、至って普通。むしろ俺のハーブを使いまくった適当料理の方が味わい深いとは思いもよらなかった。


 コックさんが悪いのでは無くて、野菜しか食べられない俺が悪いのだが。


 その証拠に、シュンがおかわりをしながら食べている具沢山シチューは、肉の旨味が引き出されているようで、とても良い香りがする。


 ミリィの食べているバードステーキは、ナイフを入れる度に肉汁が溢れ出ている。この店オリジナルのトマトソースと肉汁が合わさった香りは、それだけで白飯が食べられそうだ。


 俺が食べているのは、肉野菜炒め肉抜きだ。本来は肉と野菜と調味料が合わさって、絶妙なハーモニーを醸し出す料理だったのだろう。


 肉が食べられない俺が悪い。やっぱり、その一言に尽きる。


 因みにチモシーは、野菜炒めを選択しずに、サラダと果物を食べている。俺もそうすれば良かったと今更ながらに思うのだった。


 食事の後、寝る前にシュンの部屋に集まり、ブリーフィングをした。


 今後の予定は、魔神の守護竜から奪取した宝玉を、この国の首都にある冒険者ギルドまで届ける事になる。


 俺は、最終的に治安の良い場所にまで連れていって貰えれば良いので、是非はない。一人で旅することなんてそもそも無理だから、その道中で色々な物が見られれば万々歳だ。なのにミリィから。


「ジン様。実は治安の良い場所と言うなら、ここ程治安の良い場所は無いと思います。だって、この村の住人は引退したとは言え元冒険者ばかり。なので魔物や天物が現れても、住人だけで追い払えますしね。だから治安の良い街まで連れていくと言う約束は、これで果たしたことになります。なので、ここでお別れです」


 もしかして、俺の異世界での旅って始まったと思った瞬間、すぐ終了ってこと? それともミリィに嫌われる様なことした? 確かに魔物やら天物と戦いになった時は、岩影に隠れたり、木陰に隠れたり、後衛の二人より更に後ろにいたりしながら石細工術を使って、前衛の二人の足場を整えて、戦いやすくしたり、襲ってくる奴等の足下を隆起や沈降させたりして一度に襲われないようにしていただけで、攻撃の足しには何の役にもたってなかったけど。そうか、こんな爺さんを護衛するのが面倒になったってことなのか。こんなお荷物は、適当なことを言って厄介払いしとくべきと言うことなのか。と少しネガティブな事を考えてしまっていると。ミリィが続けて。


「でも、個人的には、もっと教えを請いたい。私はと言うか、普通の魔法士は、シュンやバロン達、戦士に守られながら魔力を高め、遠距離から威力の高い魔法を放つことだけが仕事と考えていました。だけどジン様は違った。ねぇ、シュン。ジン様が居なかった行きと居る帰りでの違いって細かい事だけど気付いてる?」


「そうだな……夜営だっちゅうのに安全だったとか?……これは細かくないか。他は……なんとなく魔物の動きが鈍かったとかかな」


「ぬう。それは自分も感じた。更に、何故かわからんが、攻撃もしやすかったぞ」


「そう、それよ。私も初めは何してるかわからなかったけど、ジン様は私達の居る地面は平らにして、魔物の居る地面は凸凹にしていたのよ」


「ってことは。俺達は足場が安定してて戦いやすかったけど、奴等は足場が悪かったちゅうことか」


「ぬう。そんな小細工。否、そんな補助、受けたことなぞないぞ」


「隠て……もっこり……凄い」



 チモシーがアレな言い方しているけど意味は通じたから、突っ込まないぞ。何となく守られっぱなしだと嫌だから、出来る範囲でアシストしてるつもりだったんだが、気が付いてたのか。流石は冒険者って事か。自分が勝手にしていたことだから、自慢するのは恥ずかしいけど。


「カッカッカ。バレておったか。ミリィはよく見ておる。シュンもバロンも感覚だけでわかるとは、流石じゃの。チモシーも、天物に風と言えばわかるか」


「ん……天物鈍い……当てやすい」


「そう言えば、翼ある魔物に襲撃を受けた時も、妙に魔法が当てやすいと言うか、動きが悪かった気がしたけど。まさか」


 因みに、この世界では魔神に属する生き物が魔物。基本的に地を駆ける奴等で。天神に属する生き物が天物。基本的に空を駆ける奴等だったりする。基本的になので、単純に翼の有無だけで判断は付かないけど。


「カッカッカ。ミリィやチモシーに教わった魔法を、使わせて貰っただけじゃ」


 ミリィやチモシーが天物に魔法を放つ直前に、上空に向けて広範囲に風を吹かせただけだったりする。


 でも、滞空中にいきなり風が吹けば、天物も踏ん張ろうと一瞬動きが止まるだろうし、そしたら当てやすいと考えてやってみたことだ。


「てっきり……この一連の旅で、私とチモシーに新たなスキルでも宿ったのかと思っていたのに、私達もジン様にフォローされてたなんて」


「モジャ爺……賢者」


「カッカッカ。何度も言っているが、ワシは賢者と言われる者などではないぞ。ただの老い先短いジジイじゃ」


 悲しいけど。これって現実なのね。10代の少年少女から見れば40歳は、オッサン通り越して、ただのジジイなんだよね。でも何か引っ掛かったな。これって。もしかして。


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