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夕日色の青年

ポニーテールで纏めた長い夕日色の髪が風に揺れる。



黙っていれば、女の人にも見える青年が、はにかみながら言った。


「すみません、引き留めてしまって……急いでました?」


「あ……いや…その…、大丈夫です、一応…」


事情を説明すれば、院長先生は許してくれるハズだ。……多分。


「アルトリディアの街はこの先でいいんですよね?」


「そうですよ。もしかして、街に行きますか?」


「はい。この辺は始めてなので……」



何となく、この人は旅人かなとは思っていたけど、当たりかな。


それに、困っている様だし……院長先生も、困っている人を見つけたら手助けしてあげるべきだって言っていたし……街まで道案内してみようかな。


「よかったら、街まで案内しますか?」



そう言うと、青年は一瞬目を見開いた。でもすぐに、嬉しそうに目を細めた。


「いいんですか?」


私が頷いて肯定すると、助かります!と本当に嬉しそうに答えた。




何だか、ちょっと不思議な人だなぁ…








「そういえば、旅人さんの名前は?私はソフィアっていいます!」


私がそう名乗ると、青年は少し考えてから口を開いた。


「私は…(ユウ)です。」


「ユウさんかぁ……」


「できれば…呼び捨てでお願いします」


「えぇっ!?」


思わず変な声をあげ、バッとユウを見た。


…ユウは明らかに大人の人だ。大人に対して、私みたいな12歳の子供が呼び捨てするなんて……院長先生に聞かれたら、確実に大目玉を食うだろう。


私が変な目で見ていたのか、ユウが困ったように首を傾げていた。

そして不意に、悲しそうに目を伏せた。


「ひょっとして、バレちゃいました…?」


「え…?何が?」


今度は私が首を傾げると、ユウはハッとしたように顔を上げ、誤魔化すように微笑んだけど、少しぎこちなく見えた。


「何でもないです。……わからないなら、それで構いませんから。」


私にはその意味がわからず、首をひねっていると、ユウは目を細めて笑っていた。












私の先を行く長い金髪の少女、ソフィアはよく表情が変わる。


まるで、昔のあの娘みたいだ。


そんなことを思っていると、少し先に誰かが立っているのが見えた。


その人物を知っているのか、ソフィアが「うっ…」と息を呑むのが聞こえた。


「ソフィア?」


「院長先生だ…」


「院長先生?」


私が訊くと、ソフィアは孤児院の先生だと答えた。…つまり、この娘は孤児なのか。



ソフィアに気づいたのか、その人物はこちらに近づいて来る。



「ソフィア!門限の時間はとっくに過ぎてるわよ!?」


茶髪の女性…院長先生がソフィアを見るなり叱り始めた。


「ごめんなさい…!院長先生!ユウ…さんに街の案内をしていたら…」


「ユウ?」


「あ、私のことです。」


院長先生が私を見ると、一瞬目を見開いたが、すぐにこちらに向き直った。


「アタシはリナ。孤児院の院長です。貴方は旅人ですか?」


「はい。私はユウといいます。今回は本を書くためにこの街へ取材に来たのですが、この辺は始めてなので…少し迷ってしまって…」


「そうでしたか。ソフィアが案内を……まあ、いいでしょう。」


…何だろうか。さっきの間は。←



「それにしても、ハーフエルフの旅人ですか…」


「っ!…やはり、駄目ですか…?」


院長先生…リナの言葉に思わず反応してしまう。…"()()()()()()"という言葉に。


「ああ、いや。珍しいなと思っただけですよ。ただでさえ、この街は様々な種族が住んでいますので、気にしなくても大丈夫ですよ。」


「そう…なんですか?」



正直意外だった。


まあ…数多くの様々な種族の人々がいれば、そうなるのかもしれないが…。




ただ、そんな風に言われるのは初めてだ。





「それで、ユウさんは泊まる宿を決めてます?」


「それは……今着いたばかりなので、これから…」


私がそう答えると、リナは苦笑した。


「時間も時間ですから…今からは少し難しいでしょう。…部屋は空いていますから、今夜はうちの孤児院でどうです?」


それに、旅の話もしていただけるとありがたい、と付け足される。


…私は時雨程、旅をしたことがない。


だが、この話は決定してしまったようだ。


(…参りましたね…)


…どうにかして乗り越えよう。


そう決意しながら、私は「お願いします」と答えた。

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