ノロイノイロ
人を直接殺せば犯罪だが、呪い殺すのならば話は別だ。
呪を証明なんてできない。そんなことは殺人の証拠になり得ない。
「あの人を殺したいのかい?」
自分の部屋の人形が、ひとりでに動き、言葉を話した。
なんて、言っても誰も信じてはくれないだろうし、頭がおかしいと思われるだけだろう。
「ああ、どうしても殺してやらなきゃならないんだ。」
だが、結局、俺はその「呪い」と言うものに手を染めた訳だ。もう後戻りはできない。
「ああ、そういえば君。」
ここで人形が、思い出したように口を開く。なんというか、ひどく興ざめだ。
「なんだい人形。」
返事も自然と適当になる。これは仕方がない。
「君は、十八歳になっているかい?」
呆気にとられた。無論、質問の内容に、だ。
「何でそんなことを聞くんだ人形。まあ、数か月前に十八歳になったから、十八歳だが。」
まあ、聞かれたから答えるまでだが、何故そんなことを聞く?
「いや、何の考えもなしに、馬鹿で稚拙なガキ共が人を呪い殺すなんてあってはならないからな。そこはまあ、十八禁なんだよ。君。」
「そうか。」
まあ、そんな人形の決まりは俺に関係ない。どうでもいい事だ。
「ああ、あと、言い忘れていたが、呪い殺す時に代償として、君がその相手へ抱いている憎しみを全て捧げてもらう事になるが、いいかい?」
どういう意味かは解らなかったが、取りあえず「ああ」と答える。
「わかった、じゃあ、「今」奴は死んだ。」
瞬間、頭の中でモヤモヤが消えたような気がした。
「……。」
おかしい。先程までの、どうしようもない殺意が、ない。
「何故殺した?」
自分で殺してくれと言ったはずなのに、こんな言葉が口から吐き出される。
「君が殺せと言ったからじゃあないか。」
自分は何故あいつを殺そうとしていたんだろう。全く思い出せない。
そして、俺は……。
自殺した。
「毎度、君の魂も、彼の魂も、ごちそうさま。」
人形がケタケタと、笑って落ちた。