入団試験~case2サツキさんとヘルメスさんの場合その1~
ゲームでの戦闘描写って普通に戦闘描写するより難しいでございます。
2014年5月9日加筆修正
『念話』の相手は<エルダー・テイル>を始めた頃から連んで遊んでいるサツキからだった。<黒剣騎士団>に入団して以来、なかなか一緒に遊ぶ事はなかったが、プライベートでもオフ会をしたりするくらいには親しい義盛の数少ない<エルダー・テイル>が縁で出来た友人だ。そんな大切な友人からの久し振りの『念話』の第一声は『助けて』だった。ギルドホールを退席して兎に角走りだした義盛。
「お嬢!現在地は何処?ヘルメスも一緒なの?」
矢継ぎ早に質問しつつメニュー画面を操作し戦闘用の装備を整え始めると別の『念話』が入る。
「ヤッホー♪久し振り~!今、ブリッジ・オール・エイジスの前でPKに囲まれてる~。助けて王子さま~♪」
説明される状況の割りにどこか茶化した言い方をする、間違いなくもう1人の友人ヘルメスだ。
「はぁ~!?こんな時間にアキバの真ん前でPK?嘘でしょ?」
義盛の云う通り現在のリアル時間帯は夜8時30分を少し過ぎたくらいの一番サーバーが賑わう時間帯だ、しかもそんな時間帯に日本サーバー最大のホームタウン“アキバ”の入口付近のゾーンでPKなんて今まで聞いた事もない。
「それが本当なんだなぁ~♪一応『GMコール』は毎回やってるんだけどねぇ~やれやれ…。」
半信半疑ではあるが、流石に4月1日でもないのに唐突に2人掛かりで嘘を吐く理由もないだろう義盛はそう思い、兎に角ブリッジ・オール・エイジス前、最初のゾーンを目指しアキバの街を疾走する。
■ ■ ■
アキバ入口ブリッジ・オール・エイジス前。
「さて今度は<WTS04>ですか・・・、ヘルメス、これってやっぱりアレですか?」
6人パーティーと4人パーティーのPKに囲まれた2人、サツキがげんなりした口調で訊ねる。
「アレだろうねぇ・・・、ヨッシー間に合ってくれるとコレくらいなら何とかなりそうだけど。」
やはりげんなりした口調で応えるヘルメス、囲まれてるとはいえまだ、双方攻撃はしておらずただの睨み合いをしていたが先に口火を切ったのは<WTS04>からだった一斉に2人を襲う。しかし何処からともなく現れた無数の剣のエフェクトが<WTS04>のギルドタグを付けた6人パーティーを襲う。
「おっ!コレは<剣の神呪>ヨッシー!ありがとう!これで何とかなるかな?」
「『この方々』相手ならモンスター倒すのと大差ないですからヨシくん来て下さったのなら安心でしょう」
サツキとヘルメスの声に安堵が感じられた。<WTS04>のギルドメンバーを自慢の大太刀で一気に凪払い2人の元へ駆けつける義盛。
「本当にこんな場所でPKやるバカ居るんだね・・・、ヘルメス!取り敢えず私もパーティーに入れて!」
手早く全員に障壁を張り戦闘体制から素早く攻勢に転じる3人。先陣切って<雲雀の凶祓い>で敵陣に斬り込む義盛。
「この3人でパーティー組むのは久し振りだねぇ~!ヘルメス!指示宜しく!」
「あいよ~♪後方支援は任された!」
「では、ヘルメス!私も前にでますよ?」
「サツキは一番紙装甲だからほどほどにねぇ~♪」
サツキは自らに<キーンエッジ>と<アキュラシィサポート>を付与し、<付与術師>がギリギリ装備出来る鉈を振りかざし攻撃に参加。サブ職<狂戦士>のスキル<ルナティック・アーマー>を発動して悪鬼羅刹の如く舞う義盛と共にPKを駆逐してゆく。その2人に合わせ援護歌<剣速のエチュード><猛攻のプレリュード>を歌いクロスボウで援護射撃をするヘルメス。PKの一団は為す術もなく次々と沈黙してゆくのだが、其処に違和感を感じる義盛。
「ねぇ、コイツらLVも大した事ないし、反撃らしい反撃もないけど・・・本当にPK?」
拭いきれない違和感に思わず2人に質問してしまう、実際PKの一団は攻撃体制をとりはするが大した反撃をするわけでもなし、特技を使った攻撃をしてくる訳でもない。ただ通常攻撃を規則的に繰り返すばかり。
「やっぱり気付いたぁ~?詳しい話は後でね~。兎に角、コイツら殲滅してアキバに戻らないと新手が湧いてくるよ~♪」
「湧いてきますわ~♪」
微妙にヤケッパチな語尾の2人、色々と引っ掛かる事はあるが兎に角、PKの一団を殲滅する事を優先事項として次々と凪払う義盛目掛けて戦斧が襲って来る、障壁に阻まれてダメージはないが2人が懸念していた新手が湧いて出て来たようだ。
新手の数は画面上で確認出来るだけで24人フルレイドだ。
「何?コイツら?本当に湧いて出て来たよ?しかも今度は一部LVカンスト混じってるし、装備も違う!」
義盛の云う通り、同じ<WTS04>のギルドタグの付いた新手の一部は明らかに装備と動作が殲滅した第一陣とは違う。
「あらあら、今回は何時もよりお早いお着きで・・・って事は彼等の登場も早いのかしら?」
「かもね~♪嫌だね~♪つか、誰か助けてよ~♪」
2人の会話を察するに少々早いが何時ものパターンらしい、そして彼女達の云う彼等とは…。
鉈を短剣にカテゴリーに入れてよいものか悩みつつ書いております。