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戦闘訓練

訓練の舞台は現実世界だと栃木の日光辺り・・・。



2014年5月9日加筆修正。

老舗MMORPG<エルダー・テイル>日本サーバーにおいてLV85以下入団お断りのエリート主義で知られる戦闘ギルド<黒剣騎士団>・・・表向きはエリート主義で知られては居るが、その実、ノリと勢いだけの戦闘ギルドだったりするのは同じく戦闘ギルドで大規模戦闘コンテンツの先陣争いを繰り広げてきたギルドと当の<黒剣騎士団>ギルメンだけが知っている事実。


「は~い!入団テスト合格した皆ちゃん。おめでとうちゃん!今日から大規模戦闘未経験者の為の戦闘訓練です!ビシビシ教育して行くので皆ちゃん覚悟してくだちゃ~い!先ずは<巨大猿ジャイアント・エイプ>退治でぇ~す。油断すると下手なレイドモンスターより厄介なのでご注意くだちゃいね~。」


  ウツルギの神前街付近の広大な森林エリア<巨大猿ジャイアント・エイプ> の生息地である。本日は大規模戦闘未経験者を対象にした戦闘訓練。引率は『ワガママ剣姫』『チープスリルジャンキー』の異名を持つ<武士>伊庭八郎、副総長<守護戦士>ドン・マスディ、<黒剣騎士団>の常識人その1<施療神官クレリック>レザリックの3名である。であるが、約一名かなりこの場とは場違いな雰囲気を醸し出している。八郎である、普段の桃太郎を彷彿させる装備は変わらないのだが、顔に般若の面、手にはハリセンという全く意図が分からない装備を付けてこの戦闘訓練に臨んでいる、しかも彼女が今回の責任者だ。


「姉御、なんだよそのお面?新人ペーペーどもに示しがつかねーぜ?」 

 

『スパーン!』 

 

 不安気なドン・マスティの脳天に<兜割り>が炸裂。


「誰が姉御か!私はこの戦闘訓練の為に雇われた『マスク・ザ・キラークィーン』この新人ペーペー共に大規模戦闘のいろはを叩き込むのがお仕事でちゅ!分かったか糞野郎共ファッキン・ガイズ!」

「八郎さん真面目にやりません?」


 困ったようなレザリックにも


『スパーン!』


<兜割り>が炸裂。

「八郎じゃな~い!『マスク・ザ・キラークィーン』だといってるじゃん!普段『八姐さん』って呼ぶ癖に新人ペーペーの前でだけ真面目ぶるな!」


 新人そっちのけでコントを始める古参メンバー。そのやり取りに業を煮やした数名の新人ががなり立てる。


「おぅ!鬼婆と永く居座ってるだけのドサンピン!戦闘訓練始めるならさっさと始めろや?ゴルァ!手前らのコント観にこんな山奥まで来たんじゃねーぞ!!」


<暗殺者><盗剣士><妖術師>の3人組が痺れを切らせたようで今にも噛み付かんばかりに八郎達と対峙する。


「あぁ?誰が永く居座ってるだけの三下だぁ?この場でリアル戦闘訓練してやろうか?小僧ども?」


 新人の無礼な物言いにドン・マスディも喧嘩腰になるが八郎がそれを制した。


「ドンちゃん、仮にもあんた副総長なんだからデンと構えてなきゃ。それと新人くん達、不愉快だったならごめんよ?初めての大規模戦闘訓練で緊張してる子も居るだろうからリラックスさせようと思ったんだけど、ちょいと悪ノリが過ぎたみたいだね。・・・でもね、『永く居るだけのドサンピン』は言い過ぎだねぇ。仮にもあんたらの入ったギルドの幹部に対して云う台詞じゃないよね?」


 最初のオチャラケた物言いを改め、最古参らしく落ち着いた口調で話しかける八郎だが、相手は意に介さず更に八郎達に噛み付く。


「はっ!プレイ歴とギルド在籍歴が永いだけで偉そうにしてんなよ?LVはこっちもカンストなんだぜ?大体俺たちはアイザックさんに憧れて入団したんだ!お前らみたいなオマケに指図される憶えはねぇっての。」

「僕たち~?馬鹿なの?アホなの?何?<黒剣騎士団>はギルマスのワンマンギルドで他のギルメンは雑魚だと思ってる?どんだけモノ知らないの?残念ちゃんたちだねぇ・・・」


 呆れて開いた口が塞がらないとでも言いたげな八郎、先ほどから無言ではあるが明らかに戦闘準備に入っているレザリック、何時でも戦闘可能なように待機するドン・マスディ、ざわつきだした他の新人たち。


「ドンちゃん!レザリック!あんたらは手を出すな!このお馬鹿チャン達は私が泣かす!」


 手早く武器をハリセンから愛刀に持ち替え、般若の面を外し戦闘体制に入る。ドン・マスディもレザリックも戦闘体制を解いて数歩下がる。


「すみませんが他の新人の皆さんも下がって下さい。あちらの頭の弱いお三方と同じ考えの方は下がらずどうぞ前へお進み下さい。私も副総長も止めは致しませんから。」


 レザリックのその台詞に引率組に喧嘩を売った3人組以外は素直に従いその場から下がる。


「姉御ぉ~!早めに切り上げて、さっさと戦闘訓練はじめようぜ!」

「あいよ!ドンちゃん任せときな。さぁ、僕ちゃんたち教育の時間だよ~。」


 画面に◇戦闘中◇の赤い文字が表示され<暗殺者><盗剣士><妖術師>が八郎の周りを囲む。相手が1人という事で舐めきっているのが他の新人にも分かる。


「それじゃ、レッスン1状況にも依るけど先ず、敵の戦力を減らす為、弱いヤツから倒す。ハイ!<妖術師>の兄さんアウト!」


 八郎がそう云う同時に<妖術師>の身体を棘の蔓が絡みつく。


「なっこれは<付与術師>の<ソーンバインドホステージ>じゃねーか!」


不意の移動阻害魔法に周囲がざわつく。


「レッスン2相手の戦力を見極めてから戦う事。」


 <火車の太刀>で鱠斬りにされ為す術もなく大神殿送りになる<妖術師>次に標的にされたのは<盗剣士>、再使用時間無視の<武士>の特技に矢張り為す術もなく大神殿送りにされ、残るは大口を叩いた<暗殺者>だけになった。


「なんなんだ、どうなってるんだよ?お前<武士>だろ?特技の再使用時間や特技が滅茶苦茶じゃないか!クソ!クソ!クソ!」


 目の前で起きている出来事が理解出来ず明らかに声にまで狼狽の色が伺える。無理もない、彼女・・・の能力は明らかに<武士>のソレを超えている、否!異常なのだ。しかしソレを可能にするナニかに<暗殺者>の彼は気付いて居ない。


「どうする?<暗殺者>の僕ちゃん?コレが実力差、プレイ歴の差だよ?今なら『ごめんなさい』したら許したげるよ?どうする?」

「ふざけるな!このインチキチート婆!」


 半狂乱状態で無闇やたらと特技を乱発する<暗殺者>しかし、その全てを特技を駆使して回避する八郎。


「レッスン3!時には退く事も大事!退き時も読めないヤツはLV1からやり直せ!」


 <ソーンバインドホステージ><兜割り><火車の太刀>続けざまの連続攻撃に為す術もなく大神殿送りになる<暗殺者>一連の戦闘のカラクリに引率組以外は気付かず呆然とした。


「相変わらず姉御のサブ職<剣狂けんきょう>はおっかねーな。」

「こんなハイリスク・ハイリターンなサブ職を取得するのは八姐さんだけですよ。」

「にゃはっ褒めても何も出ないよ~♪さあ!新人諸君!私の云った事を念頭に置いて戦闘訓練に臨んでね~♪」


 新人たちは一瞬、言葉を失っていたが彼女の言葉を反芻し、


一同『『押忍!姐さん!肝に命じます!』』





   ■ ■ ■ ■ ■ ■


 夕闇が森を黒々と染める時刻、ボロボロに成りつつも誰1人神殿送りにならず奮闘した新人一同。それを観て満足気な引率組。


「いやぁ~今回の新人諸君は粒揃いだね!副総長!一言労いの御言葉でも送ってあげなよ。」


 少し茶かし気味に言葉を促そうとする八郎。


「よせやい、そんなのは俺のガラじゃねーよ。そーゆーのはレザリックの方が得意だろ?」

「ガラだとかガラじゃないとかいう問題ですか?」


 苦笑しつつ回避かわすレザリック。そんな引率組のやり取りに新人たちも釣られて苦笑する。


「みんな、大いに笑おう!私らは<黒剣騎士団>これからは楽しみも苦しみもみんなで分かち合うんだ♪」


一同『『押忍!姐さん!』』


こうして<黒剣騎士団>の絆は作られるのであった。



余談だが引率組に喧嘩を売った3人は即日除名処分となった。


「次の戦闘訓練はウェストランデのドッグマウンテンかナインテールのタカサキ辺りかなぁ~♪」


「・・・八姐さんどんだけエテ公好きなんですか・・・。」


レザリックのツッコミが虚しく響く。

ーキャラクター 紹介ー

伊庭八郎いばはちろうLV90 メイン職<武士>サブ職<剣狂>ハーフアルヴ女性


真紅の髪をポニーテールに結い上げた切れ長の目の美人さん。装備は童話『桃太郎』のような装備だと思ってください。<黒剣騎士団>のムードメーカー兼トラブルメーカー、<エルダー・テイル>プレイ歴は<黒剣騎士団>内でも一番長い古参プレイヤーその為、ギルドでは男女問わず『姉御』『八姐』と慕われて居る。悪戯好きで『チープスリルジャンキー』『ワガママ剣姫』の異名を持つがプレイスタイルから『羅刹女』『キラークィーン』の異名も持つ日本サーバー屈指のプレイヤーでもある。<黒剣騎士団>の前身であるギルド結成当時からのメンバー。ソレ以前は<遊撃隊>という歴女のみで結成したギルドのギルマスだったが、派閥争いに嫌気が差して解散。彼女曰わく同好の志=怨敵に成るから怖い。


サブ職

剣狂:<人斬り>互換職に相当し、あるクエストをクリアすると転職可能。ただし、<人斬り>のレベルや能力は引き継げない上にレベル上げが特殊。ハイリスク、ハイリターンなサブ職。メリット:太刀、打刀での攻撃力15%上昇、特技のリキャストタイムを最高60%短縮、特技使用MP大幅軽減、他メイン職の特技2種を任意で取得(ただし初伝程度の威力)。デメリット:レベルが上がれば上がるほど敵を倒すと1人もしくは1匹に対しHPが減る。ノーマルモンスター1体(PC1人)に対し100(2体倒せば200)、パーティーモンスター1体600、レイドモンスター1体2400減少、倒せば倒すほどHPが減少するので大量の低レベルモンスターを相手にしても無傷なのに自滅する別名『自殺サブ職』。特技発動中は一切の回復魔法や体力回復ポーションを受け付けない。モンスター討伐時の経験値最大60%減少。色々と制約が多いので好んで転職する物好きは少ない。



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