2015,12,21弧状列島ヤマトの旅:外伝【真夜中の決闘】
読んでるだけの人様作『ある毒使いの死』より設定などをお借りしております。
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緒方 征羅様作:『黒剣騎士団の主婦盗剣士』より設定などをお借りしております。
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GoogleDocなどより設定などをお借りしております。
特に今回、読んでるだけの人様に置かれましてはお手を煩わせて申し訳ありません。読んでるだけの人様の懐に広さには感謝しか御座いません。
本当にありがとう御座いました。
~ナインテイル自治領ナカスの街~
2015年12月、2016年も差し迫ったある日の夜、伊庭八郎こと、池澤冴子はすこぶる不機嫌だった…月始めに付き合っている彼氏から正式にプロポーズをされ非常に浮かれて居たのだが、彼女が永らくハマっているMMORPG<エルダー・テイル>冬のイベント“スノウフェル”初日に自身のリア充アピールから端を発し弧状列島ヤマト五大都市に分散する多くのプレイヤーを巻き込んだ騒動以来、現実でもゲームでもロクな事が無い。
本来予定していた23、24、25日の彼氏とのデートは些細な事が切欠で初日に大喧嘩して頓挫。
二年参りの予定すらも白紙。
仏滅三りんぼうと13日の金曜日とその他、宗教、若しくは地域的に不吉とされる日が一個師団クラスで八郎の元へとやって来たかのようにロクな事が無い。
<エルダー・テイル>ではスノウフェル初日、些細な事で罵倒した相手、対人家ユウとその友人で<グレンディット・リゾネス>ギルドマスター:レディ・イースタルの両人に謝罪すべく彼等の友人でもあり自身の所属ギルド<黒剣騎士団>の仲間でもあるクニヒコを介して謝罪したのだが…。
「だぁ~かぁ~らぁ!言い過ぎました申し訳ありません!って云ってるじゃない!其方には非は無いんだから素直に謝罪受け入れなさいよ!この石頭! 」
「「誰が石頭だ!そっちこそ若い癖に頭堅いんだよ羅刹女!」」
モニターに映し出される美しい美女のアバターに似つかわしくないダミ声…いや、男性の声が図ったかのようにハモる。
そのアンバランス加減が無駄に八郎の癇に障り苛々を更に倍増される。
冴子はサイドテーブルに置いてある『joker』の封を切り落ち着く為に一本咥え愛用のジッポーで火を付ける。
(あぁ~もう!何が悲しくて年末の夜中にネカマのおっさんと口喧嘩しなきゃなんないのよ!!)
…元凶は自身のリア充アピールだろう!っと云うツッコミが方々から聞こえて来そうである。
「大体な、小娘! お前がそもそも人に対して偉そうに……」
『黙れ!汚っさん…。汚っさんは五月蝿い…。汚っさんはしつこい…。汚っさんは加齢臭が臭う……。汚っさんはキャバ嬢に嫌われる…。』
「待て!わざわざテキストチャットに切り替えて『汚っさん』呼ばわりか!しかもその言い方は薄い蒼髪、紅眼の台詞のパロディじゃないか!って後半のソレは俺達2人に云ってるのか?!」
レディ・イースタルの高圧的な言動に『苛々』『殺意』何れもマッハな八郎はガイナッ○スの“現在に至るも”代表作のヒロインが放った名台詞をパロった台詞をテキストチャットで打ち込む。
直撃世代のユウは即座に気付き、サングラス1つで親族すら欺く“音速の貴公子”も真っ青な速さでツッコむ。
一連のコントを彷彿させるような一糸乱れぬボケツッコミの応酬に『おぉ~♪』っと感心の声を漏らしマイクが拾うほどの拍手まで贈るクニヒコ。
「手前ェ!木原!1人だけ傍観してんなよ!何か?漢の友情より、お前ん所の男ムサいギルドの紅一点庇う気か?見損なったぞ!この間もそうだ!女の子の前でイイカッコウしやがって!」
限り無く四十代に手が届きそうな上に妻子持ちでネカマのレディ・イースタルがクニヒコを非難するが、当のクニヒコは苦笑しつつ言い返す。
「三宅さん、一応<黒剣騎士団>には伊庭八以外にも“女性”は居るんだぜ?確かにこの間は庇ったがそれは伊庭八じゃなくヘルメス嬢ちゃん“を”だ。誰がアラサーの彼氏持ちなんかを好き好んで庇うかよ!」
「…クニヒコさん後で泣かす!そんなデリカシーの欠片も無い発言を平面こいて云うから婚期逃すのよ!つーか!聴いてよ、ユウさん、レディ・イースタル翁、<黒剣騎士団>で新人歓迎のオフ会やった時、クニヒコさんベロベロに酔っ払って義盛の胸揉もうとして大泣きされて大変だったんだから…。」
「うわっ!池澤!お前!それを云うなよ!佳香ちゃんに散々謝ってやっと最近許してもらったんだぜ?」
クニヒコの問題発言に見事なカウンターで返す八郎、酔った勢いその場の乗りだったとはいえ、うら若き女子高生の胸を揉もうとして大泣きされた事実は覆しようがない上にまかり間違えば『条例違反』でお縄である。
「…見損なったぞ木原!お前もあの脳筋共に染まったか!しかも相手は女子高生だと?!…。」
「こら!まて、羅刹女!なんで鈴木は『さん』付けで俺は『翁』なんだよ?『翁』っ“おきな”とか“爺さん”とかの『おう』だろ?失敬だなおい!…っで、木原?お前が揉もうとした女子高生の胸、デカいのか?デカかったのか?」
因みこの2人は義盛がびっくりするほど『男声』な女子高生とは知らないし、黒剣の残念職3人組の1人と云う事も知らないのである。
『汚っさんサイテー(;´Д`)』
「あ゛~また『汚っさん』って云ったな?つーかどうなんだ?胸はデカいのか?なぁ?デカいのか?」
「…三宅、お前呑んでないか?」
「絶対呑んでますよね?三宅さん…。」
ぐだぐだで最低な会話は続く…。
この場に義盛が居たら泣きながらログアウトしている事だろう…。
この場に居ない人間はさて置き、双方謝罪をしに来た筈が何時の間にか罵倒合戦という前回とさして変わらない泥仕合の様相を呈して来た。
「なぁおい、この際だ。俺とクニヒコが見届け人やってやるから、“2つ名”持ち同士、1対1で決着つけよーぜー。そんで負けたヤツは罰ゲームな!」
(((あ~面倒臭くなって来た(な)(わね)…。)))
「って、待て!、“羅刹女“は兎も角、俺は、“2つ名”なんて持ち合わせてないぞ?」
<エルダー・テイル>プレイ歴は長いが、“2つ名”など持ち合わせていないユウはレディ・イースタルに異議を申し立てる。
「あ~?んなもんは自分の知らない処で勝手に付けられるんだ!知らねぇのかよ?お前一部じゃ“対人家”なんて呼ばれてんだぞ?『○戯王』かよ!あっ!『遊○王』って書いて“デュエリスト”って読ませるか?今からユウの2つ名は“○戯王”な!決定!決定!これで“2つ名”持ち同士、1対1で決定!!」
「…三宅ぇ…」
((絶対酔ってるよ…。))
実際、些か酒を呑んでログインしたレディ・イースタルは段々面倒臭くなり、ユウと八郎に後始末?を丸投げした形だ。
『汚っさんは汚い…。汚っさんは卑怯…。汚っさんは面倒臭がり…。汚っさんは髪の毛のつむじが……。』
「……さすがにイライラしてくるなあ。」
何故かレディ・イースタルより精神的ダメージを受けたらしく、段々と声が殺気立ってきたユウ。
「じゃぁ、場所を変えるか…。」
自分に実害が無い分、あっさりと事を運ぶクニヒコに、残る二人が声をそろえて突っ込んだ。
「……クニヒコ。あとでナゴヤに来い。話がある」
「木原。 お前、今度寝落ちした時に耳元で<シュリーカーエコー>を流すから覚えておけ。」
仲の良い友人の殺伐とした言葉が聞こえたのか、聞こえてないのか無言を通すクニヒコ。
□
<テンジンダンジョン>セーフティーゾーン
スノウフェルも中盤、世は年の瀬も迫ったこの時期、<弧状列島ヤマト>は<エッゾ帝国>と<自由都市同盟イースタル>の最北部以外のゾーンは何処へ行っても普段とは比べものにならない位、プレイヤーの数が少ない。
<テンジンダンジョン>も例に漏れず閑古鳥が…否、伊庭八郎、ユウ、レディ・イースタル、クニヒコの4人しか居ない。それが証拠にミニマップにもこの4人しか表示されない。
「ギャラリーが全く居ない場所でタイマンなんて、一昔前の不良漫画みたいだなぁ~。」
「いい加減黙りなさいよ“汚っさん”!大体、負けた時の罰ゲームが全装備外して<裸族>とPVPって…何よ?その倫理的に垢BANされそうな罰ゲーム!コレだから“汚っさん”は!」
「…“汚っさん”!俺も“羅刹女”のお嬢さんと同意見だ!そんな罰ゲームは受け入れられん!」
「じゃあ、勝ちゃいいじゃねぇか!なぁ木原?」
「全くだ、汚っ…タルさんの云うとおり、勝ちゃ罰ゲームは無いんだから、2人とも!がんばれ!…いい加減CNのクニヒコで呼んでくれないか?汚っ…三宅さん…。」
どっちが負けても全く被害を受けないレディ・イースタルとクニヒコはお気楽に告げるが八郎とユウは堪ったものではない。
しかし、1対1の勝負という事で“対人家”の血が騒ぐユウと、余りにもアレな罰ゲームの内容に“チープスリルジャンキー”の血が騒ぐ八郎…。
なんだかんだ云って、“ダメ人間”のお手本のような2人はブツブツと不満を漏らしつつ戦闘態勢を取り2人のモニターには<戦闘中>の表示が浮かぶ。
モニター越しに八郎はユウの装備を確認する、今から戦う相手の装備から相手がどのような戦闘スタイルなのかを推移する…。
(敵を知り己を知れば百戦危うからずってね…。だけど一番厄介なのは…<毒>か…。)
モニター前で眉間に皺を寄せ2本目の『joker』に火を着ける八郎の中の人、冴子。
多少PVPの経験がある八郎の経験則から云うと<毒使い>は厄介なサブ職の1つだ、然も相手は八郎が最も苦手とする<暗殺者>ときてるので余計に眉間の皺が深くなる。
(大技で一気に…ってのを許してくれるほど楽な相手じゃなし…勝負は快諾?したけど、か…勝てる気がしない…。)
不安なのは八郎だけでは無い、こちらも煙草に火を着けモニター前で渋い顔をするユウの中の人、鈴木雄一37歳、二児の父親。
(“対人戦”で本職じゃない八郎に負けたくはないが、近頃はログイン率も低いしなぁ……。
相手はクニヒコと同じ<黒剣>で現役バリバリ、こっちは最近の仕様にやっと馴れたロートル…簡単に受けたが勝てるのか…?)
双方が不安を募らせつつ少しずつにじり寄る。
「そんじゃまぁ…。」
「「始め!!」」
汚っ…レディ・イースタルとクニヒコの声を同時に響く。
「先手必勝!!(普段ならやらないけど<毒>使われる前に終わらす!!)」
先制したのは八郎でサブ職<剣狂>の能力をフル活用で<闘気斬>をキャストタイム、リキャストタイム無視で弾幕を張るが如く乱発。
「なっ?!」
戦士職とは何度となく対峙したがキャストタイム、リキャストタイム無視の<闘気斬>の連射などいままで見たことがない。ユウは慌てて<ガストステップ>で回避しつつ<ハイドウォーク>で八郎の死角へと回り込むと<デッドリーダンス>を仕掛ける。
「うそ?!」
<闘気斬>の乱発を避された上に死角からの<デッドリーダンス>をモロに喰らい思わず咥えたjokerをキーボードに落とし二重に慌てる池澤冴子“永遠の26歳”彼氏と喧嘩中、独身…。
「ちょ!!タイム!タイム!キーボードが溶ける!!」
「馬鹿かお前!?“対人戦”に『タイム』も『待った』もあるか!!このまま終わらせてやる!!」
八郎の懇願も空しく、勝機を逃すまいと攻撃を続行するユウだったが…。
ピシッ
「ぐあっ!? 指が! 攣って……!!」
年齢的なものか久し振りの“対人戦”の所為かなのか。
指が縺れ攣ってしまい、これまた咥えたパイプを攣った方の手の甲に落とし二重の痛みに耐えられずチェアから転がり落ちてのたうち回る鈴木雄一37歳、二児の父親。
流石にチェアから転がり落ちた衝撃音と得も云えぬ絶叫で子供達が起きてしまい普段は近付きもしない父の書斎へと急行してきた。
『パパ?パパ?どうしたの?』『大丈夫?どこが痛いの?』
高性能なインカムは父親の異変に飛び起き駆けつけた子供達の声を拾う、鈴木雄一37歳、二児の父親 (ユウ)は形振り構わずパイプを拾い、痛みに耐えながら云う。
「…すまん!子供達が起きてしまった…寝かしつけるのと、床の掃除をするから、ま…待ってくれ…。」
そう云い残してインカムをOFFにし子供達を寝かし付ける為、床の掃除をする為PCから離れるのであった。
「あ~!!何よそれ!私の時は問答無用で自分の時はさっさと中断?あ~スペースキーが溶けたよ!どうすんのよ?コレ、秀君が『付き合って5周年記念』で買ってくれたPCよ?どうしてくれんのよ!?」
半狂乱半べその池澤冴子“永遠の26歳”彼氏と喧嘩中、独身(伊庭八郎)がご近所の迷惑も顧みず絶叫するが明かに自業自得である。
「あ~!もうあったま来た!何が『待ってくれよ』だ!こうしてやる!」
そういうと装備を<ハリセン>に変え!ユウのアバターをスパーン!スパーン!と良い音を立てながら殴打、プレイヤー不在なので『倒してもよろしくってよ?』状態なのだが、敢えてダメージを与えないジョークアイテムで攻撃する八郎…律儀と云うべきか…。
「おいおい伊庭八ぃ~、子供地味た事すんなよ、みっともない…。ユウさん復帰するまで待ってやれよ。」
クニヒコがやはり他人事のように諭す。
「ってか、プレゼントでPCなんて寄越す男なんてタカが知れてるなぁ…。」
レディ・イースタルが挑発するっというかおちょくるように八郎の彼氏にケチを付ける。
「何ですって汚っさん!他人様の彼氏にケチつける気?」
「木原ぁ~!本当にこの羅刹女に彼氏居るのかぁ?」
「云われてみると、観た事が無いなぁ…。」
「…クニヒコさん?写メ観たよね?観・た・よ・ね・?」
「そうだったか?」
あくまでも1人他人事のような態度を崩さないクニヒコ、そしてもう1人…このメンバーで一番の?トラブルメーカー:レディ・イースタルは何やらアイテムを取り出しユウのアバターに近付く。
レディ・イースタルが手にした筆のようなペンのようなアイテム。2008年に某超人プロレス漫画29周年を記念し某社と<F.O.E>がコラボして期間限定でその作品に纏わるクイズに全問正解した者だけがゲット出来る。限定ジョークアイテム<『肉』筆>。
○
説明しよう!<『肉』筆>とは?!その昔、彼の作品が大ブームを巻き起こした時分に寝ている人や罰ゲームなどで額に『肉』やその他一文字落書きすると云う迷惑極まりない悪戯が流行したのだ!
そう!このジョークアイテム<『肉』筆>は標的となるプレイヤーキャラを指定するとそのキャラに落書きが出来るのだ!ペンタブが在れば文字の落書きだけで無く絵を描く事なども可能であり、落書きの場所は額やキャラの肉体だけで無く装備にも落書き可能で使用後24時間は落書きが消えないのだ。因みにジョークアイテムなだけにBS付与や体力減少などは全くない。描かれた者が、ただただ恥をかくだけのアイテムである。
○
「…汚っさん…<『肉』筆>なんて取り出してどうするつもりだ?!」
「…この汚っさんはまた唐突に変なアイテム取り出して…。」
「…せめてお兄さんに成らないか?羅刹女?木原!次に会う時は覚えとけよ?」
美しい女エルフのアバターから漏れ聞こえるダミ声で『お兄さんと呼んで欲しい』と云うのもなかなかシュールな絵面である。
「まぁ兎に角だ!独り身のお前らには分からんだろうが、夜中に目を覚ました子供ほど厄介なもんはない!多分、鈴木…いや、ユウのヤツは確実に一緒に寝落ちするぞ…。」
「…独り身なんて昭和な単語を使う人が大介さん以外にも居る事に私は驚いたわ。」
「伊庭八、一応云っとくぞ?辛うじてだがタルさんの方がシドさんより若い。」
一々、言葉尻に茶々を入れる<黒剣>組、云わんとする事を云う前に別のキーワードに食いつかれ話が中断した事に不機嫌になりながらも話を強引に進めるレディ・イースタルこと三宅真治37歳、一児の父親。
「…最後まで話をさせろ!十中八九、ユウのヤツは寝落ちだ!お前たち、アイツが起きるのを朝まで待つか?待てないだろ?こうなったら勝敗も罰ゲームもうっちゃらかして<『肉』筆>でユウのアバターに心行くまで落書きして解散しようじゃないか!夜更かしは美容の大敵だぜ?羅刹女?」
「…誰がガサツ女だ!汚っさん!…。」
(でも、これって…)
(こりゃぁ三宅さん本格的に…)
((酒が回って睡魔に苛まれ出した(か…)(みたいね…)))
なんとなく察した2人は異議を申し立てない。
2人が異議を申し立て無いので『合意』と判断した汚っ…レディ・イースタルこと三宅真治37歳、一児の父親は早速、落書きを開始。
そんな光景をモニター越しに観て深夜だと云うのに近所迷惑レベルの音量で大笑いする八郎とクニヒコ。
「羅刹女~、ユウのアバターのモデル知ってるか?」
「んなもん知るわけ無いでしょ?<エルダー・テイル>始めた頃の彼女か、昔のアニメか漫画の女性キャラとかじゃないの~?」
「いんやぁ~それが…。」
「…三宅さん、流石にその話は不味いんじゃ…。」
流石に本人の居ない所で黒歴史を他人に教えるのは拙いと判断したクニヒコが汚っ…レディ・イースタルこと三宅真治37歳、一児の父親を咎める。
「…急に優等生か?木原?」
「そうじゃないが…。」
「汚っさん!云い掛けたんだから最後まで云おうよ!っで!クニヒコさんはだまらっしゃい!」
当初の目的も忘れ、この場に居ないユウの黒歴史で散々盛り上がった3人は年末の挨拶を済ませ解散する。
~払暁~
「いかん!寝落ちした!!」
慌ててベットから飛び起き書斎に向かうユウこと鈴木雄一37歳、二児の父親。
汚っ…レディ・イースタルこと三宅真治37歳、一児の父親の予想した通り、ユウこと鈴木雄一37歳、二児の父親。は子供達と一緒に寝落ちしていた。
(…子供達と一緒に寝落ちしてしまった…アレから何時間経った?伊庭八に負けてナカスの大神殿に送られていても文句も云えんn…)
「なんじゃこりゃ~?!」
慌てて書斎に戻った鈴木雄一37歳、二児の父親がモニターに映し出された<エルダー・テイル>での己の分身“ユウ”を観て近所迷惑な悲鳴を上げた…。
モニターに映し出されたユウは決闘の場所<テンジンダンジョン>で1人立ち尽くしていたが観るも無惨に全身に落書きされていたのだ…。
「誰だ!こんな事をした奴はぁ~!!」
余りの怒声の大きさに近くを走っていた新聞配達のおっちゃんが驚いてハンドル操作を誤って電柱にぶつかったがそんな事は本編には一切関係が無い。
尚、この日の出来事は全て4人以外に目撃者は居らず、公式には『無かった事』とされているが、みっともない落書きをされたユウのアバターの画像はしっかりとレディ・イースタル、クニヒコ、八郎のPCのHDDに収められたのであった。
~2018年某月某日某所~
「ほうぅ~?珍しい、負けず嫌いのお嬢が『負けた』って認めるか?暫く見ない内に成長したなぁ~。」
紙巻の煙草を美味そうに喫いながら口元だけ開いた仮面の<召喚術師>が大袈裟なアクションで驚いてみせる。
「…大介さん、私も人妻だよ?多少は大人になるし、冷静に過去の自分を見つめ直す事くらいあるわよ…失礼ね…、あの時あのまま続けてりゃ防御力の薄い当時の装備じゃ削り負けしてたわよ…。」
「…そういう台詞はその趣味丸出しの装備をやめてから云うもんだぜ?」
失笑する仮面の<召喚術師>に憮然とした態度を見せながら彼女は云う。
「そう?でも、今なら勝てるかな?否!今度こそ白黒ケリ着けてやる!あのネカマの<森呪遣い>!!」
その場でダイナミックにズッコケる仮面の<召喚術師>は仮面がズレて慌てて位置を直す。
「おいおい…。そっちかよ?ユウさんの方じゃねぇのか?」
「冗談!ユウさんはキリーちゃんが殺ル気満々で狙ってるんでしょ?だったら私の出る幕はないわよ?さっきも云ったように『私はあの人に一度負けてる』んだから。」
アイテム紹介
☆限定ジョークアイテム<『肉』筆>
2008年に某超人プロレス漫画29周年を記念し某社と<F.O.E>がコラボして期間限定でその作品に纏わるクイズに全問正解した者だけがゲット出来る。限定ジョークアイテム。
標的となるプレイヤーキャラを指定するとそのキャラに落書きが出来る、ペンタブが在れば文字の落書きだけで無く絵を描く事なども可能であり、落書きの場所は額やキャラの肉体だけで無く装備にも落書き可能で使用後24時間は落書きが消えない。因みにジョークアイテムなだけにBS付与や体力減少などは全くない。描かれた者が、ただただ恥をかくだけのアイテムである。 対になるアイテムとして<『消』軍>がある。




