【超特別番外編】 俺達には土曜日しかない。 【改訂版】2015/05/02
LHTRPGリプレイ『山羊スラ戦車と終わらない旅・下』に荒城隆史氏のプロフィールが記載されましたのでソレを元に再構築した【改訂版】で御座います。基本的な部分は改訂前と大差はありません。(多分)
老舗MMORPG<エルダー・テイル>10番目の拡張パック<夢幻の心臓>が実装された年、日本サーバーのとある戦闘ギルドが世界的に脚光を浴びる。大規模戦闘コンテンツ『ラダマンテュスの王座』を世界最速で制覇、幻想級武器《苦鳴を紡ぐもの“ソード・オブ・ペインブラック”》を入手しその黒き剣に因みギルド名を改名したギルド。後にアキバ5大戦闘ギルドに名を連ねるそのギルドの名は<黒剣騎士団>
なんだかんだとドタバタな日々の続いた後のある日のお話。
新人歓迎会も兼ねてのオフ会も一段落、<夢幻の心臓>で実装された大規模戦闘コンテンツもあらかた様々なギルドに攻略され新規クエストも大方発見され尽くし各々がギルドホールに屯したり、狩りに出たり、アイテムの補充をしたりとまったりした土曜の夜、不意に総団長“黒剣”のアイザックが“黒剣の残念職3人組”のその1義盛に唐突に質問する。
「なぁ義盛、たまにお前のマイクが拾ってる単車の排気音、ありゃカワサキのマッパかケッチだろ?誰か身内に単車乗りでもいんのか?」
「・・・団長よく判りますね・・・えぇ、お兄ちゃんが現役引退してからバイクにハマって750SS MACH Ⅲに乗ってますよ。」
「H2かよ?渋いなぁ、排気音からしてマフラーはノーマルだろ?」
「私はあんまり詳しくないんですけど、確かまだカスタムまでお金が回らないって云ってたからノーマルだと思いますよ?」
バイクが判らない人間には全くもって理解不能な会話が開始され、バイク好きのみがその会話に参加しだした、最初に参加したのが意外な事に八郎である。
「何?何?バイク?私も乗ってたなぁ~カタナ・・・彼氏が危ないから乗るなって云うから降りたけど、また乗りたいなぁ・・・。」
八郎が昔を懐かしみつつ惚気発言をさらりと吐く。
「八姐もバイク乗ってたの?意外・・・しかもカタナ・・・。」
「何がカタナだ、どうせGSX250SS辺りだろ?さり気に惚気てリア充アピールとか、どんだけあざといんだお前は・・・。」
意外がる義盛と惚気に毒づくアイザック、毒なぞお構い無しに話を続ける八郎。
「残念!2000年ファイナルエディション1100SYよ!なんとかゲットしたさね!それよりアイザック、アンタはどうなのよ?どうせ400のゼファーかZRX辺りとか珍走仕様で乗り回してた口でしょ?三段シートだとか竹やりマフラー??それとも流行に迎合してグランマジェとかのビクスク※1)?」
「残念だったな!俺が乗ってるのはスズキ・GSX1200FS『イナズマ』だ!大体誰が珍走だ?誰が流行に乗っかってビクスクなんか乗るかよ!この野郎!」
「あらやだ、意外・・・ゲーム廃人大工の癖に私と同じスズキ~??冗談!って云うか!何『イナズマ』くらいで威張ってるのよ?『バンディット』のマイナーチェンジじゃない!それと私は野郎じゃなくてピッチピチの『永遠の26歳』女性ですぅ~!」
だんだん会話の雲行きが怪しくなってきたところで、新手の登場である。
「なんね?単車の話ね?儂も混ぜちゃってん。」
「ばいくカ?ばいくナラ、ワテクシも五月蝿イヨ?」
エンクルマとヴィシャスもバイク談義に参戦、話に付いて行けないメンバーはぞろぞろとその場を退散していく、そんな事はお構い無しに話はヒートアップしていく。
「儂が美容専門学校行きよった時はSR400ば乗りよったばってん。ヤマハの空冷はやっぱ良かよ。」
「莫迦野郎!漢は黙ってスズキの1択だ!仮面ライダーの昔からバイクはスズキだ!それ以外は認めん!因みに俺の愛車は藤岡弘、さんと同じ世界最速GSX1300Rハヤブサだ!」
普段音声変換ソフトで会話するヴィシャスが地声に切り替えている・・・本気と書いて『マジ』と読むような勢いで本気だ。
「あ~私もヴィシャスに同意!やっぱりバイクはスズキよ。」
「あ~ん?『バイクはスズキ!』ってのは同意するがよぅ?『カタナ』だ『隼』だぁ~?名車だ?最速だ?スカしてんじゃねぇよ!なぁ義盛?」
同じスズキの単車乗りでもそれぞれ一過言あるらしく、八郎やヴィシャスの愛車にケチを付けるアイザック。
「え~っと私、そんなにバイク詳しくないんですけど・・・やっぱりホンダでしょ?CB400SBとかいいじゃないですか・・・。」
不意に話を振られて困惑する義盛、其処へ意外な人物が参戦。
「アイザック君達は何を云ってるんですか?バイクだったらカワサキの一択に決まってるじゃないですか?」
「「「「「レザリック(さん)??」」」」」
意外や意外、<黒剣騎士団>一の苦労人にしてリアルでも頭脳労働担当と思われていたレザリックが話しに参戦して来た。
余りに意外過ぎて呆然とする一同・・・その中で1人、沈黙を破りガッツリ突っ込みを入れるアイザック。
「『君』はやめろ馬鹿野郎!・・・ところでレザリック、お前単車は何に乗ってんだよ?GPZ900Rか?ゼファーの1100か?」
「いえ、エリミネーターですが?」
「「「「「は?」」」」」
一同が素っ頓狂な声を上げて聞き返す。
「だから、カワサキ・エリミネーター250Vですが何か問題でも?」
暫く凍てつくような沈黙が訪れ、次第にヒソヒソと小声での会話が始まる…。
「義盛さん、お聞きになりました?カワサキ・エリミネーター250Vですってよ?」
「聞きましたわ~、八姐・・・あの!『不人気車』の代表格※2)カワサキ・エリミネーター250Vだなんて・・・。」
主婦の井戸端会議か?他の男性陣からも『有り得ない』『物好き』など散々な云われようである。
「なんですか!みんなして!揃いも揃ってメジャーなバイクに乗ってたら偉いんですか?何が?『バイクはスズキ!』ですか!他メーカーのバイカーからスズキはなんて云われてるかアイザック君達は知ってます?『変態のスズキ』ですよ?『変態のスズキ』!それに義盛くん!ホンダ?ただ乗り易いだけじゃないですか?自動車学校の教習車じゃないですかCBなんて!そしてエンクルマ!ヤマハ?SR?“疾風○説特攻○拓”の読みすぎじゃ・・・?」
「な・・・?!」
「てめぇ!」
「あんた・・・。」
「酷っ!!」
「何ね?別に“悪魔の鉄槌”とか搭載じょらんばい!」
だんだん、バイクの話から好きなメーカーの話に発展し、話は険悪ムードと化して来た・・・。レザリックの怒りの一言からメーカーや愛車の罵り合いに発展。
「ったく、大工は何がイナズマだ?佐藤○。ウジ※3)のエロ漫画の読み過ぎじゃねぇのか?」
「てめぇ!シド!!確かに『おっぱい○ンビ』※4)は読んでたけど、それとこれとは別だろう!」
「うわぁ~アイザックの単車のアクセルから栗の花の香りが~・・・。」
「??八姐?それどういう意味?」
「てめぇ!義盛、カマトト振るんじゃねぇぞ!!次のオフ会で乳揉むぞ?コラァ!!」
「大将!そりゃセクハラばい!しかも陰嚢ばい!ポリに捕まるばい!」
「エンクルマ・・・それを云うなら『陰嚢』ではなく『淫行』!全く!アイザック君は『剛力招来』『超力招来』ってシドさんと一緒で『特撮』被れですか!!」
「あっはっはっは、レザ?『イナ○マン』か?懐かしいなおい?」
「てめぇら!何時の間に結託して俺を集中攻撃してやがる!大体、エリミネーターみたいな不人気車乗ってる奴に馬鹿にされる憶えはねぇぞ!!」
バイク談義と云うか個人攻撃の様相を呈してきた不毛な争いには参加せずに大人しく聞きに回っていたメンバーに緊張が走るが、その険悪ムードを打開する一言が飛び出す。
「<D.D.D>のクラスティさん辺りとかぁカッコイイバイク乗ってそうですよねぇ~『カブ』とかぁ~『パッソル』とか♪」
バイクは『スーパーカブ』と『パッソル』しか知らないヘルメスの一言でその場の空気が一変、大爆笑の渦と化す・・・。
「ちょ・・・リアルの本人知らないけど、想像しちゃったじゃん・・・!」
「ぷっ・・・能面眼鏡がカ・・・カブとか・・・」
「ちょ・・・マジで・・・か・・・勘弁しろよ・・・」
「パッソル・・・ぷぷ・・・っちょ・・・おま・・・」
「ヘルメスちゃん・・・カ・・・カブがか・・・カッコ良かね・・・ぷぷ・・・」
「・・・だ、誰か・・・絵心のあるヤツ・・・イラストに起こせ・・・ぶぶぶひゃ・・・・」
「ちょ・・・ヘルメスさん・・・?そ、それは・・・。」
後日この話がギルド内に広がり、以降暫く<黒剣騎士団>のギルメンは<D.D.D>のギルドタグを見る度に笑いを堪えるのに必死になったとかならなかったとか・・・。
「ん~?私、変な事云ったかなぁ??」
「漢だったらカワサキです!カワサキ・エリミネーター250Vの何が悪いんですか!?」
ちゃんちゃん♪
注釈説明。
※1:ビクスク、ビックスクーターの略称。2015年現在、通常の単車よりビクスクの方が乗り手は増えてます。(個人の雑感)地味に増えてるのが『トライク』ですかね?
※2:2015年現在は再評価されているような気もしますが作者が中高生の頃は不人気車の代名詞でした。
※3:2015年4月からアニメ化された『トリアージX』の原作者にして『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』の作画担当。INAZUMA名義で成人向け漫画や同人誌を執筆。
※4:佐藤大輔原作の漫画およびアニメ『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』の蔑称。
とりあえず、改訂前『俺達には土曜日しかない。』は消さずに残しますので読み比べるのもまた一興かと。




