入団試験~case1義盛くんの場合その1~
今回も色々と捏造設定ありまくりです。ツッコミ処ございましたらご指摘お願いします。※ログ・ホライズン資料集を読み返してPVPの記述で間違いに気づいたので強引に修正しました。回復職が最強を誇っていた事があるなんて・・・(汗)
2014年5月9日少し加筆
老舗MMORPG<エルダー・テイル>10番目の拡張パック<夢幻の心臓>が実装された年、日本サーバーのとある戦闘ギルドが世界的に脚光を浴びる。大規模戦闘コンテンツ『ラダマンテュスの王座』を世界最速で制覇、幻想級武器《苦鳴を紡ぐもの“ソード・オブ・ペインブラック”》を入手しその黒き剣に因みギルド名を改名したギルド。後にアキバ5大戦闘ギルドに名を連ねるそのギルドの名は<黒剣騎士団>
急速に<黒剣騎士団>の名と『レベル85以下入団お断り』というエリート主義「足手まといはいらねえぜ!」「ガンガンいこうぜ!」と云う方針は日本サーバーに広まり入団希望者が増えたある時期のお話。
ここは<黒剣騎士団>ギルド・ホール正面入口。1人の僧兵風の装備を纏ったアバターが先程から右往左往している。
(どうしよう……どうしよう……此処まで来たのはいいけど、何をどうしたら入団させて貰えるんだろう……)
彼の名は『義盛』LV90の<神祇官>エルダー・テイルプレイ歴、約2年。未だギルド加入をした事がない為にどのような手続きをすればよいのか判らずテンパっているらしい。
「君はうちのギルド入団希望者かな?」
不意に声を掛けて来た黒衣に近い色合いのローブを身に纏った<黒剣騎士団>のタグを付けた< 施療神官>名はレザリック。
「は、はひ!本日こ、<黒剣騎士団>様に、に、にゃ・・・否!入団したく入団試験を受け、けにまいりゃましてゃ!」
急に声を掛けた所為もありテンパり具合もMAXである。
「そうですか。入団希望者ですか、今ギルマスに連絡を取りますから少しお待ち頂いても宜しいかな?」
「は、はひぃ!」
レザリックの柔かな物腰に更に緊張感が増し、声は上吊り、中の人はPCの前で兎に角落ち着こうとお茶がガブ飲みしている。どうも面接などがすこぶる苦手なタイプのようだ。
「《ヨシモリ》くんでよいのかな?ギルマスからギルド・ホール入場許可が降りましたから私の後に付いて来て下さい。」
「は、はひぃ…ゲホッブベッ…」
・・・テンパり過ぎてお茶が器官に入ったらしく咽せる義盛の中の人。それを気にも留めずギルドマスター執務室に案内するレザリック。
黒剣騎士団ギルドマスター執務室。…と云えば聞こえが良いが何も飾り気のない打ちっ放しのコンクリート剥き出し、廃墟然とした一室のド真ん中に逆立てた赤髪に禍々しい黒き大剣とコレまた禍々しい黒き全身鎧とテントのようなマントを身に纏った一見するとクエストで遭遇しそうな高レベルモンスターのような容姿のアバターが仁王立ちしている。
彼こそがこの<黒剣騎士団>ギルドマスター“黒剣”のアイザックその人である。
「よう!兄ちゃん、ウチに入団希望だってなぁ、特技の習得の割合は?傭兵かなんかで大規模戦闘の経験はあるか?」
「はひぃ!特技は7割くらい奥伝です!大規模戦闘の経験はまだ有りません!“御社”のエリート主義な処に憧りゃましてでしゅね…だ、大規模戦闘コンテンツに挑戦したくて“御社”に面接に参りまし…アレ?」
義盛、どうにも彼はこの手のやり取りが苦手らしい。アイザックは半ば苦笑していた。
「兄ちゃん、名前は義盛だっけ?入社試験の面接じゃねぇんだからそうテンパるなって!面白ぇ奴だなぁ。大規模戦闘は未経験か・・・。」
「…はひぃ!ですが!」
「ギルマス、彼はここ数回の公式PVP大会の上位ランカーのようです。あと非公式個人主催PVP大会でも優勝ないし、ほぼ上位に食い込んでますね。」
義盛の言葉より先にレザリックが攻略サイトや公式サイトなどで調べたであろう情報をアイザックに伝える。
「ほぉ~回復職の<神祇官>でPVPの上位ランカーってのは珍しいなぁ。」
アイザックの云う通り、公式であれ非公式であれPVPで回復職が上位ランカーと云うのは稀であり、(例外として一時期、<雲雀の凶祓い>を駆使した弓装備の神祇官が最強だった頃もあったが、義盛の装備は弓ではなく身の丈よりも長大な大太刀である。)大抵は戦士職か武器攻撃職が上位を占めるのがエルダー・テイルの中では半ば常識と化している。その半ば常識を覆したのが目の前の<神祇官>なのだから興味津々である。
「上位と云っても下から数えた方が早い位の恥ずかしい順位ですし・・・。非公式の方も偶々優勝出来たくらいで・・・。」
謙遜と云うより卑下しまくりの義盛。
「レザリック!今日、俺とお前以外のメンバーで手の空いてる奴ぁ居ねぇのかよ?」
「残念ながら今日、ログインしている皆さん他の入団希望者のテストで出払ってますね。」
「チッ!八郎辺りが居たら面白ぇモン観れたのによぉ!」
面白そうな玩具が目の前にあるのに遊べない!そんな感じが言葉の端から伺える。
そして暫し執務室を沈黙が支配する。テンパって放心状態の義盛にとっては異常なほど長い時間に感じ色々な事が頭の中を巡る。
(あ~やっぱり何度か余所の大規模戦闘に傭兵で参加して実績を挙げてから来るべきだったかなぁ…否!それでは余所のやり方が染み付いて<黒剣騎士団>のやり方にそぐわないんじゃ…いやいや…以下略)
「おう!兄ちゃん!急遽、助っ人呼んだからよぅ!ソイツに勝ったら入団許可してやる。」
突然、沈黙を破ってアイザックが提案する。
「ちょっ!ギルマス!それじゃ八郎さんの・・・」
「レザリック!黙ってろ!どうする?兄ちゃん?このテスト受けるかどうかはお前次第だ?なんなら諦めて野良に戻るか?」
アイザックの挑発とも取れる言葉に義盛の混乱した頭が徐々に冷静になってゆく。
「…アイザックさん、勝てば入団を許可して頂けるんですね?」
「ああ!もちろんだ!俺も100人以上のプレイヤー束ねてる漢だ。約束は守る!」
アイザックの声は真剣そのものだ。その言葉を頭の中で反芻しながら、更に冷静になり闘志を燃やす義盛。
(勝てば憧れの<黒剣騎士団>に入れる。お嬢やヘルメス達と別れてまで選んだ道だ!もう後戻りも出来ない…)
その時だ。執務室に来客を知らせるメッセージが画面に表示される。
■リチョウ様が入室されました。■
「よう!リチョウの旦那ぁ!久し振りだな?最近、大規模戦闘で顔合わせねぇけど元気してたか?」
アイザックが軽いノリで挨拶をする相手、黄色と黒の髪、巨大な体躯を持ち最早『虎』にしか見えない猫人族の武闘家。彼の所属ギルドを示すタグにはアキバ2大戦闘ギルドの一角<D.D.D>の名が表示されている。彼は入室するなり凄まじい怒気を込めて叫ぶ。
「アイザック!そこの<神祇官>の小僧か!ウチの大将の首獲ったら<黒剣騎士団>に入団させてくれ!なんて寝言を垂れ流してる馬鹿野郎は!!!」
「えっ?!」
突然のリチョウの発言に呆然とする義盛。
~その2に続く~
今回登場しました。<D.D.D>のリチョウさんは津軽あまに様作『D.D.D日誌』に登場しているリチョウさんをあまに様より許可を頂き、拙作にて書かせて頂きました。
津軽あまに様快く許可を頂き誠にありがとうございます。
津軽あまに様作 『D.D.D日誌』
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