『歴』戦の猛者
今回は、歴史ヲタで時代劇スキーにしか解らないネタが多いので興味のない方は回れ右です。
「この阿呆娘~!あんたセンスないんじゃないの?」
「阿呆って僕の事ですか?阿呆って云う方が阿呆じゃないですか!先輩の方が趣味が悪いんですよ!」
双方、小学校低学年並みの幼稚な罵声を浴びせながらギルドホール内を縦横無尽に暴れ回る。
普段、非常に仲の良いと思われている義盛と朝右衛門が本気モードでぶつかり合っているがサツキ、ヘルメスは只々傍観を決め込み、ヴィシャスは1人でブツブツと呟いてホールの隅っこに居る、同じくエンクルマもヴィシャスの横でブツブツと呟いている。
「オイオイ!どうなってやがる?なんで彼奴等、ギルドホールで俺の許可なくPVPやってんだ?」
丁度、ログインしたばかりの<黒剣騎士団>総団長アイザックが目の前の惨状を観てボヤく。
「あ~♪大将ぉ何時もの事ですからぁ~♪気になさらずぅ~♪」
相変わらず緊張感の欠片も感じられないヘルメスが事の始まりを説明する。
事の発端は引退した八郎の話から幕末の話になり、そこから『新撰組』を題材にした時代劇に話が発展、その派生から今まで『土方歳三』を演じた役者で誰が一番ハマり役だったかと云う話になった辺りから雲行きが怪しくなったらしい。
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~数分前~
「やっぱり、ハマり役は『燃えよ剣』、『新撰組血風録』で副長演じた栗●旭さんでしょ?」
「えぇ~大河ドラマ『新撰組!』の山●耕史さんの方がハマり役ですよ~!大体、●塚版って白黒じゃないですか?ヨシ先輩、一体何時の生まれですか?」
「ワテクシハ『新撰組血風録』デモ村●弘明さんガ演ジタ土方歳三ガ一番好キデナ、●上さんト云エバ、主演でびゅー作ガ『●面ライダー』デ・・・」
話に混ざって、延々と昭和仮面●イダーの6作目について語り出すヴィシャスに問答無用で痛恨の一撃を放つ、義盛&朝右衛門。
「「黙れ!特撮ヲタオヤジ!」」
「なっ・・・特撮ヲタ・・・。」
普段、目上に礼儀正しい部類に入る義盛と朝右衛門のこの一言はヴィシャスにとって正に一撃必殺だった・・・、ショックの余りホール隅っこでイジケて、村上弘●さんの主演作を延々と独りで語る四十路と約36ヶ月・・・。
「貴様達ゃ、目上に対してなんち口のきき方しょっとや!」
余りのイジケ振りにエンクルマがヴィシャスを慰めつつ2人に説教するも・・・。
「「黙れ!ムッツリ田舎ッペ大将!」」
「ム・・・ムッツリ田舎ッペ大将ちゃなんね・・・。」
普段、自分の方言をバカにせず慕ってくれている後輩からの心を抉る一言にエンクルマも轟沈・・・、ヴィシャス共々ホール隅っこに退場。
「ヨシ先輩、古ければ良い、渋ければ良いと云うもんでもないでしょ?」
「はぁ~?新しくて実年齢に近けりゃいいってもんでもないでしょ?大体、朝ちゃんはどれだけの作品観てその答えだしてんのよ?」
「本数多く観てれば偉いんですか?先輩その考え方おかしくないです?」
「何それ?私に喧嘩売ってるの?朝ちゃん?」
「え~♪売ったら買ってくれるんですかぁ?」
「「上等!」」
かくして歴女同士の戦いが始まった・・・。
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「・・・と云う訳で~♪まぁ、昔から歴史モノや時代劇絡みの話になると何時もコレですからぁ平常運転なんですよぉ♪」
「平常運転なんですよぉ♪・・・じゃねーだろ!サツキ!ヘルメス!コイツら止めろ!」
「「無理! (ですわ)(ですよぉ♪)」」
アイザックの命令はアッサリ却下された、この2人が無理だったら他に止められるメンバーも居ないだろう。
サツキ曰わく、『歴史モノが絡んだ争いになると2人の戦闘力は通常の3倍、口の悪さはヘルメスの3倍になるんですもの』(サツキ調べによる※ゲームなので実際の攻撃力などは変化しません)だそうで、こうなったら戦闘での決着が着くまでは手が付けられない。
「・・・通常の3倍って『赤い彗星』かよ・・・。」
アバターに頭を抱えるようなエモーションをさせて呆れるアイザック。
無いお脳をフル稼働させるが、所詮エンクルマとどっこいどっこいの許容量では名案は浮かばない、そんなアイザックを余所に義盛と朝右衛門の戦闘は苛烈なモノとなって行く。
「くたばれ!厨二病患者!」
「男声のネナベが何云いやがりますか!」
お互いに必殺特技を使い、本当に殺るか殺られるかなギリギリのラインだ。
「ねぇ~♪大将ぉ、この2人止めたら大規模戦闘産レア素材を私に譲って貰えますぅ~♪」
「あ~!?ヘルメス、さっき止めるの無理って云ったの誰だ?」
さっきは無理だと云い、今度は条件次第では2人を止める事が可能な事をほのめかすヘルメスとその問い掛けに訝しむアイザック。
全く手段は無くもないが、その代わりに見返りを要求する・・・ここがサツキ達に『守銭奴』と云われる所以でもある。
「いや~♪こんな無駄な争いでぇ♪大神殿送りになって、ギルメンの経験点が削られるのもギルドとしては損失になりませんかぁ♪大将ぉ?それに、ギルマスがぁ♪ギルメン同士の争いを指咥えて傍観してたなんて噂がたったらぁ♪“黒剣”の二つ名にキズが付きません?そこの所ぉ~♪どう思いますぅ♪大将ぉ?」
PCディスプレイの前でいやらしい笑みを浮かべるヘルメスの中の人。
ヘルメスにしろサツキにしろ、『時代劇の新撰組』絡みで義盛と朝右衛門が揉めてる時の対処方法は心得ているが敢えて対処してないだけなのだ。
「ヘルメス~・・・なんかやり口が八郎に似てきたな・・・。」
「え~♪そんな事無いですよぉ♪私、平常運転ですよぉ♪で?どうしますぅ大将ぉ?」
一呼吸置いて、アイザックの指示?が出る。
「・・・条件は飲むからあの馬鹿2人止めろ!」
「へっへっへ~♪了解ぃ♪じゃサツキ手伝ってぇ♪」
「承りましたわ。」
暫くして、義盛と朝右衛門の動きが止まり戦闘状態が解除された。
そして、ホール内に2人の絶叫が木霊する・・・。
「いや~!?止めて~土方さんは!土方さんはブリーフ一丁で『オバQ』のコスプレなんてしないもん!なんでこの人が土方さん演じてるのよ~!!!!!」
「違う!こんなの僕の知ってる土方歳三じゃない!『ダメだこりゃ~!!』なんて云わないもん!あんなタラコ唇ゴリラ顔じゃないもん!」
大絶叫と共にその場からログアウトした2人、その光景をPCディスプレイ前で呆然と見つめるアイザックの中の人、反対にPCディスプレイ前で、してやったりな笑みを浮かべるヘルメスの中の人。
「大将ぉ~♪約束通り止めましたよ~♪報酬プリーズ♪」
「・・・ヘルメス、お前一体何したんだ?」
ついさっきまでホール内で暴れ回っていた2人は何故、大絶叫しながらログアウトしたのか不思議で仕方ないアイザックはヘルメスに答えを求める。
「いや~只、あの2人に画像添付したメール送ったから見てね♪って念話しただけですよぉ♪」
「・・・たったそれだけか?」
「それだけですわ、それ以外には何もしてません。」
多分、PCディスプレイ前で物凄いドヤ顔であろうサツキの中の人。
たったそれだけの事で止められるなら何故、さっさと止めなかったのかとアイザックに抗議されるが、そんな抗議は全く無視して報酬を要求するヘルメス。
最終的に口ではヘルメスに勝てず渋々、指定された大規模戦闘産レア素材を譲渡するアイザック、この件以来アイザックの中でヘルメスに対する評価はかなり変わった。
尚、この件以来、数日間約4名ばかり全く使い物にならず、レザリックが色んな面で苦労する羽目になったとか、ならなかったとか・・・。
「・・・すみません・・・何故、無関係の私が貧乏くじを引く羽目になるのでしょう・・・?」
義盛と朝右衛門が泣いて嫌がった役者さん?(芸人さん?)と作品が解る方はかなり重度の時代劇スキーさんだと思われます。朝ちゃんが絶叫された方が土方歳三を演じてらしたのは、この話書くに当たって、色々調べて初めて知った口です。役者としては、某踊るのイメージが強い方ですが・・・。




