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仮面“武闘”会。

今回もサブタイトルは懐かしの名曲から。

「なぁ~誰かシドの仮面の下、見たこと在るか?」


 相変わらず唐突に変な事を呟く<黒剣騎士団>総団長“黒剣”のアイザック、彼がそう云うのも無理は無い、通称“シド”こと、ヴィシャスはギルドに入団してから向こう一度たりとも仮面を外した事がない。

 オフ会などにはマメに参加するので中の人の顔は知っているのだが、MMORPGエルダー・テイルのプレイヤーキャラとしてのヴィシャスの“素顔”は誰も観たことがない。


「あ~確かに、私ヴィシャスと付き合い長いけど、アイツが仮面を外した処を見たことないわね・・・。」


「云われてみりゃ確かにヴィーやんの面の下ちゃ見たこつなかね。」


 八郎とエンクルマも同意する、そもそも何故、仮面をしているのか?今の今まで誰も気にもしていなかったが、改めて云われてみると確かに誰も理由すら知らないし、そうやって云われると急に気になるのは人間の悲しいさがである。


「気になるな・・・。」


「気になる!」


「見たかね・・・。」

 





「つー訳で、朝右衛門!どんな方法使っても構わねーからシドの仮面の下をスクショに収めて来い!」


「・・・どういう訳ですか?!団長、ゲームの仕様上、無理な事を幼気いたいけな中学生にやらせるつもりですか?」


 ビックリするほどの無茶振りをJCに振る大人気の欠片もない本業『大工』のネトゲ廃人、ギルマスの権限の無駄使いも甚だしい・・・。


「朝右衛門、本当に『ゲームの仕様上』あの仮面を取る事は無理か?それにお前、八郎と互角以上に渡り合ったらしいじゃねぇか?古参の連中が関心してたぜ?」


 まったくもって悪い大人のお手本だ、ヨイショしてやる気を出させようという子供だましもいいところである。こんな単純な手に引っ掛るほど朝右衛門は


「いや~あの時は伊庭八姐さんが油断してたからですし~。僕、そんな大した事ないですよ~。」


 ・・・チョロかった・・・、謙遜はしているが口振りは満更でもない様子。

 所詮、彼女も<黒剣騎士団>のギルメンである、こうなってしまえばあと、一押しでノリと勢いで突っ走るだろう・・・。


「いや、大した事あるぜ。うちの役付きでも八郎とサシの勝負で互角以上ってのは中々居ねー。」

 

 真っ赤な嘘である!伊庭八郎嬢(永遠の26歳)のサブ職はどちらかと云えば、PVP向きにも関わらず彼女は1対1の勝負が苦手である、<黒剣騎士団>の古参や役付きは八郎のサブ職<剣狂>の欠点を知り尽くしているのでサシの勝負で負ける者はほぼ居ない。その癖、乱戦や大規模戦闘レイドでは無類の強さを発揮するので始末に負えない。(とは云うもののサブ職のデメリットで大規模戦闘レイドエネミーを倒すと同時にHPが0になり最期まで大規模戦闘コンテンツに残る事は希だが・・・。)その辺の事情を知らない新人に止めとばかりに畳み込む、ここら辺りは八郎の悪知恵だ。


「朝右衛門!お前の腕ならあの仮面、叩き割る事も出来るんじゃねぇか?」


「え?叩き割る??」


「あぁ、此処からは俺の推論だが・・・」


 アイザックが言うには、あの仮面が頭部用防具であるならば、耐久度の設定があるのではないかとの事、で耐久度があるのであれば0にしてしまえば、仮面は外れるだろうというのだ。

 実際ヴィシャスの仮面が防具なのかなどヴィシャス本人にしか判らない、これで防具でなく普通にただのアクセサリーアイテムだった場合は本人が装備解除しない限り外せないのだ。


「つー訳だ!3日やるから3日以内にシドの仮面剥がしてスクショ撮って来い!出来たら幹部待遇だ!」


「?!本当ですか!本当に幹部待遇?!」


「当たり前だ。安心しろ。」


 そう云ったアイザックの台詞は棒読みだった。

 




「アサボー、何故ニワテクシを狙ウ。」


 この2日間、ログインする度に何故か同じ<黒剣騎士団>に所属する新人、朝右衛門=YからPKを受けるヴィシャス。

 初日はイキナリ、仮面を取って素顔を見せてくれと云われたのだが、それを丁重に断った途端に襲われた、しかも全ての攻撃が頭部狙いの特技でだ。

 従者召喚などを駆使して返り討ちにはするが、兎に角『仮面を外して下さい。』の一点張りで詳しい事は一切云わない。

 

 (・・・また、伊庭のお嬢辺りの悪戯か?)

 

 朝右衛門に恨まれる理由もなし、変に仮面に執着してる辺り、完璧超人のマスク狩り・・・なんてネタをJCが解る訳もなし、となれば考えられる事は1つ“チープスリルジャンキー”伊庭八郎に唆されたという結論に辿り着く。

 そういう事であれば、倒すではなく捕まるにシフトチェンジだ、襲ってくる朝右衛門を<アストラルバイン>で絡めとり、移動を制限する。


「アサボー誰ニ唆サレタ?今、大人シク白状スレバ許スケド、云ワナイ場合ハ・・・。」


「・・・云わない場合は、どうするんですか?」


 恐る恐る、ヴィシャスに聞く朝右衛門。


「・・・義盛嬢チャン達ニちくル、僕ハ何モシテナイノニ、アサボーガイジメルヨ~ッテナ。」


 朝右衛門にとってはこれ以上の脅しはない、何せリアルでも付き合いが在り、今でも4人で遊びに行ったりする事もある間柄だ、幹部待遇欲しさにギルドの大先輩にあたるヴィシャスにPKをやってる事がバレたら、間違い無くリアルでヘルメスの実家に連行されて本堂で正座の上、義盛からの説教とヘルメスの精神口撃、サツキにはリアルで着せ替え人形にされるだろう、容易に自分の末路が想像出来るだけに朝右衛門はあっさり諦め、アイザックが幹部待遇を餌にヴィシャスの素顔のスクショを撮って来いと指示した事を白状する。


「・・・大工カーペンターノ差シ金カ、ソウカ、ソウカ。アサボー、素直ニ白状シタカラ許ス、アノ阿呆メ・・・。」




 その後、アイザックから芋づる式に八郎とエンクルマも一枚噛んでいる事が発覚し、ヴィシャスによる大説教大会が開催された後、後日改めてリアルでヴィシャスに呼び出しを喰らい、いい歳した大人3人が正座で説教をされたとかされてないとか。


 朝右衛門の件は、約束通りヴィシャスは不問に伏したが、八郎経由で義盛達の知る所となり、朝右衛門は自分が予想していた通りの結末を迎える。



 それ以来、誰もヴィシャスの仮面の話題に触れなくなり、謎は謎のまま終わるのであった。



 「ワテクシノ仮面ハ防具ジャ無イよ。あくせさりーあいてむナノダヨ。」

今回の、このしよーもない話。書くかお蔵入りするか悩んでおりましたがオヒョウ様の一言で踏ん切りが付き掲載した次第。


オヒョウ様、その節はありがとうございました!

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