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あの娘とスキャンダル。

タイトルは懐かしの名曲から・・・。

 ヴァレンタイン兄弟とは某吸血鬼漫画2巻に登場し、以降巻末漫画で大活躍した兄弟の事である・・・。


 ヴァン・アレン帯とは、地球の磁場にとらえられた、陽子、電子からなる放射線帯の事である・・・。


 (ボビー・)バレンタインとは、アメリカ合衆国コネティカット州出身の元プロ野球選手、千葉ロッテマリーンズ 元監督の事である・・・。


 バレンタイン歩兵戦車とは第二次世界大戦時のイギリスの歩兵戦車 Mk.IIIの事である・・・。

 

 2月14日、ヴァレンタインデー日本では女性が意中の男性にチョコレートをプレゼントするお菓子メーカーの陰謀的風習である。

 

 老舗MMORPGエルダー・テイル日本サーバーを管轄する<F.O.E>は毎年2月14日に期間限定イベントを行う。

 今年は14日前後3日間、男女プレイヤーキャラクターがペアを組んで挑むクエストが実装された。内容は至ってシンプル、マイハマの都周辺ゾーンに現れるつがいのネズミ型モンスターやつがいの家鴨型モンスターを一定数討伐すると期間限定のレアアイテムがゲット出来るというものである、ただしドロップされるアイテムはランダムで必ずしもお目当てのレアアイテムが手に入るとは限らない。







マイハマの都周辺ゾーン


「さぁ!!ヨッシー!!狩って狩って狩りまくるよぉ~♪期間限定レアアイテムだから後で必ず高騰する!!狩れる時に狩ろうよぉ♪」


 何時に無くハイテンションな“黒剣の残念職3人組”その3ヘルメス、普段のおっとりとした口調は何処へやら、バンバン石弓クロスボウで矢を射り率先してモンスターを狩ってゆく。

 そんな彼女に障壁を張り狩りのサポートをする“黒剣の残念職3人組”その1義盛。


「ヘルメスゥ~あんた、彼氏さん放置プレイでいいの?毎年ヴァレンタインデーはデー…」


「今年はちゃっちゃとチョコ配送してるからいいの!デートと期間限定レアアイテムどっちが大事だと思ってるの?毎年毎年デートでこの時期のイベントに出れない人間の気持ちが判るか?ヨッシー?」


 ・・・義盛からすれば理解不能である。

 元々ヘルメスというか“沙代子”さんは恋愛とかには興味のない女の子なのだが、高校一年生の時にたまたま帰り道で遭遇した小学校の時、同じクラスだった男子に小学校当時から好きだったと告白され再三断ったのだが最終的に根負けして現在に至る。

 付き合っていると云っても2週に一度電話連絡を取ったり、クリスマスやヴァレンタイン、双方の誕生日にデートするくらいの付き合いで沙代子自体は積極的では無い為、よく彼氏に泣かれるのだとか・・・。


 そんな余談はさて置いて、今回のヴァレンタイン限定レアアイテムゲットの為、義盛、サツキ、朝右衛門、わんこがヘルメスによって駆り出された。ヘルメスは義盛と組み、サツキはわんこと組み、朝右衛門がモンスターを引き寄せる役とサブ職<追跡者>のスキルで付近のゾーンの偵察を遣らされている。

 現在居るゾーンのモンスターをあらかた殲滅し終え、そこそこレアアイテムをゲットした頃、偵察に出て行った朝右衛門がワケの判らない事を口走りながら帰って来た。


「エ…エンクルマ先輩がレベル低くて日本語駆使して可愛い獣耳のお姉さんとキャッキャうふふです!」


「「「「はい??」」」」


 一同、意味が判らず朝右衛門に聞き返すが完全にパニクって話にならない、取り敢えず一旦朝右衛門が落ち着くまで待ち、改めて事情を聞く。


 なんとか、冷静さを取り戻した朝右衛門が云うには此処より2つばかり先のゾーンでギルド無所属の白髪にバッスルドレスの狼牙族、LV60の女性<吟遊詩人>と連れ立ってエンクルマが狩りをしているとの事。LVが60代で装備も違うし標準語で会話をしてるので別人かと思ったがギルドタグは間違いなく<黒剣騎士団>だった事からエンクルマに間違い無いらしい。


「・・・?LV60代ってことは師範システムで相手にLVを合わせてらっしゃるのかしら?」


「・・・エンクルマの兄貴が標準語??いつもの『ばい』とか『ばってん』とか『けん』とか『ちゃ』とかの九州弁じゃなくて?」


「つか、エン兄ィがナンパしたの?それとも彼女さん??」


「えぇ~?去年のオフ会の時ぃ♪仕事とエルダー・テイルが忙しいから彼女居ないって云ってたよぉ♪」


「いやいや!本当ですよ!僕はちゃんと見ましたよ!!ウソじゃないですって!」


 実際に目撃したのは朝右衛門だけ、しかもサブ職<追跡者>のスキル<隠行術ハイド・シャドウ>で姿を消していたのでエンクルマ達には気付かれてはいない。

 他のメンバーは怖いもの観たさで観に行きたいが、この数で押し寄せたらミニマップでバレバレである・・・しかし観たい!連れている女性がエンクルマの彼女なのか確認したいという欲求に駆られ、狩りそっちのけで如何にバレずにエンクルマ達に近づけるかを相談しだす5人。

 

 不意に義盛が思い出して叫ぶ。


「アレだ!昔、クエストで手に入れたっきり仕舞い込んでる<天狗の隠れ蓑>!アレってサツキお嬢もヘルメスもまだ持ってる?」


「あぁ~!それ俺も持ってる!使い処を考えるアイテムだからギルド会館に預けたままだ!」


「私も預けたままですわ。」


「私も~♪」



 <天狗の隠れ蓑>:とあるクエストの成功報酬、装備すると<隠行術ハイド・シャドウ>などの隠密行動を可能にする特技が使用可能になる代わりに一時的にメイン職で習得した特技が全て初伝になるという使い勝手の悪いアイテムである。


 取敢えず、朝右衛門を除く4人は早速<帰還呪文コール・オブ・ホーム> で一旦アキバに戻りギルド会館から各々<天狗の隠れ蓑>を引き出し、馬を召喚しマイハマの都周辺ゾーンへと、大急ぎで戻り、念話で朝右衛門に連絡をとる。


『朝ちゃん!エン兄ィはまだそっちに居る?』


『ヨシ先輩、なんだか楽しげに会話しながら狩り続けてますよ~。LVが下がって装備も変えてるから、エンクルマ先輩がちょっとモタついてますけど。』


『了解!了解!そのまま追跡よろしく!』


『ラジャりました!』


 朝右衛門からの報告だけを聞くとラブラブデートのように聞こえるが実際、自分たちの目で確認するまでは俄に信じがたい、何より普段その手の話題を一切しないエンクルマがゲーム上でイチャコラしている絵面が想像しがたいのだ。


 数分後、元居たゾーンに到着し早速<天狗の隠れ蓑>を装備する4人、<隠行術ハイド・シャドウ>で姿を隠し朝右衛門がエンクルマを見つけたゾーンに急行する。

 其処で観たモノは他のペアと混じって、狼牙族の女性<吟遊詩人>と狩りを楽しむ?LV63で普段と装備の違うエンクルマの姿だった。


「「「「(エン兄ィ)(エンクルマの兄貴)が彼女?連れてる~!!!」」」」


「ユキさん、僕がヘイト稼いでモンスター集めますから援護お願いします。」


「は~い♪マドカちゃん、任された!」


 ステータスに表示されてるキャラクターネームとは違う名をお互い呼んでいる、エンクルマの本名が『まどか』なのでおそらく、お相手の美しい声の持ち主も本名なのだろう・・・。

 <隠行術ハイド・シャドウ>で姿を消している5人はこのやり取りで確信した。


「「「「「爽やかに標準語で会話してる~!間違いない!リアル彼女だぁ~!!!」」」」」


 俄かに信じがたかったが、現場を目撃してしまっては信じざるをえない。ネトゲ廃人のたまり場<黒剣騎士団>のギルメンでリアル恋人が居るのは多分、両手の指で数えられるほどだろう。

 しかも、その大半は女性メンバーで男性メンバーの浮いた話など聞いたことも無い・・・。そんな中、自他共に認める<黒剣騎士団>随一のお馬鹿さん“黒剣の一番槍”エンクルマに彼女が居るなんて話がギルド内に伝われば上へ下への大騒ぎは間違いない。

 

 エンクルマはサブ職<傾奇者>の特技<見得切り>を発動、派手で大仰な演出とエフェクトで周囲のモンスターを大いに引きつけ、<螺旋風車>で纏めて吹き飛ばし、そこに『ユキ』と呼ばれた女性<吟遊詩人>の<アルペジオ>が飛ぶ・・・、この時2人の会話を逐一聞き逃すまいとかなり近づいていた5人はモンスター諸共攻撃の餌食となり<隠行術ハイド・シャドウ>の効果が切れ、エンクルマたちに見つかってしまった。


「・・・何してんの?お前たち??」


「「「「「あはははははは・・・・」」」」」


「??あれ?君たちマドカちゃんと同じギルドの人??」


 突然、その場に現れた後輩達の姿を見て唖然とするエンクルマと『ユキ』と呼ばれていたキャラクターネーム『ストレリチア』、迂闊にも近付き過ぎて、範囲攻撃の範囲内に入り姿を晒してしまい乾いた笑いしか出来ない5人。


 最早、これまでと諦めて事の次第を義盛がエンクルマに説明する・・・ある意味、他人のプライベートを覗き見したような行為なので弁解の余地もなく怒られる覚悟を5人は決めていたのだが・・・。


「あ~、なるほど。確かに勘違いするよなぁ・・・この人は僕の勤めてる美容室の常連さんでな、この間、エルダーテイルの話で盛り上がって今回の限定イベントアイテム欲しいって言ってたからちょいと手伝ってるだけだよ。」


「そうそう、私が無理云ってお願いしたの、でもマドカちゃん<黒剣騎士団>のギルメンで二つ名持ちってのは流石に驚いた。」


 予想に反する答えが返ってきた為、リアクションに困る4人だが、ヘルメスだけはズケズケと切り込んでいく。


「エン兄ィ、お互い本名で呼び合って、オマケに普段の九州弁じゃなかったら、私達じゃなくても勘違いするよぉ♪」


「そうだよねぇ~、マドカちゃんが私のキャラの名前『ストレリチア』を覚えてくれないもんだからついつい、普段通りの呼び方になっちゃってね、そう云えばマドカちゃん九州出身って云ってたよね?何、プライベートは九州弁なの??」


「はははは、お恥ずかしながら仕事以外の時はお国言葉なんですよ。」


(((((キャラネーム覚えられないとか(エン兄ィ)(エンクルマの兄貴)らしい・・・)))))


「今はプライベートなんだから、普通に喋りなよ~マ・ド・カ・ちゃん。」


「・・・ユキさん、酒入っちょるやろ?普段、そげん喋らんのに今日はよー喋りよんしゃー・・・。」


「にゃはは~判る~?でもマドカちゃんの九州弁可愛い~♪」


「はいはい・・・酒癖悪かね~…予想外ばい・・・。」


(((((普通にカップルに見えますよ・・・、お二人さん・・・。)))))


 2人のやり取りに閉口する5人。このあと、ストレリチアのお目当ての限定アイテムが手には入るまで5人は2人を手伝うのであった。



 後日、エンクルマが彼女とゲーム上でデートしていたという噂がまことしやかに流れたのは云うまでもない・・・。

今回、水無瀬香生様作『或る歌唄いの非日常』http://trackback.syosetu.com/send/novel/ncode/555835/よりキャラクターをお借りしております、使用許可ありがとうございます。


まさか、こちらが先にストレリチア嬢をお借りするとは・・・(苦笑)


そして、毎度の事ながらヤマネ様の処より少しネタを拝借しております・・・(汗)不快でしたらご一報を・・・。

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