2015,12,21弧状列島ヤマトの旅その2
今回、いちぼ好きです様作『ある毒使いの死』http://trackback.syosetu.com/send/novel/ncode/533931/
よりキャラクターをお借りしております、使用許可ありがとうございます・・・!そして先に謝罪します申し訳ありません!!!(本当に扱いが酷くなってしまいました・・・。)
『えっミナミはヘルメスの一言で壊滅?個人のプライベートに関わる問題だから内容は云えない?レオ丸さん?もしも~し!レオ丸さ~ん!』
全く要領を得ない念話が途絶する、ただ判る事は、八郎達は易々と!?ミナミを突破し、他の本拠地へ転移したと云う事だ。
「義盛ちゃん、ナカスとススキノの配置は?」
「八枝さん、配置は完了してます!あとはシブヤが未配置です!」
「シブヤはここを二手に分けて配置しようか?」
「櫛姉様、それではシブヤとアキバは手薄になりませんか?」
「サツキさんの云うことも判りますが、これ以上人員を増やすのは得策ではないと思うので、私はクシ先輩の指示に従います。」
「・・・すいません・・・僕、このメンバーに混ざっていいのでしょうか??」
無駄に連携が取れている?5人を他所に挙動不審この上ない<スノウフェル死ね死ね団>ギルドマスター朝右衛門=Y、無理もない日本サーバーで最大手戦闘系ギルドの大幹部2人とその友人、そして自分が休止期間中にやはりエリート主義で有名な戦闘系ギルドに所属した先輩と慕うプレイヤー2人(しかも、カッコいい、カッコ悪いは別としても二つ名持ちになっている。)に囲まれては大抵のプレイヤーは萎縮して当然だ。
ましてや、朝右衛門自体、一昨日復帰したばかりでレベルはまだ88になったばかり、残り5人はカンスト・・・そんなメンバーを差し置いて、レベル的にも年齢的にも一番下の自分がギルマスというなんとも居心地の悪い状況だ。
(・・・ただの八つ当たりがとんでもない事になってきちゃたよ・・・僕どうしたらいいの!?)
そんな朝右衛門の気持ちを余所に作戦は進んで行く。
「朝右衛門ちゃんだっけ?気にしたら負けだよ~こういうのは適当に乗っかって楽しまないと。」
八枝の無責任な一言に乾いた笑いしか出せない朝右衛門であった・・・。
■
本拠地ナカス トランスポートゲート前
八郎とヘルメスは呆然としていた、目の前には全く予想だにしていなかった人物が2人の女性キャラを連れて待ち構えて居た・・・、ギルドタグこそ変わってないが雪玉を各人が携帯してトランスポートゲート前で待機している時点で<スノウフェル死ね死ね団>絡みだと判る。
「ヴィシャスならまだしも・・・まさか、あんたまでガキンチョの馬鹿騒ぎに参加とは・・・冗談でしょ?クニヒコさん?」
クニヒコ、八郎がそう呼んだ屈強な体躯の人間の<守護戦士>は八郎たちと同じ<黒剣騎士団>所属で、ノリとその場の勢い任せの他のメンバーとは一線を駕し総団長アイザックも一目置くほどの大規模戦闘指揮官である。
そして彼が連れている二人の女性キャラ・・・1人はギルド無所属だが一部では有名なPVPをメインとして活動している決闘家、人間の<暗殺者>ユウ、もう1人は<グレンディット・リゾネス>というミナミに拠点を置く中小ギルドのギルドマスター、エルフの<森呪遣い>レディ・イースタル、3人は旧知の友で中身は30代半ばの男性である。
「まぁまぁ、そう云うなよ伊庭八ぃ~今日はスノウフェルなんだぜ?お祭りだぞ?お祭り!お祭りって云えば馬鹿騒ぎ!流石にこの歳で<スノウフェル死ね死ね団>は無いが、祭りにゃ参加したくなるってのはある意味、『男の性』ってもんだ!それに可愛い後輩2人に頼まれちゃ仕方ねぇだろ?」
豪快に笑い飛ばすクニヒコ。
「まぁ、祭りが嫌いな男ってのもめずらしいわな。」
アバターには全く似つかわしくない特徴的なだみ声で相槌を打つレディ・イースタル。
「・・・確か、そっちの伊庭八郎ってお嬢さんは昔、某海外サーバーで日本人プレイヤーのみを標的にしてPKやってたギルドをたった1人でそのサーバーに乗り込んで散々暴れまわった挙句潰したっていう、“羅刹女”だとか“キラークィーン”だとかの二つ名持ちだったな・・・。」
レディ・イースタルほどではないがやはりアバターに似つかわしくないだみ声のユウ、<スノウフェル死ね死ね団>が差し向けた?ナカスの刺客はこの3人のようだ・・・。
正確に云えばたまたま、ナインテイルに居たクニヒコに義盛が念話で連絡を取りその場に居合わせたユウとレディ・イースタルがおもしろがって(主にレディ・イースタルが)義盛たちの作戦に乗っかったというのが事実である。
そして、ユウの話した八郎の昔の二つ名の由来だが、これは少々尾鰭が付いて話が広まったモノで本来、八郎以外にも義憤に駆られた数名のプレイヤーがパーティーを組んで乗り込んだというのが事実なのだ。
その中でも一際悪目立ちしたのが八郎であっただけで、決して1人で壊滅させた訳ではない、しかし何が何処でどう間違ったのか話が一人歩きし、ユウの話したような内容に化けてしまった経緯がある。
本来、個人の強さや二つ名に興味の無い八郎からすると迷惑な話で、この件に纏わる話は八郎の前では禁句でしかない。
「おお!このお嬢さんが彼の有名な“羅刹女”の伊庭八さんか。」
さも楽しげに軽口を叩く様に禁句を発するレディ・イースタル (本人悪気なし)
「・・・八郎姐、昔そんな事してたんですかぁ♪全然想像がつかないやぁ♪」
この期に及んで未だに悠長というかマイペースなヘルメス、しかし八郎は違った・・・ユウとレディ・イースタルは八郎の触れてはイケナイ黒歴史に触れてしまったのだ・・・、本人が作為的に“チープスリルジャンキー”という二つ名を定着させたくらいには触れられたくない若気の至りにして、知らぬ間に話しが盛られた黒歴史・・・(他人からすると“羅刹女”も“キラークィーン”も“チープスリルジャンキー”も団栗の背比べなのだが。)2人には悪意はないだろうが、踏んではいけない地雷を踏んでしまった・・・。
「・・・しいくないの?」
・・・ボソボソと呟く八郎、微かに声が震えてるようにも感じる。
「あ・・・馬鹿!伊庭八の前でその話は・・・っ!」
クニヒコが気が付いた時には既に手遅れで八郎は羞恥と怒りをぶつけるかの如く捲くし立てた。
「三十路も、とうに過ぎてMMORPGでテキストチャットも使わずよくもまぁボイスチャットでネカマやってられますね!三十路過ぎると羞恥心も無くなりますか?そうですか!
格ゲーのオンラインゲームなら俊敏性とかの関係で女性キャラ使用するのは理解出来ますけど、プレイヤーキャラに男女の性能的個体差のないMMORPGで、わざわざ女性キャラをアバターにする利点は?それともその手の変身願望がお有りですか?リアルでその手の趣味でもあるんですか?『祭りが嫌いな男はいない』??そのアバターでどの面さげてそんな台詞が出るんですか?
もういい歳だから奥様もいらっしゃいますよね?貴方方は奥様の前で自慢気に『これが俺の使ってるキャラなんだぜ!』って見せびらかせます?出来ますよね?私よりプレイ歴は長いんですし、奥様方もその辺を承知でご結婚なされたのでしょ?いや~私が男だったらできませんわ~、ある意味尊敬しますよエルダーテイルでも人生でも偉大な先輩のユウさんにレディ・イースタルさん!!」
「「なっ」」
長い・・・否、もしかすると短いのかもしれない沈黙が辺りを支配する、その沈黙を破ったのはユウだった・・・。
「・・・表に出ろ・・・。」
流石に訳も判らずにイキナリ初対面のプレイヤーから罵声を浴びせられれば誰だって怒るに決まっている。(相手の古傷を無自覚に抉った事に気が付いて無いのだから仕方がないと云えば仕方が無い・・・。)
「何です?図星突かれて逆ギレですか?口じゃ女に勝てないから実力行使ですか?ネカマのユウさん?」
尚も挑発する八郎、こちらも触れられたくない黒歴史に触れられて、怒りの沸点を振り切っている・・・慌てて中に割って入るクニヒコ、両者完全に本来の目的を見失って今にも一触即発の危険な状態だ・・・。
「ユウ!伊庭八!やめろ!此処は戦闘禁止区域だぞ!落ち着け!!おい!タル!お前もユウを止めろ!ヘルメス嬢ちゃんも伊庭八止めてくれ!!!」
「・・・クニヒコお前、どっちの味方だ?俺はユウに付くぞ?相手になってやるから表に出ろよ“羅刹女”さんよぉ・・・。」
レディ・イースタル、彼も八郎の言葉に怒りの沸点が振り切れている・・・もう収拾はつきそうにない、兎に角、ユウとレディ・イースタルの前に立ちはだかり必死に止めようとするクニヒコ、『表に出ろ』とは云うものの今にも得物を引き抜かんばかりに怒り狂った2人・・・。
「あぁ~もう!畜生!ヘルメス嬢ちゃん!!伊庭八連れてトランスポートゲートで他の本拠地に飛べ!!ここは俺が引き受ける!!いいからさっさと!行け!!!」
巨躯を駆使して2人を止めるクニヒコ、彼の言葉に促されるように八郎をトランスポートゲートに押し込むヘルメス、なんとか八郎をゲート内に押し込む事に成功したヘルメスは一言クニヒコに残して自分もゲート内に飛び込む!!
「クニヒコさ~ん♪ヨッシーとサツキの我儘に付き合ってくれてありがとうございますぅ♪そして、ごめんなさい!後日、八郎姐にきっちり謝罪させますからぁ~!」
「おう!ヘルメス嬢ちゃんも無事でいろよぉ~!!無理して伊庭八なんかに合わす事ねぇぞぉ~!!!」
こうしてナカスもなんとか無事に?突破・・・、クニヒコは怒り狂った2人を静止する為、自慢の<幻想級>装備、<黒翼竜の大段平>を抜き<衛兵>によって牢屋送りに、ユウ、レディ・イースタルも怒りに目が眩み武器を抜いた為、同じく<衛兵>によって牢屋送りとなった・・・。
『高山さん!クニヒコさんと念話連絡が取れません!何らかのトラブルが生じたようです!』
キビキビとした口調でシブヤに向かった<D.D.D>組に念話を送る義盛。
「・・・状況は把握しかねますが、ナカスも突破されたようです。どうします?クシ先輩?」
「ん~、なるようになれ!じゃないかい?山ちゃん?」
「そうそう!なるようになれだよ、山ちゃん。私らは悪戯の片棒担いでるだけなんだから気楽に気楽に~」
馬に乗りシブヤに向かう<スノウフェル死ね死ね団><D.D.D>組。
本気で事を構える気がない2人は気楽である、しかしまさかこの後に事を構えざるを得ない状況に陥るとは神の身でない3人・・・否、<スノウフェル死ね死ね団>の6人は知る由もなかった・・・。
頑張れ!ヘルメス!負けるな!ヘルメス!黒歴史を発掘されてご愁傷様!八郎!!
・・・うちの悪いところはゲスト様をコメディーリリーフに仕立て上げる事ですね・・・、反省しきり・・・。
八姐に限らず、居ると思うのですよ『個人の強さ』とか『その界隈で有名になる』って事に興味も無ければ、意義も感じないのに気か付けば『強い』部類に入れられたり『その界隈で』良くも悪くも有名になってしまった人って・・・。
2015,12,21弧状列島ヤマトの旅シリーズは一応、次で決着予定です。そしてこのシリーズでは八姐はとことん痛い目を見る予定です。




