『スノウフェル』と『リア充』と『二つ名』
季節的に半年くらい先のイベント事のネタを書くこの理不尽さ・・・。
スノウフェルの時期がやって来た!
スノウフェルとは!12/21から新年1/10までの約20日間運営会社<F.O.E>からさまざまな季節限定イベントが提供される楽しい期間である!
スノウフェル!それは場合によっては、旬のレイドイベントの踏破条件が緩和されたり、アイテムドロップ率が上昇するといったキャンペーンも行われるために、廃人たちの冬の陣とも呼ばれるものである!!
スノウフェル!それは廃人ゲーマーにはお祭りな反面、日本サーバーでは期間中でも12/24、25、31、1/1、2、3にログインしているプレイヤーは『非リア』の烙印を押されるイベントでもある・・・!!!
「リア充は大神殿送り~♪首置いてけ~♪ネット上でまでイチャこらしてる不埒物に正義の鉄槌を~♪僕は~♪リア充大嫌い~♪スノウフェル死ね死ね団此処にあり~♪」
調子っ外れな即興の歌を歌いながら雪樽の雪玉をカップルとおぼしきプレイヤー達に投げつけてはおちょくって逃げるを繰り返す<スノウフェル死ね死ね団>のギルドタグを付けたなんちゃって和装に大弓と大太刀を背に携えたショートヘアの女<暗殺者>この時期には必ず1人は居る『非リア』のお手本のようなプレイヤー・・・。
彼女の名は『朝右衛門=Y』つい最近、同じ中学校に通っていた彼氏にフラれ八つ当たりの為、暫くお休みしていたMMORPG<エルダー・テイル>に復帰したなんとも困った中学2年生の女の子である。
元々、厨二病を完全に拗らせ末期症状の彼女にとって冬の一大イベントクリスマス前に『彼氏』と別れたのは致命的であった・・・。夢見がちなお年頃の彼女のストロベリーな夢は脆くも崩れ去り、残ったのは自分をフッた元彼への怒り・・・。
その怒りをブチ撒け発散すべく(人、それを八つ当たりと云う・・・。)、スノウフェル初日からログインして辺り構わず雪玉をカップルとおぼしきプレイヤーに投げ付けては挑発している。
先ほどなども金髪ツインのチビロリ、ドワーフの<施療神官>、黒髪で和装を着崩した狐尾族の妖艶な<神祇官>、ロングの赤髪で目元がばっさり隠れているスレンダー体型な<召喚術師>、トランジスタグラマーで和装メイドな狐尾族の<吟遊詩人>を連れてハーレムを形成した中性的な<武士>に散々雪玉をぶつけて悪態を吐き、彼の連れていた?女性陣にアキバの外まで連行され大神殿送りにされたばかりなのだが全くめげる気配すらない・・・、尚も他のカップルとおぼしきプレイヤーに雪玉を投げつけては挑発している。
「MO・GE・RO!MO・GE・RO!ファッキュー!!スノウフェル!!この調子で暴れて序でに自称じゃない二つ名get出来るくらい有名になってやる!」
・・・発想が幼いというか厨二というか・・・もはや、ヤンキー漫画の三下レベルのDQN発言だ・・・。
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今年のスノウフェルは<黒剣騎士団>にとっては異常事態だった・・・例年なら総団長アイザックを筆頭に主要メンバーで北米サーバーのフィールドレイドボス討伐組、ヴィシャスを筆頭に<召喚術師>や芸術肌のプレイヤーを核とした軍団によるススキノ遠征、オウウ地方での、期間限定のインスタントダンジョン「カマクラ」に出現する「赤ナマハーゲ」「青ナマハーゲ」見学ツアー組と大まかに3つのグループに分かれて行動するのが通例なのだが今年は違った。
総団長アイザックなど主要メンバー数名がリアルお仕事の関係で今年のスノウフェルは不参加、八郎曰く『アイザックがログインしないとか、転変地異の前触れに違いない。』らしい。
エンクルマも、リアルお仕事の関係でスノウフェル前半は不参加、ヴィシャス曰く『この時期の接客業は着床の予行演習の為に着飾ったりヘアアレンジしたがる雄蕊や雌蕊の相手しなきゃならんから大変だ』との事。
実質、スノウフェルの約20日間を満喫出来るのは『色んな意味でリアルが忙しくない』ギルドメンバー限定という事になり、今年は思い思いに好きに動こうという事で落ち着き三々五々ギルドホールを後にした。
“黒剣の残念職3人組”義盛、サツキ、ヘルメス、“チープスリルジャンキー”こと伊庭八郎の四人がブリッジ・オール・エイジスの方角へと足を運びつつ今年のスノウフェルでの身の振り方を相談している。
「サツキお嬢はスノウフェルの期間どうするの?私は例年のアレに遭遇するのが嫌だから海外サーバーに遠征したいんだけど・・・。」
既に毎年恒例になりつつある事象を思い出しゲンナリした口調でサツキに言葉を掛ける義盛、エルダー・テイルを始めて以来何度と無く味わった屈辱とも云ってよい事象は1つには彼女のアバターと男性に間違えられるハスキーを通り越して『正に漢』と云わんばかりの声質に原因がある。
「そうですね~、どうせスノウフェルの期間、約20日ほぼ通しでログインしてるのは私とヨシくんくらいですし・・・西欧か北欧にでも遠征しましょうか?」
「何?何?義盛とサッチャンは毎年、ほぼ通しで参加なの??スノウフェル??」
1人、勝ち誇った大人気ない自称『永遠の26歳』伊庭八郎が茶化すように口を挟む、話の内容から容易に察する事が出来るのに敢えて本人の口から今までの経緯とかを引っ張り出そうとするこの性格の悪さ・・・。
ここで普段ならフォローなり、八郎と一緒になって茶化したりする筈のヘルメスが完全に聞かなかった・・・、聞こえなかったかの如く押し黙っている。
「・・・毎年・・・カップルに間違えられて行く先々の街に設置されてる雪玉の集中砲火を喰らうんです・・・私・・・。」
地獄の底から響くような怨嗟の声を呪詛の如く吐き出す義盛・・・、スノウフェルに限らず、バレンタイン、七夕などのカップルの祭典のようなイベントではサツキと連れ立って行動する所為か必ずと云ってよいほど勝手に『リア充』認定され『非リア』に云われ無き迫害を受けていたのだ・・・、因みに大抵そういうカップルの祭典のような時期にヘルメスは1日か2日はログインしない・・・。
「・・・沙代子もげろ・・・。」
「・・・サツキさん?イキナリ本名で人を呼ぶのやめようよ~♪」
「・・・沙代もげろ・・・、冴子姐もげろ・・・。」
「・・・佳香さんも人の本名を呼ぶの良くないよ~・・・止めようねえ~・・・。」
何かに取り憑かれたかのように呪詛は吐き出す『非リア』の義盛とサツキ・・・。流石に普段オチャラケた態度をとる八郎やヘルメスすらその禍々しさに閉口してしまう・・・。
(八郎姐~・・・なんで地雷をわざわざ踏むんですか~)
(・・・うぅ~ヘルメスちゃんごめん・・・まさか此処まで禍々しいレベルだとは思ってなかったのよ~・・・)
・・・会話を聞かずに端から見ると、1人の男性キャラを奪い合う3人の女性キャラ達という構図に見えなくもない。
案の定、勘違いした者が義盛に向かって雪玉を投擲!雪玉は見事に命中!『パッシャーーン!!』というSEと白く煙るエフェクトが発生する・・・。
「よっしゃ~!!!生ぐさエロ<神祇官>に命中!もげ・・・・えっ?!ヨシ先輩にサツキさんにヘルメスさん??」
義盛に雪玉を命中させた相手は画面に表示されているステータスを見て一瞬言葉に詰まる。
「??もしかして・・・今、私に雪玉ぶつけたの朝ちゃん??」
義盛に雪玉をぶつけたのは<スノウフェル死ね死ね団>のギルドタグを付けた女<暗殺者>朝右衛門=Yだった・・・。
21話読了後にログ・ホライズン二次創作短編集5話をお楽しみください。




