表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/35

残念職の三人組

 ネットストーカー退治から一週間、<猛虎七星流>幹部並び、ネットストーカーなど悪質なハラスメント行為に関与したメンバーは垢BANされギルド自体も自然解散となった。特に悪質極まりない行為を行っていたギルマス桜花のプレイヤーは然るべき処のお世話になったようだ。


 さて、今回の被害者の一部であり図らずも<黒剣騎士団>に救われた形となったサツキ、ヘルメスの両名がその後、どうなったか・・・あの非公式PVP大会終了後、八郎、ヴィシャス、エンクルマ、アイザックに半ば拉致同然でギルド会館に連行され<黒剣騎士団>に入団させられたのであった。八郎曰わく『私が何の見返りも無しに動く訳ないじゃない、さぁ今日から貴女達は<黒剣騎士団>の一員よ、因みにヘルメスちゃんは若旦那から了解取ってるから何の心配もなく移籍してね。』だそうだ。


 余りの強引さに閉口してしまった2人だが、これも何かの縁だと諦めて入団に至る。後々まで『八姐は悪質な詐欺師だ』というのは2人の言、この件に関して一番喜んだのは云うまでもなく義盛である、これでまた一緒に遊べるとそれこそ泣いて喜んだ。


 しかし、全てが手放しに喜べる訳でもなかった・・・今回、<黒剣騎士団>以外で情報提供などで協力して頂いたギルドやプレイヤーなどに御礼を兼ねて挨拶廻りに行った3人、行く先々で“黒剣の残念職3人組”というとても有り難くない“二つ名”で覚えられてしまったからだ。<ホネスティ>では義盛と同職であるギルドマスターのアインスさえも笑いをこらえ対応する始末。<D.D.D>では、『ヤーヴェ』ことヤエに散々いじられ、三羽烏の1人高山三佐に慰められる始末。 ミナミでは<ハウリング>に絡まれるは、西武蔵丸レオ丸にエンクルマの今後を任されるなど、どちらかと云うと踏んだり蹴っりな目にあった・・・他にも挨拶廻りには行ったがどこも大差のない対応で豆腐メンタルな義盛などは心が折れて悶絶死寸前だった。 


「うぅ~私のHPとMPはもうゼロよ・・・。」


「いやいや、全然減って無いしぃ~♪相変わらず豆腐メンタルだなぁ~ヨッシーは♪」


 実際、義盛のHP、MPは全く減ってないが、この場合は義盛というキャラクターではなく中の人の精神的なダメージを本人はボヤいているのだが、それをさらっと受け流すヘルメス。

 何時如何なる場合でも軽口を絶やさないヘルメスに昔から何度となく救われている義盛にはそんな軽口が心地良い。


「処でヨシ君、<黒剣騎士団>って内部の雰囲気はどんな感じなんでしょう?」


「ん~・・・良くも悪くも常に悪ノリ集団というか、事、戦闘に関してはズバ抜けてると思うけど、普段はまぁお察し下さい。サツキお嬢・・・」


 メイン職が<付与術師>の割りに戦闘時は前に出たがる戦闘狂のサツキにはピッタリなギルドだと思うよ・・・と云いたいが敢えてそこは口にしない義盛、ムキになると自分より手が着けられなくなるサツキの性分を知っているからだ。







 あらかたの挨拶廻りが済んだ処で八郎に念話で連絡を入れるのだが一向に繋がらない。ヴィシャスやエンクルマも同様に念話が繋がらない。フレンドリスト画面ではログインしている事は確認出来るのだが何故か繋がらない。

 後になって3人が知る事になるのだがこの日、<黒剣騎士団>の常識人その2“キャノンボール”の2つ名を持つウッドストック=Wが脱退したのである。理由は総団長アイザックとの見解の相違だとか、八郎曰わく『同床異夢ってヤツで喧嘩別れではない、リアルでもゲームでも良くあるありふれたこと。』との事だった。

 しかし、そう云った八郎の口調はどこか寂しげだったように義盛達には感じとれた。

 結局、その日は<黒剣騎士団>内でも親しいメンバーとは連絡が取れなかったので久し振りに3人で海外サーバーに遠征してひとしきり遊んでログアウトした。






「お~い!みんな~週末オフ会やるぞぉ~♪総団長の奢りで!」


 余りに唐突な八郎の提案はその場に居たメンバーを唖然とさせた。名指しで奢る事が決定事項のように云われたアイザックは苦情を申し立てる。


「まて!八郎!オフ会は構わねーが何で俺の奢りなんだよ?!」


「ん~♪ここは1つ新人達に<黒剣騎士団>の総団長様はリアルでも豪快で懐の広いお方だと認識させようという、私の優しさから生まれた提案ですが何か?」


 明らかに悪戯を楽しむ口調の八郎、優しさなどバファリンの1/100も含まれてはいない、寧ろ含まれているのは100パーセント悪戯心のみ!


「まぁ、冗談だから!取り敢えずギルド掲示板で出席確認と幹事決めるのとオフ会の会場確保を決めてですね~…」


「言い出しっぺのお前が幹事じゃねーのかよ?」


即座に突っ込みが入るが全く意に介さず、さらりと切り返す八郎。


「無理!今、別件で合コンの幹事やる事になってるから!今回はヴィシャスかレザリック辺りに任す!残念職3人組は強制参加!じゃ!私は別件の方で動くからじゃあねぇ~♪」


本日この場に居ない2人に幹事を押し付けログアウトする八郎、その場に残ったメンバーは苦笑したり愚痴ったり・・・。


普段の<黒剣騎士団>の他愛もない日常。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ