入団試験?~case2サツキさんとヘルメスさんの場合その5~
オヒョウ様、インチキ関西弁でごめんなさい。
あと、私MMORPGやった事が無いので経験者から色々教わりつつ書いている部分がございます。なのでご指摘ありましたらよろしくお願いします。
本拠地ミナミ某所。
<黒剣騎士団>のタグを付けたドレッドヘアに狐尾族特有の立ち耳にド派手な着流し、異様な形の穂先をした両手槍を携えた<武士>エンクルマとこちらは<タグなし>丸刈り坊主頭に細めのゴーグルに高難易度コンテンツでしか入手出来ない幻想級の布鎧を纏った<召喚術師>西武蔵坊レオ丸の二人が丁度合流したようだ。
「急にお呼びだてして申し訳ありません、ご無沙汰してますレオ丸兄さんお元気でしたか?」
「よ~久し振りやな、エンちゃん。しかしどないした?変にさっちょこばった喋り方して?」
久し振りに会ったエンクルマが酷く余所余所しく標準語で喋る為どうにも訝しむレオ丸。
「いやぁ~今回ですね、色々と兄さんのお力というかお知恵をと云うか拝借したくてですね・・・。」
「・・・エンちゃん、自分なんか拾い食いでもしたんか?それとも怪しい葉っぱにでも手ェ出したんか??」
・・・やはり、エンクルマが『標準語』で会話をする=異常事態という認識になるようだ。だがエンクルマはエンクルマでミナミに行く前に八郎から幾ら知人とは云え、今回は用件が用件の為、粗相の無いようにと釘を刺されておりその為、お仕事の時しか使わない標準語を駆使しているのだ。
色々とレオ丸に心配されつつ、今回の本題をエンクルマなりに順を追って説明し協力を仰いだ。
「なるほどなぁ~、何処にでもおるねんなぁそういうインケツな連中・・・。でワシの知り合いで<ハウリング>所属の奴がおらへんか聞きに来たと?」
「そうですね、もし居らしたら<猛虎七星流>と繋がりが在るかを確認して頂きた・・・」
「・・・エンちゃん・・・普通に喋ってええよ?そんな余所余所しい喋られたらワシ悲しいで・・・。」
本来のエンクルマの九州弁を知っているレオ丸からすると違和感が拭い切れない。
「しかし・・・今回は八郎姐さんに礼儀を・・・」
「・・・普通に喋らんのんやったら協力せんぞ?」
呆れ半分、怒り半分でレオ丸が呟くが尚も標準語で話を進めようとするエンクルマ
「兄さん、それは困ります。って云うか、何か情報を知・・・」
「ま・だ・ふ・つ・う・に・し・ゃ・べ・ら・へ・ん・か?<黒剣騎士団>入って向こうに染まってもうたか?そんなんやったらワシは君らの欲しい情報持っててもしゃべらへん!」
「んな!兄やんそらイケン、儂が姐やんにぼてくり回される・・・。」
堪らず、普段の九州弁に戻すエンクルマ、聞きなれた喋りを聞き一安心するレオ丸。
「あんなぁ、エンちゃん多分八郎ちゃんは『親しき仲にも礼儀あり』ってのを云いたかったんやと思うで?別に標準語で交渉して来いなんて云われてひんやろ?相変わらず君はアホやなぁ・・・。」
「・・・確かに姐やんは失礼の無いようにちゃ云いよったけど、『標準語』で喋れちゃ云いよらんかった・・・儂ゃ勘違いしちょったわ。」
「判ればよろし!で、<ハウリング>やったらギルマスのナカルナード知っとるから直接、聞ぃとったるわ。・・・それと<放蕩者の茶会>な、あそこはギルドでもなんでもない『個の集団』やから余所からメンバースカウトなんてしいひんて八郎ちゃんに伝えとってや。あと、なんか他にもこっちで協力出来ることは手伝うたる。」
「・・・兄やん儂、馬鹿やけんいっぺんに色々云われても覚えきれん・・・メアドは変わっちょらんけんそっちに今の内容を・・・」
「・・・エンちゃん、ワシ君のそういうところ嫌いやないで?」
■ ■ ■
本拠地アキバ:<ホネスティ>ギルドキャッスル
<黒剣騎士団>副総長:ドン・マスディと同ギルドの常識人その1レザリックの2人が<ホネスティ>ギルドマスター執務室に通される。
「シンジュクでの闇狩りの件、誠に申し訳ありませんでした!総団長アイザックに代わり、不肖副総長ドン・マスディ、遅ればせながら正式な謝罪と、ご質問したい懸案が御座いましてまかり越しました!」
「シンジュクの一件はもう終わった事ですし、我々も気にして下りません。どうぞ頭を上げて下さい。・・・しかし質問したい懸案とはどのような内容でしょう?」
数ヶ月前のシンジュクでのレッサーベヒモス闇狩り事件での正式謝罪も込みで肩書きだけNo.2のドン・マスディと実質的に<黒剣騎士団>の執務(雑用から交渉事まで)全般を任される実質No.2のレザリックがアキバ2大戦闘ギルド(※2015年当時)の一角<ホネスティ>との交渉を八郎に任されている。
肩書きだけとはいえNo.2、こういう時にはそれなりに礼を逸しない受け答えが出来るようだ。(多少時代掛かった台詞回しになっているのは緊張している所為もあるだろうが。)
それに対し、ギルド内外から“先生”と慕われる<ホネスティ>ギルドマスターアインスは、やはり丁寧な『先生の鑑』と云っても差し支えのない対応と受け答えだ。(実際に教育者で在るか否かはさて置き)ただ、ある種“粗暴”で有名なギルド<黒剣騎士団>の幹部クラスが雁首揃えて『質問したい懸案』があるとわざわざ足を運んで来た事に少し戸惑いがあるようだ。
不慣れな謝罪と啖呵?でいっぱいいっぱいのドン・マスディに代わりレザリックが一連の件の説明とその真偽を確かめる為の質問をする。
「・・・なるほど、我が<ホネスティ>が特定のギルドから頻繁に傭兵を要請するような事はありませんし、<猛虎七星流>・・・でしかた?聞いた事もないギルドですね。・・・ただ<WTS>というギルドには聞き覚えがあります。」
「<WTS>をご存知で?」
アインスの言葉にレザリックが反応する。そしてアインスの言葉を引き継ぐように<ホネスティ>の幹部シゲルが言葉を続ける。
「えぇ、我がギルドの中級レベルのギルメンがクエスト中に数回『横殴り』や『loot』の被害に遭ったという報告を受けていますね。一応GMコールはしていますが、根本的な解決には至っていません。」
「・・・なるほど、情報提供ありがとうございます。これは私レザリックの個人的なお願いになるのですが、『また』<ホネスティ>の方が<WTS>からの被害に遭遇した場合<WTS>のタグにナンバリングされていないかを確認して頂いた後に我々にご一報願いたいのですが・・・。」
この提案は事前に八郎から提案されていたもので、もし<ホネスティ>が<猛虎七星流>ではなく<WTS>の何らかの情報を得ていたらギルドタグにナンバリングがされていたか確認して欲しいとのことだった。
「判りました、こちらで協力出来る事は協力させて頂きます。被害に遭ったギルメンにもギルドタグにナンバリングが在ったか確認を取ってそちらにご連絡します。」
「「ご協力ありがとうございます。」」
ドン・マスディ、レザリックはアバターにお辞儀のエモーションをさせ礼を述べた。
※『横殴り』他のプレイヤーが先に戦闘を開始したモンスターに後からチョッカイをかける事。
※『loot』戦利品略奪の意、他者が倒したモンスターがドロップしたアイテムを横取りする事を指す。
■ ■ ■
本拠地アキバ生産ギルド街付近
「あ~『ギルドタグ無し』なんてどれ位ぶりだ?何つーか下半身だけ真っ裸で歩いてるみてーで落ち着かねー。」
レザリックの配慮で一応、護衛組は“ギルドタグ”を外しての行動になったのだが親衛隊隊長ゼッカ=イーグルはそれが不満なのか“ギルドタグ”が無い事が違和感なのか理解に苦しむ例えで1人ごちる。
「ゼッカちゃん、女の子の前で下品な事云っちゃ駄目なんだぞぉ~プンプン」
大きなフードを被り邪悪な魔法使い然とした風貌に顔全てを覆い隠す仮面を付けた一見して性別も種族も判らない(ステータスを見ればバレバレなのだが)<召喚術師>ヴィシャス通称“シド”がバリバリの美少女アニメ声でゼッカを諭す。
「シド!お前、偶には『音声合成ソフト』使わずに地声で話せよ・・・お前のアバターから美少女アニメ声は無し!無し!キモいわ!」
「じゃあ、ゼッカちゃんの好きなAV女優の声に・・・。」
「・・・楽しく会話中、スミマセンが、ゼッカさんシドさん・・・一応、女の子が2人もこのパーティーに居るんですから下ネタはちょっと・・・。」
申し訳なさげに古参2人の会話に割って入る昨日のわんこ、しかしそのわんこの台詞に脊髄反応で反論が飛ぶ。
「女の子は3人だ!『明後日のわんこ』!あんたも大概デリカシーってもんがないよね?」
先日、中の人が女性であることカミングアウトした義盛から怒声が飛ぶ。
「「「ごめん!マジでカウントするの忘れてた。」」」
男性陣3人の台詞が被る。
「皆さん、あまりヨシくんをイジメないで下さい。アバターが厳つい僧兵姿でもプレイヤーは女の子な上に豆腐メンタルなんですよ?」
サツキが素早くフォローに入る。
「・・・お嬢も一言多いよ・・・。」
そうこうしている内に<第8商店街>ギルドキャッスルに到着。
「取敢えずぅ~♪うちのギルマスさんチキンなんで<黒剣騎士団>の皆さん連れて行ったら萎縮して話にならないと思うんですよぉ♪だから私1人でギルマスに話をしてきますんで、皆さん終わるまで買い物でもしててくださいねぇ~♪」
そう云い残し1人ギルドキャッスルの中に消えるヘルメス。
「なぁ、義盛・・・ヘルメスちゃんって実は毒舌?」
何気なく質問するゼッカに即答する義盛。
「あの喋り方なんで騙される人が多いですけど、かなり猛毒吐きますよあの娘。前に出会い厨なんかを轟沈させたり、駆け出しの頃『残念職3人組』なんて呼ばれてた時期なんて云った連中尽く『言葉』で再起不能にしてましたから・・・。」
「うわい!ナンダカ、ワテクシと気が合イソウダ・・・って云ウカ、ぜっかチャン、ナンカ変ナノガウロツイテルヨ?」
無機質な機械音声で警戒を促すヴィシャス。
「判ってる、ただ姉御からこっちから先に手を出すなって云われてるし、アキバの中で流石に向こうも仕掛けてはこねぇだろう・・・。」
「そうですね、タグ外した何人かが確かにこの界隈を徘徊してますわ・・・。」
流石に今回の被害者サツキは<猛虎七星流><WTS>いずれのメンバーかは判らないがタグを外して尾行していたことに気付いていたらしい。
「じゃぁゼッカさん、ヘルメスちゃん戻って来たらどうします?」
周りを警戒しつつわんこが指示を仰ぐ。
「ん~・・・戻ってきたら今日はその場でログアウトで解散。情報がある程度集まるか緊急事態でも発生すりゃメールか何かで連絡来るだろ?」
「「「「了解!」」」」」
その後、ヘルメスが暫くしてかなりの情報を仕入れて戻ってきたが、周りに<猛虎七星流><WTS>のメンバーが居るという事で一旦全員その場でログアウトして解散した。
ーキャラクター 紹介ー
ヴィシャスLV90 メイン職<召喚術師>サブ職<死霊使い(ネクロマンサー)>人間/男性
通称“シド” ネクロマンサービルドでサブ職まで<死霊使い(ネクロマンサー)>というある意味極めた廃人中の廃人。邪悪な魔法使いを彷彿させるような装備に仮面をつけているのでステータスを観なければ種族も性別も判らない仕様な上に自前の『音声合成ソフト』でボイスチャットをする為、古い付き合いでオフ会などで顔を見知ってる人間以外は中の人の性別を知らない。<黒剣騎士団>三大奇人変人の1人。『キチガイの皮を被った常識人』『常識人のふりしたキチガイ』とも・・・リアルでの本職はデザイナー。PCは自作機を愛用しハッカー紛いな事も出来る。○○と××は紙一重を地で行く人。自称“黒剣のゴミ処理係”UKパンクをこよなく愛する。




