入団試験?~case2サツキさんとヘルメスさんの場合その4~
本当に今回は<黒剣騎士団>らしくないお話です。そして『私家版 エルダー・テイルの歩き方 -ウェストランデ編-』のオヒョウ様。(http://trackback.syosetu.com/send/novel/ncode/493951/)『辺境の街にて』のヤマネ様。(http://trackback.syosetu.com/send/novel/ncode/203190/)『ヤマトの国の大地人』の凡人A様。(http://trackback.syosetu.com/send/novel/ncode/271592/)kirry 様。キャラクター使用許可ありがとうございます。
それでは本編をどうぞ!
2014年5月9日
ユーミル→ヴィシャスに変更
加筆修正
「さて、アイザックどうすんのさ?この娘たち助けて正義の味方気取る?それとも、ネットゲームじゃありふれた話だって一笑に伏せる?」
何気に棘のある言い方をする八郎、アイザックの無言に何かしら思う処があるようだが、その言葉も無視して沈黙し続けるアイザック。
「大将、ここでこん娘たち助けんやったら儂らもクズの仲間入りばい?それで良かとね?」
「エンクルマの云う通りだぜ?ボス。その胡散臭い<蒙古斑七転八倒>だかとか云うギルド潰しちまおうぜ!」
エンクルマとゼッカが捲くし立てる。その場に居るほかのメンバーも同調して『殺る』の『潰す』の物騒な言葉が飛び交いギルドホールには只ならぬ殺気が渦巻く。<黒剣騎士団>の男性メンバー(ほぼ9割男性プレイヤー)は馬鹿は馬鹿でも陽性の馬鹿の集まりである。女性プレイヤーに嫌悪されるような悪さする陰性で悪性の馬鹿は1人も居ない、なので今、彼らを突き動かす怒りは所謂『義憤』なのだ。此処で彼らのリーダーであるアイザックがGOサインを出せば彼らは感情の赴くままに<猛虎七星流>を襲撃するだろう、しかし只潰してもまた、何かしら別の形でこの手のストーカー行為を繰り返すだろう、そうなる事を危惧して八郎はアレコレと考えを巡らせていた。
「ところでお嬢ちゃんたち、その<盲腸七味唐辛子>ってのは<黒剣騎士団>の事は何にも云ってなかったのか?」
今までの沈黙を破ってのアイザックの第一声、余りに唐突過ぎる質問に一堂呆然である。
「・・・ヨシくんが<黒剣騎士団>にお世話になってるので一度、お聞きした事はありますが・・・。」
何かしらあるらしくサツキは云い澱む。
「<黒剣騎士団>はなんだって?」
「・・・お聞きになります?」
「構わねーよ。ハッキリ云ってくれよ?お嬢ちゃん。」
アイザックが促す。云い澱むサツキの変わりにヘルメスが言葉を繋げる。
「えぇっとですね~♪彼らが云うには『幻想級アイテム1つ手に入れた位で浮かれてギルド名変えるようなショボいギルドに貸し出す傭兵はうちのギルドには居ないし、あんななんちゃってエリート主義の輩とは付き合いを持ちたくないし、持っても<猛虎七星流>の格が下がる』だそうですよ~♪」
「・・・そうかい・・・聴いたか野郎ども!今、この場に居ない奴らにも伝達!『戦争』だ!」
アイザックの一言でホール内のボルテージは一気に上がり皆が刻の声を挙げようとした瞬間。
『スパーン!』『スパーン!』『スパーン!』
八郎、レザリック、ウッドストックの『ハリセン』が次々とアイザックの頭を襲う。
「このバカザック!なんであんたはそうも考え無しなんだい!何が『戦争だ!』なのよ!それじゃ本末転倒でなんの解決にもならないじゃない!『クロ○ズ』や『特○の拓』辺りを読み過ぎた中坊か!」
「八姐さんの云う通りです!少しはギルマスとして冷静な判断を下せませんか?」
「お前がそんなだから、他のメンバーにも示しが付かないのが判らんか?」
常識人2人とギルド1の悪戯好きに説教をされるギルドマスターアイザック、しかしこの3人の正論を力技でねじ伏せようと怒鳴る!
「じゃあ、聞くがお前らは<黒剣騎士団>を馬鹿にされて黙ってるつもりか?このお嬢ちゃん2人の現状を見て見ぬふりか?そんな腰抜けは<黒剣騎士団>にゃ要らねー!や…」
「はい!スト~ップ!あんたの云いたい事は判る!でもね、『ネットストーカー』なんかやる奴らに馬鹿正直に喧嘩仕掛けてどうするの?明確な大義名分も無しに手を出したら最悪<黒剣騎士団>が悪者扱いされてアカウント凍結されかねない、アイザック?それはギルドマスターとして最適解じゃないよね?」
激昂したアイザックを諭すように云う八郎、云われている事は理解出来るが最良の一手が見つからないアイザックは尚も怒鳴る。
「じゃあ!どうするんだ!?八郎!手前には最適解が見えてるのかよ?」
「ん~?こうゆう時は大規模戦闘と同じさ、ただ今回は情報収集なんかを更に綿密にやらないと攻略失敗だけどね・・・。」
口にはしたものの八郎本人も全て事が上手く運ぶとは思ってはいない。兎に角、必要なのは『情報』である。そしてその『情報』を集める為には外部の協力と<黒剣騎士団>自体の団結力が要なのだ。
「サツキちゃん、ヘルメスちゃん、アイザック、今回の件に関して私に全権を委ねてくれない?最初に安請け合いしたのは私だしね・・・。」
「私とヘルメスは構いませんが、こんな厄介事に巻き込んでも宜しいのでしょうか・・・?ギルマスさん?」
「お嬢ちゃん達、厄介事だのなんだのは気にするな。八郎!任せてもいいが勝算はあんのかよ?」
「勝算はまだ何とも・・・アイザック、あんた大規模戦闘は難易度が高い方が好きだろう?それとも難易度の低い攻略済みの大規模戦闘の方がお好みかい?」
少し茶化したように質問を質問で返す八郎。返された質問を鼻で笑いながらアイザックは云う。
「判った!今回の件、八郎に任せる!お前ら今回の仕切りは八郎だ!指示に従ってキリキリ動けよ!」
一同「「「「「おおぅ!!」」」」」
スピーカーが壊れんばかりの雄叫びがギルドホールに木霊する。『伊庭八郎主催ネットストーカー退治大規模戦闘』の始まりである。
「そんじゃ、役割分担といきますか!先ずは、義盛、ゼッカ、わんこはお嬢ちゃん達の警護。パーティー組んでりゃ迂闊にチョッカイ掛けてこないし、もしなんかあってもあんたらなら蹴散らせるでしょ?暴走防止と安い挑発に乗らないようにキリーちゃんも付けたいけど、キリーちゃんには別件頼みたいし・・・。」
「うわ~、俺達信用されてんのかされてねーのか・・・姉御、キリーだって短気だぜ?」
「あん?短気が鎧着てるような絶望的馬鹿のゼッカちゃんに云われたくねーよ!つーかあんたは鎧が本体で中身がオマケだろう?」
親衛隊長ゼッカ=イーグルと数少ない女性メンバー<盗剣士>のキリーの舌戦が開戦。お互い罵り合うが八郎が割って入る。
「待て!キリーちゃんは<宝玉の翼>のメンバーに連絡宜しく、具体的内容は後から指示だす。ゼッカ・・・あんたは一言多い!そっちにはヴィシャス付けるからゼッカ!ブレーキ役宜しく!」
「あいよ!八っちゃん!」
「ちょ・・・よりにもよって『シド』かよ?!あ~もう了解!」
「ぜっかサン、ワテクシが一緒daTO何ヵ不都合デモ?」
先ずサツキ、ヘルメスの当面の護衛に親衛隊長<施療神官>ゼッカ=イーグルを主軸に<召喚術師>ヴィシャス<武士>昨日のわんこ<神祇官>義盛であたる。
キリーにはセクシャルハラスメント等から女性プレイヤーの保護を訴え活動する互助ギルド<宝玉の翼>への連絡係を任す。
「ウッドストックは茜屋の爺っさまから最近のアキバでの噂話でもなんでも片っ端から引っ張って来てよ。あと、使って悪いけどヘルメスちゃん、あんた<第8商店街>所属よね?若旦那にもそれとなく聞いて来てくれる?」
「<RADIOマーケット>か、判った!」
「一応所属してるだけの幽霊ですがぁ♪善処します♪」
矢継ぎ早に指示を飛ばす。
「レザリックとドンちゃんは<ホネスティ>出来れば、先生とシゲルさんに<妄想七変化>の云ってる事の裏取って来て。」
「オウ!」
「・・・八姐さんに皆さん<猛虎七星流>ですよ・・・<猛虎七星流>!」
やっと皆のボケ(多分、本気の聞き間違い)に突っ込みが入る。
「<猛虎七星流>ね・・・了解!<D.D.D>は私から櫛八玉とヤエちゃんに連絡取って裏取…」
「ちょっと待て!八郎!」
突然アイザックが言葉を遮る。
「なんで、お前と付き合いの長いリチョウの旦那じゃなくて、“突貫”と連れの性悪女なんだ?この間の<D.D.D>と義盛の一件やっぱりお前絡んでたな?」
八郎がアイザックから背を向けてソロリソロリと移動する。
『ナンノコトダカ私ニハワカリマセンョギルドマスター』
「八姐!アレは八姐の悪戯だったの!?」
都合が悪くなってテキストチャットに切り替える八郎、件の被害者である義盛も追求し始める・・・。無駄に勘の良いアイザックの一言で八郎の常日頃の行いの悪さが露呈した瞬間である。
「<D.D.D>は俺が直接、クラスティの野郎に聞いて来る!」
「・・・大将、それは止めたが良かよ。大将が直で<D.D.D>に乗り込んだら結果は頭ン悪か儂でも予想つくばい?」
((((うわっエンクルマ (さん)が正論を・・・))))
エンクルマの口から珍しく正論が出たためホール内は静まりかえる。
「ほれ、エンクルマにまで云われてるんだから、あんたにゃ交渉事の類は無理だって!だから私に任せな。」
ホールのあちらこちらから失笑が漏れる。
「じゃあ、俺の役割はどうなるんだ?!八郎!」
余りの恥ずかしさと若干の悔しさに声を荒げるアイザック。
「あ~、あんたと“風神”“雷神”コンビ、ユーミルと亜倶弐は平常運転でいいよ。狩りでも大規模戦闘コンテンツ探しでも。お嬢ちゃん達の云う通り相手がこっちを思いっきり見くびってくれてるなら、あんたは何時も通り振る舞ってくれてる方が今は好都合。」
「そんなんでいいのか?」
「いいよ。あんたが普通にしてりゃ、向こうはお嬢ちゃん達の護衛をゼッカ達が勝手にやってる統制の取れてないギルドだって勘違いしてくれるだろうし、その方が好都合だよ。」
「八姐さん、相手はそこまで馬鹿ですかね?」
レザリックからもっともな一言が飛び出す、その一言に対しての返答は・・・
「これは私の勘だけど、そこまでの馬鹿だと思う。『幻想級アイテム1つ手に入れた位ではしゃぐ』って言葉を鵜呑みにすれば、『ラダマンテュスの王座』攻略以前の<黒剣騎士団>を知らないのか、以前のギルド名とイコールになってないかのどっちかじゃないかと踏んでる。」
八郎の云う通り、<黒剣騎士団>の名を世界的に知らしめたのは大規模戦闘コンテンツ『ラダマンテュスの王座』を世界最速で攻略したからだが、それ以前にも数々の大規模戦闘を潜り抜けているのは周知の事実なのだ(但しその頃はギルド名が違っていたが…)それを知らない時点で相手は余りその手の情報に明るくないとみて良いだろう。
「さて、あとは<放蕩者の茶会>と<ハウリング>か・・・、誰かミナミか茶会に伝手ある人居る?」
「姐やん、ミナミやったらレオ丸兄やんが居るやん?儂、駆け出しン頃、世話ンなっちょるし、今でも時たま連絡とりよるし、兄やん物知りで顔広いけん何か知っちょるかもしれんばい?」
「あ~“死霊使い”のレオ丸和尚か!よし!<ハウリング>の件はエンクルマに任す!他にも何か情報引っ張ってこれたらよろしくね!」
これで<茶会>を除く情報収集網は出来た。この場に居ないメンバーには一旦、この件は伏せて集まった情報を精査した上で協力を仰ぐと云う事でその日は解散した。
「さて、準備は整った女子供に悪さする××××共め!チョイとお灸を据えてやりますか!」
PCのモニター前でZippoライターを弄びなが地獄の獄卒も裸足で逃げ出しそうな笑みを浮かべる『伊庭八郎』の中の人…。
ーキャラクター 紹介ー
ヘルメスLV90 メイン職<吟遊詩人>サブ職<裁縫師>狐尾族/女性
残念職三人組の頭脳労働専門、ただ間延びした口調の為か一番頭が悪いように思われがち、唯一戦闘お馬鹿では無い、他の2人に言わすと守銭奴。理由として狩り場やクエストは『レア』アイテムや素材が手には入るゾーンを好む(モンスターも金貨を多くドロップする物を好む)装備品には頓着が無い為サツキの着せ替え人形扱い。一応形だけとはいえ<第8商店街>所属。サブ職で地道に金銭を稼いでいる。キャラクター名はオリュンポス十二神「商業」と「音楽」の神様から。リアルではお寺の住職の娘にして眼鏡っ娘!眼鏡っ娘!(大事な事なので2度書きます。)
ゾーン捏造
<トキオ闘技場>
弧状列島ヤマトにある『4大闘技場』の一つ公式PVP大会の予選や公式でも小規模大会などで使われる事が多い(本戦はPVPの聖地ナゴヤ闘技場)一定額を課金すると時間単位で貸し切る事が出来るので個人主催でのPVP大会などが盛んに行われて居る事で有名。地下にはかなり深いダンジョンがあり、その最深部にある闘技場には『ユウジロウ=ハンマ』と名乗るチートのNPC武闘家が居るという都市伝説があるが真偽は不明。所在地は現実世界の東京ドーム辺り。




