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入団試験?~case2サツキさんとヘルメスさんの場合その3~

2014年5月9日加筆修正

「大体!貴方達にはデリカシーと云うものがないのですか!」


 普段、理知的で温厚なレザリックの一喝でホールは静まり返った。暫く沈黙がその場を支配するがギルドマスターアイザックの一言で沈黙は破られる。


「で?何で義盛はネナベやってんだ?」


「アイザックくん、私の話を聞いてました?」


 最大限に怒気を抑えたレザリックの説教がこの後暫く続く。



■ ■ ■


「ごめんね~、<黒剣騎士団うち>の野郎共は馬鹿ばっかりで…。」


 申し訳無さ気に謝罪する八郎。


「あ~もうお姉さん気にしないで下さい~♪厄介事持ってきたのは私たちですし…」


 普段、何処か緊張感に欠けた話し方をするヘルメスだが、珍しく申し訳無さ気な口調になる。


「まぁ、話せって云ったのは私だから兎に角、事のあらましを教えてくれるかな?」


「「はい…」」



■ ■ ■



 事の始まりは数ヶ月前、義盛が<黒剣騎士団>に入団する前後の話らしい。


 トキオ闘技場で行われたあるギルド主催の非公式PVP大会にて、サツキが主催ギルドの幹部を尽く負かし、上位に入賞した。大会終了後、主催ギルド<猛虎七星流もうこひちせいりゅう>ギルドマスター(館長とギルド内では呼ぶらしい)から幹部待遇で迎えるので『彼女』になれと迫られたらしい。


「はぁ~?なんだそりゃ?実際会った事もないのに『彼女』になれだぁ~?バカじゃねぇのか!?」


「はいはい!皆ツッコミ処は同じなんだから黙って最期まで聞きなさい!このバカザックめ!」


 アイザックの云うことも最もだが、話はまだ続く。


 その後、勝手にフレンドリスト登録されたらしくログインする度に執拗に迫って来てはこちらから聞いてもいない自慢話をしたり、連絡先を教えるように強要されたのだとか。

 <猛虎七星流>館長“桜花おうか”曰わく、自分は<D.D.D>のリチョウの一番弟子で<D.D.D>や<ホネスティ>、関西最強と云われる戦闘系ギルド<ハウリング>などに太いパイプを持ち、大規模戦闘レイドには<猛虎七星流>から傭兵として何人か派遣したとか、『バケモノの巣窟』と云われる<放蕩者デボーチェリ茶会ティーパーティ>に数人スカウトされただの真偽不明の自慢話をされ、そんなギルドの幹部に迎えてやる上に館長の彼女にしてやるんだから有り難く思え。更に住所、氏名、年齢、携帯、メールアドレスを教えろと付き纏ってきたらしい。見かねたヘルメスが嘘のパーソナルデータを教えると、今度は自分達はその街で有名な暴走族の幹部OBで、一声掛ければ100人の後輩が集まるし、幼少期に通っていた空手道場は師範代を半殺しにして破門されたので名前を出せばヤクザも道を避けて通るとうそぶく始末。それでも断り無視を決め込むと諦めたのか勧誘には来なくなったそうだ。

 その代わり<WTS>というギルドから襲われるつまりPKに遭うようなった。最初は多勢に無勢でされるがままだったが危うい処で<猛虎七星流>館長“桜花”が<WTS>を1人で倒し危機を救ってくれたらしい。

 しかし余りに出来すぎた一連の流れに不信感を抱いたヘルメスが礼もそこそこに退散しようとすると『保護』を名目に今度は2人揃って勧誘されたそうだ。


「まぁ、丁重にお断りしたんですけど。言葉を理解するだけの知能がないのでしょうか、その後も散々勧誘されましたわ…。」


 サツキの言葉が辛辣になるのも無理はない。その後もログインする度に<WTS>に襲われ、それを<猛虎七星流>のメンバーが助けに入るの繰り返しで現在に至るのだから・・・。


「・・・ネットストーカーって奴かよ・・・。」


「典型的自作自演じゃない・・・。」


 アイザックと八郎がげんなりした口調で呟く。


「つーかサツキちゃん<付与術師エンチャンター>だろ?PVPで<付与術師エンチャンター>に負けるって相手は同職?それとも低レベルプレイヤー?」


 無遠慮にわんこが質問するが、その言葉に不快感も示さずサツキは云う。


「相手のLVは90、メイン職は<武闘家モンク>です。確かに相手はプレイヤースキルの低い方でしたが・・・。」


一同「「「「「嘘っ?!」」」」」


「嘘じゃないですよ、お嬢の強さは私とヘルメスが保証します。」


 何とか精神的に復帰した義盛が更に言葉を続ける。


「お嬢、最近のPVPの動画撮ってたら私ん処にメールでURL送ってくれる?百聞は一見にって云うしギルド掲示板に貼って観てもらうのが早いと思う。」


「判りました。ちょっと待って下さいね。」


 暫く義盛、サツキ、ヘルメスの3人だけでのやり取りの後、<黒剣騎士団>ギルド掲示板に動画サイトのURLが貼り付けられた。その場で動画を視聴したメンバーは言葉を失う。




 「「「「「何コレ・・・」」」」」


 その動画は余りに異質だった。間違いなくMMORPG<エルダー・テイル>のPVP動画なのだが映っているのはシューティングゲームばりに光弾を連射するサツキと徐々にHPを削られる対戦相手。最終的には<ソーンバインドホステージ>と<キーンエッジ>そしてサツキのサブ職<剣闘士>の特技発動でトドメをさして対戦終了。メイン職12職中最弱と云われ、1人では何も出来ないと云われる<付与術師エンチャンター>しかし、サツキはその常識を覆しかねない事をやってのけているのだ。(後々に『スプリンクラー』と呼ばれる<付与術師エンチャンター>のビルドのハシリとなる。)


「今でこそ戦闘お馬鹿で2人とも強いですけど、<付与術師エンチャンター><神祇官カンナギ><吟遊詩人バード>って不人気職だとかぁ残念職とか云われるじゃないですかぁ♪駆け出しの頃から私ら一緒だったからよく『残念職の三人組』って馬鹿にされてたんですよぉ~♪ねぇ?ヨッシー、サツキィ~♪」


「「誰が『戦闘お馬鹿』よ!守銭奴!」」


 余りのビックリ動画に衝撃を受ける一堂を余所に漫才?を始める3人娘。茶化したヘルメスからすれば、色々と重苦しくなった場の空気を変える為だったのだろう。一瞬にして場が和み、苦笑する者、爆笑する者様々だ。ただ、総団長アイザックと伊庭八郎の2人を除いて・・・。



ーキャラクター 紹介ー

サツキLV90 メイン職<付与術師エンチャンター>サブ職<剣闘士>法儀族/女性

義盛、ヘルメスとは駆け出しの頃からの付き合い(ヘルメスとはリアル幼馴染みで同じ高校の同級生)元々シューティングゲーマーで、<エルダー・テイル>を始めるにあたり魔法か射撃武器で『連射』可能なメイン職を攻略サイトなどで調べ『連射を出来る可能』があると踏んでメイン職に<付与術師エンチャンター>を選んだ変わり者、自力で後に『スプリンクラー』と呼ばれるビルドの雛型を作ったこだわりの人でもある。基本的に後衛支援職の<付与術師エンチャンター>なのに前線に出て殴る残念な一面も・・・。義盛が『お嬢』と呼ぶようにリアルお嬢様で口調はロールプレイではなく素。

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