入団試験?~case2サツキさんとヘルメスさんの場合その2~
今回でPK戦終了です。でも、まだ話の序盤という・・・(汗)
2014年5月9日加筆修正
「ヨシくん、『この方々』はさっきのbot擬きとは違うんで油断しないで下さいね。」
一旦、戦線から後方に下がりながら義盛に告げるサツキ。義盛も新たに湧いて出た24人の一部が明らかにさっきのbot擬きとは違う事に気付き相手の様子を窺う。先程、戦斧を投げて来たのはドワーフの女<盗剣士>LV90あと4、5人LV90の<暗殺者>や<森呪遣い>などが散見出来る。その他はLV50~78くらいで最初の10人と変わらない無個性な感じの一団だ。義盛は最初から感じた違和感を口にする。
「ねぇ、お嬢、ヘルメス、コイツら何時も無言なの?テキストチャットも使わないの?」
義盛の云う通り彼女ら(最初の10人から今立ち塞がっている24人含めて)は一切の言葉を発しない。このボイス・チャット主流の<エルダー・テイル>で一切言葉を発しない、ましてやテキストチャットすら使用しないでプレイするプレイヤーなど居るのだろうか?『念話』でお互いに連絡はしているかもしれないが、矢張り無言のPKとは異様なものだ。
「ん~♪多分、意図的に使ってないよコイツら~♪挑発何度かやったけど、それでも一言も発しないのなぁ~♪」
「あんたの挑発で動じないって・・・奴らは鋼のメンタルの持ち主か!?」
まるっきり関係ない処で関心していた義盛に<暗殺者>が襲いかかる。<デッドリーダンス>を仕掛けるが<禊ぎの障壁>が尽く斬撃を阻む、習得レベルは初伝なのか大した威力はない。やはり何かが不自然である。余り不自然過ぎて攻撃の手が止まる。
(何だろうこの違和感・・・何かがオカシイ・・・。)
この一瞬の隙を彼女ら?は見逃さなかった。後方からの<妖術師>の範囲魔法、弓<暗殺者>の狙撃、前衛<盗剣士>の<トマホークブーメラン>が義盛達に襲い掛かる。
「<護法の障壁>!」
咄嗟ではあったがなんとか<護法の障壁>で全ての攻撃を防御した、しかし3対24の数の有利は覆しようがない。短時間で作戦立てしたとしても殲滅は無理、出来る事と云えば正面から敵陣を突破してアキバに逃げ込むのが関の山であるが、果たしてそれも上手く行くかどうか。
「貴様達ゃ、<黒剣騎士団>の仲間ば囲んでなんばしょっとか!ぼてくり転かすぞコラァ!!」
云うが速いかサブ職<傾奇者>の特技<名乗り>でPKの一団から敵愾心を一身に集める<黒剣騎士団><武士>エンクルマ、愛槍『人外無骨』を構え戦闘体制をとる。
一瞬、沈黙がその場を覆うが1つの嘲笑がその沈黙を破る。
「ブハッ!コイツ何処の田舎者?今の日本語なの?受ける~♪」
「「馬鹿!喋るな!」」
今まで、一切無言だった一団の数人から声が漏れる、アバターは女性だが声は明らかに男性の声。
「貴様達ゃネカマか!?ネカマに馬鹿にされる覚えはなかぞ!」
激昂するエンクルマの左右から旋風の如く駆け出しPKどもを斬り伏せて行く猫人族の<武士>昨日のわんこと深紅の髪をなびかせるハーフアルヴの女<武士>伊庭八郎。
「義盛!手前ェ!やっぱり友達って女の子じゃねーか!こん畜生!」
「この馬鹿わんこ!今突っ込むべきはそこじゃないでしょ!義盛!何?このネカマの群は?」
「何?って聞かれても私も何がなにやらなんですが・・・、兎に角、八姐、エンクルマさん、わんこ!助太刀ありがとうございます。」
たった3人助太刀が増えた処で数の有利は変わらないのだが、この不意の助太刀に<WTS04>のメンバーは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。数に恐れをなした訳でも<黒剣騎士団>の名に恐れをなした訳でもなく、何らかの不都合が発生したような、そんな退散の仕方だった。
「何ねぇ~?もう逃げたとね?儂の出番ないやん・・・馬鹿らしか~・・・。」
振り上げた拳を振り下ろす前に相手が退散したとあって、不満全開のエンクルマ。実は今回一番の殊勲賞モノの働きをしている事に彼は気付いていない。怖ず怖ずとサツキ、ヘルメスが歩み寄り真っ先にエンクルマに礼を述べる。
「<黒剣騎士団>のエンクルマ様、今回は誠にありがとうございます。貴男のお陰でやっと彼等の『尻尾』を掴めました!あとのお二方も助勢ありがとうございます。」
「重ね重ねになりますけど、本当に助かりましたぁ♪私もサツキも本当に困ってたんですよぉ♪ありがとうございます。エンクルマさん♪と八郎さんとわんこさん?」
全く戦闘に参加してない自分が真っ先に礼を言われ返答に困るエンクルマ。
「儂ゃ、姐やんやわんこンごつ戦闘に参加しとらんばい?順序から云うたら姐やん達に礼を云うのが筋やなかとね?お嬢さんらは?」
「ちょっと事態が飲み込めないけど、あのネカマ軍団に『喋らせた』事が重要だった・・・って事かな?え~っとサツキちゃんとヘルメスちゃんだっけ?」
「・・・なんで義盛の野郎が女の子2人も連れて白馬の王子さまやってんだよ・・・羨ましいなぁ・・・」
なんとも三者三様の返答(わんこのそれは明後日な方向だが・・・)であるがやはりと云うべきか八郎の勘は鋭い。
「八郎お姉さんは勘が鋭いですね~♪でも、奴らが『喋る』のは予想外だったし、本当にこれで1つ奴らの『尻尾』掴めたんでエンクルマさんには本当に感謝してますぅ♪」
「何?この可愛い話し方?義盛マジ死ね!リア充爆発四散しろ!」
わんこの明後日な妬みが非常に面倒くさいが、どうもエンクルマの方言が意外な処で役に立ったらしいし、八郎の勘は十中八九当たりのようだ。
「わ・ん・こ・だ・ま・れ!で、<黒剣騎士団>のメンバーも襲われてるし、そのメンバーの友達も襲われてる・・・、どうにも引っ掛かる事があるからちょっとお姉さんに事の次第を教えてくれる?場合によっては何とかなるかもよ?」
「黙れって、八姐ぇ非道い・・・。義盛だけ『両手に華』なんだぜ?エンクルマの兄貴もなんか云ってやってくださいよ~。」
「まぁ、確かに羨ましいばってん・・・イヤイヤ!そげん事や無かろーもん、話しの腰ば折るなや!馬鹿ちん!」
エンクルマの云う通り、わんこが1人で話の腰を尽く折るので話が進まない・・・。
「・・・ヨシくん、もしかして皆さんに『まだ』云ってないのですか?」
サツキが義盛に何事かを質問する、義盛は躊躇いながら小さな声で『…うん』と呟く。
「あ~♪そういう事かぁ~♪あのですね、皆さん!『ヨッシー』否、この『義盛』はですね。声はアレだし、アバターも男だから誤解される事、多々ですが私達と同い年の『女の子』なんですよ♪」
「前々から声の所為で散々誤解されてるんですよ。この娘…」
「「「えっ?」」」
「・・・云ってませんでしたが私、女子高生です・・・。」
「「「…えぇ~??」」」
その場に居た<黒剣騎士団>のメンバーが同時に絶叫する・・・。
■ ■ ■
本拠地アキバ郊外某所。
「館長すみません!<黒剣騎士団>に邪魔されて失敗しました。」
ドワーフの<盗剣士>が恐る恐る云う。その報告を館長と呼ばれた猫人族の<武闘家>が苛々している事を表すエモーションをアバターにさせながら聞く。
「声を聞かれたのは不味かったが、正体がバレたところで『証拠』が無いんじゃ向こうも動けねぇしGMも動かねぇよ・・・。」
「押忍!しかし、<黒剣騎士団>と我々は交戦しましたが大丈夫なんでしょうか?」
<盗剣士>が更に言葉を加えるが鼻で笑われる。
「<黒剣>?最近、幻想級アイテム1つ手に入れてはしゃいでる馬鹿共だろ?別に支障はねぇよ・・・。」
<猛虎七星流>ギルドタグの<武闘家>と<WTS04>のギルドタグを付けた<盗剣士>彼らの目的は・・・。
はい!既にお気付きの方も多々いらっしゃったと思いますが『義盛』くんは女の子です。やっとその事に触れられた~!!!やったー!!! 寧ろ長かった・・・。
そして捏造設定で勝手に動いてくれております。『昨日のわんこ』さん。はたしてどれくらいの読者様が『エンクルマ』の方言を解読出来ているのやら・・・。




