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CROWN  作者: 緒俐
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第五話:魔法格闘技部

 魔法格闘技。それは試合時間四十分の中で魔法を身に纏った武術を駆使し相手をダウン、または一般的な格闘技のように判定によって勝敗を決めるスポーツだ。


 ただ、一般的なスポーツと大きく違うことがある。その一つに本物の武器の使用が可能であること、そしてバスケットコートより若干広い試合スペース、魔法格闘技ではフィールドと呼ばれているが、そこで刺し傷や銃弾などを受けたとしてもフィールド外では傷は塞がり無傷となることだ。

 極端なことを言えば、ダメージはあってもフィールド内での殺人は余程のことがない限り不可能という訳である。


 かといって魔力を消費すれば当然疲労は残り、大量出血の場合もフィールド内で止血しておかなければ貧血を起こす。当然、精神的なダメージは無効化するわけではない。

 審判と各校の監督や隊長クラスはその状況の防止に努めはするが、中にはフィールド内なら何をしても構わないと非道に走る者がいるのも事実。


 しかし、そのリスクを全て承知しながら魔法格闘技に青春を費やす学生が多いのも事実だ。理由は簡単、誰よりも強くなりたいと思うからだ。



 ロードワークから一軍専用の体育館に戻ってきた中一組は、一軍及びスタメン昇格のテストを受けるため入念にストレッチを行っていた。約一名、子犬化してペタリと倒れているものがいるが……


「さすが全国クラス、フィールドの広さも試合と同じって訳か。しかも二つあるってハンパないっスね」


 通常の体育館の二倍の広さを持つそこに昴は感嘆の声を上げた。おまけにベンチまで設置されているのだから試合会場と何ら遜色ない。違うところといえば二階の観客席が無いことぐらいだろうか。


 そしてそんな感嘆の声を漏らす昴に前屈しながら雅樹は答えた。


「みたいだな。だけどここを使えるのは一軍のみ。負ければ小さなフィールドのある体育館に直行らしいぜ」

「無理矢理人を入部させておいてニ、三軍扱いなんて御免っスよ! それに杏ちゃんが風雅とかいう訳の分からない奴に掻っ攫われるのも嫌っスから、俺があいつに勝ったら杏ちゃんと一緒に抜けさせてもらうっス!」

「いや、絶対無理だからやめとけ……」


 間違いなく血を見るのは昴だから……、と雅樹は心の中で付け足した。なんせ風雅の実力は全てにおいて中一組を凌駕しているからだ。


 せめて魔法格闘技の実力ぐらい風雅の足元に及べば良かったのだが、残念ながら彼との差はたった一年でより離されてしまった為、もはや絶対逆らうことが出来ない存在になってしまったのである。


 そして、子犬化して倒れていた陸もテスト前だからと通常の体型に戻り会話に加わった。


「昴君」

「何スか、陸ちゃん!」


 すっかり陸に懐いた大型犬はパアッと華やかな笑みを浮かべ、フワフワな尻尾を振って陸の元に駆け寄った。お手、とでも言えば間違いなくやってくれるのではないかというぐらい陸のことが好きらしい。


 ただし、今日一日で教育係もとい、飼育係が定着した陸は相変わらずな無表情でも、昴のことを思って忠告しておいた。


「いいですか、格下ならともかく、上級生に魔法格闘技で挑む時には絶対僕無しではやらないで下さい。君はまだ初心者です、確かに魔力も体力も僕の倍はあるでしょうけど明らかに経験値が違う。それを忘れないで下さいね」


 魔法格闘技には怪我は付き物。外傷は全て無効化される空間で戦うといえども、それ以外の危険性も当然ある。だからこそ初心者である昴を一人で戦わせたくはなかった。


 しかし、いくら懐いているとはいえども、どこからどう見ても弱者である陸の忠告に説得力は欠けていた。昴は眉尻を下げ、心配してくれることは有り難いのだが……、といった表情を浮かべる。


「……陸ちゃん、言っちゃ悪いとは思うんスけど、どう考えても俺より陸ちゃんの方が危ないとしか思えないっス。そんなに小さな身体で魔力も体力もないとなれば魔法格闘技では明らかに不利っス。だから怪我をする前にだぁ!!」


 それ以上は言わせないと雅樹は昴の背中を蹴り飛ばし、彼は思いっきり床に額をぶつけた。そして額を抑えながら涙目になって抗議する。


「いったあ!! 何するんスか、雅ちゃん!!」

「お前が俺の相棒を馬鹿にしたからだろうが! 陸を見た目だけで判断してんじゃねぇよ! このボケッ!!」

「したくないっスけどロードワークに行って途中でヘバるような体力しかないじゃないスか!!」

「そりゃ、そうだけどよ……」


 否定もフォローも出来ないのは正にその通りだからこそ。陸の体力は一般男子中学生の平均並、筋力や魔力は平均以下といったところ。

 ただし、魔力に関してのコントロールは平均以上であったのと学力も高めという理由でギリギリ特進クラスに滑り込んだというレベルだ。


 しかし、いくら陸が魔法格闘技が好きであろうとここは強豪でこれから行われるのは一軍とスタメンの選考。どう考えても陸が危険だとしか思えない昴はキッパリと言い切った。


「とにかく、俺は訳も分からず怪我をするのもさせるのも嫌っスよ! だから杏ちゃんも陸ちゃんも俺の好きにさせてもらうっス!」

「だから陸は俺の相棒だって言ってんだろうがっ! マジでシバくぞ!!」


 その会話に涼は耳を傾けると昔から聞き慣れてきた応酬が繰り広げられており、彼はまたかと溜息を吐き出すのだった。


 そして小柄ながらも、いかにも体育会系といった容姿と精神の持ち主である修平は涼が溜息を吐き出す以上に心中でうんざりしていた。

 彼が聞かされている内容は、今日のテストを受ける一年生に問題があるということだ。


「修平、一体どういうことだ? 何であんな奴らがスタメンテストを受けられるんだよ!」

「そうだ! いくら特進クラスでも一年で一軍にでもするつもりかよ!!」

「大体、女達とあの軟弱、さらには初心者なんて随分嘗めた真似をしてくれんじゃねぇか!」


 彼等の言い分はもっともだ。今年の一年生の素質が高いということは風雅から貰ったデータで確認しているのである程度認めてはいる。事実、彼等の魔力は文句を言う者達より確実に高い。


 だが、どう考えても陸が強いとは思えなかった。彼が特別にスタメンテストを受けられるように推したのは風雅の権限からだ。おまけに「見なければ説明が付く戦闘タイプではない」と言われた始末なのだから。


 どうフォローすべきか……、と我が道を突き進む主将に内心溜息を吐き出しながらも、とりあえずこの場を収めることにした。


「文句があるなら俺じゃなくて風雅に言って下さい。それに戦ってみれば分かることじゃないスか」

「戦う前から納得いかねぇんだよ! スタメンテストを受けたくても受けられない奴、一軍から落とされる奴もいるのに贔屓だけでやられたらたまんねぇよ!!」


 それだけ自分達は努力してきた、そういう思いが分からない訳ではないが、ならば陸達がどれだけのものと戦って来たのか知らないだろうと涼は思う。


 才能もない、体格も魔力も恵まれていない、それでも努力を重ねて来た陸に浴びせられる暴言の数々。それを聞いていた涼は苛立ちを覚えたが蓮は動くなと目で制す。

 ここで動いて問題を起こすことを陸が一番望んでないと分かっているからだ。


「とにかく風雅の贔屓をやめさせ」

「誰がいつ贔屓したって?」


 空気が凍り付いた。振り返ればそこには主将として厳しい顔付きをした風雅が腕を組んで立っていた。

 自分や三年生達より体格も小柄だというのに、風格だけで他を圧倒してしまう姿は流石だと蓮は思う。さらに風雅が一歩前に進み出れば修平を除く全員が後退するほどだ。


「ふ、風雅……!」

「俺と一年についての抗議だろう? 聞くだけは聞いてやるからさっさと吐け」


 拷問だ……、とそれを聞いていたほとんどのものがそう思った。聞いてくれるのは有り難いが、その刺すような視線は本気でなんとかならないかと思う。

 しかし、答えなければ命にも関わるため三年生達はグッと意を決して抗議した。


「だ、たがら一年生を贔屓して……」

「推薦はしたが贔屓するつもりはさらさらない」

「じ、実質してるだろ? あの一年共……」

「そっ、そうだ……、慎司さんの弟や学年総代がスタメンテストを受けるのは分かるが……」


 段々小さくなる声は風雅に逆らうことが出来ないから。一つ年下で自分達より少し背が小さい相手だが、半端ない威圧感と風格は周囲を従わせ逆らうことを許さない。

 それは彼が入部した当初から発しているもので、彼と対等に話せたものは昨年のスタメン達ぐらいなものだ。


 しかし、彼は逆らうことは許さなくても物事を聞かない主将ではない。中一組のことはおそらく修平でも若干納得いかないところはあるだろうと分かっていたため、誰もが納得する答えを返した。


「だったらあいつらと勝負すれば納得するんだな? それにお前達が勝てばどの道あいつらは二軍以下だ。特に陸に関してはチャンスが一度きりだと分かるだろう?」


 魔法格闘技の才能がとてもあるとは言えない、つまりここで認められなければ終わりだと言い切られては誰も文句は言えなかった。

 そして全員が俯いたのは了承だと受け取り風雅は解散を告げた。


「分かったら各自テストに備えろ。実力がない奴を一軍に昇格させられるほど今年は席に余裕がないからな」


 それだけ今年のスタメン争いが苛烈だということ。ここに集められたメンバーも軽く四十人は超えており、一軍昇格は良くて二十人前後、うち団体戦のスタメンはたったの六人だ。


 もちろん個人戦やダブルスといった試合形式もあるが、それこそ団体戦も兼任している猛者が大抵出るため、一軍といえども公式戦に出れるのは一握りしかいないというのが事実だった。


 そして部員達が散っていった後、相変わらずな風雅に修平は肩を竦めて尋ねた。


「風雅、良いのかよ……」

「気にするな、どの道やれば分かることだ。駿も構わないだろう?」


 風雅の視線の先で座ってストレッチを続けていたいかにも優美で優雅、綺麗な女子でも敵わないほど端正な顔立ちをした美少年、間宮駿は微笑を浮かべてそれに同意した。


「そうだね、ルーキー達がどこまでやれるかは見ておきたいし、風雅が無意味なことをしないのも分かってるしね」

「お前は風雅を信用し過ぎ」

「修平がしっかりしてるから安心してるんだよ。風雅もそうだろう?」

「ああ、気は抜けるからな」


 そう言ってクスクス笑う二人に修平は額に手をやった。この頭脳派な癖して、後のことはどうにかなると思う二人に修平は毎回振り回されていた。


 去年は涼の兄である慎司が常識人だったおかげでこの暴君と天然を何とか出来ていたが、今年はこの二人をどうにかするのは絶対無理だと思っている。蓮が加われば少しは何とかなるかもしれないとは思うが……


 その時、体育館の入口に青いジャージを着た杏が部員達のドリンクと備品を台車に乗せて入って来た。急いで来たのであろう、若干息切れているが彼女は風雅の元へ向かって来ると穏やかに微笑んだ。


「風雅様、お待たせいたしました」


 そう杏に告げられた瞬間、修平はかつてないほど驚いた! なんと、あの風雅が女子に向けて有り得ないほど優しい笑みを浮かべたのだ!

 だが、それだけではなく、彼は台車に乗せてきたドリンクや備品の数々を運ぶ手伝いまでし始めた。あの全てにおいて人を利用し服従させる風雅様がだ!!


「すまなかったな、杏。重たかっただろう?」

「いえ、とんでもございません。お手伝いして頂きありがとうございます」


 風雅が女に優しい……、しかも下の名前で呼ばせているとは一体どういうことだと誰もが驚きを隠せなかった。


 風雅という人物は藍や真理を除く女子は煩わしいといわんばかりに全て流してきた主将だ。他のマネージャーも業務以外のことは全くと言って話さないというのに、この目の前にいる儚く可憐な美少女にはまるで逆の対応だった。


 そのあまりの変貌ぶりに、修平は動揺を隠し切れずに上擦った声で尋ねた。


「ふ、ふ、風雅!! そいつは……!!」

「俺の彼女だ」

「風雅様っ!!」

「すまない、婚約者と言った方が良かったか」

「なっ……!!」

「ふ、風雅様っ……!!」


 つまり犠牲者なんだ……、とやけに駿は落ち着いてこの状況を理解した。それと同時に杏を出来る限り守ってあげようとも思った。ただでさえも暴君なのにその上からかわれては不敏でしかない。


「じゃあ、君は新しいマネージャーかな?」


 男子にしては綺麗だと思った。風雅に対しては絶対服従といった緊張感を持たされるが、駿は穏やかさの中に気品があるといった印象を持たされた。ただ、とても優しい人だと分かる。


「は、はいっ! 杉原杏と申します、宜しくお願いします!」

「うん、宜しくね、杏ちゃん」


 ニッコリ笑いながら杏の頭を撫でる様は間違いなく兄と妹の関係を体現していた。これぞ正に理想の兄妹像といった光景だと部員全員が納得するほどしっくり来る。


 ただしこれを見て面白くない訳ではないが、風雅の独占欲を若干刺激するには充分だった。


「駿、俺のものにあまり触るな」

「ああ、ゴメン。妹がいたらこんな感じかなって思ったんだ。出来たら駿お兄ちゃんって呼んで欲しいな」

「呼ぶんじゃねぇぞ、杉原」


 それだけはダメだと修平は遮った。あくまでも部活、守れる先輩後輩関係を崩すわけにはいかない。風雅にいたっては諦めなければ試合結果はもちろん、部員達のコンディションに関わるので言えないが……


 そして修平は杏の前に立ち、いかにも威厳のある体育会系の上級生といったオーラを放ちながら命じた。


「俺は副主将の平岡修平だ。修平先輩か副キャプテンと呼べ!」

「はい、修平先輩」

「うっ……!」


 何だこの笑顔は! 一瞬にして可愛いと思わせるこの表情に修平は若干顔を赤く染めた。

 基本、修平は女子より魔法格闘技という性質だが、杏はそういった理念にも近いところを崩して来るほど可愛いとしか言えなかった。


 だが、修平でさえそんな反応だというのに健全な男子中学生が平然としていられる訳がない。自分達も親しくなろうとする上級生達が杏に話し掛けようとした瞬間、殺気しか篭ってない視線で彼等は心を折られた!


 しかし、それに全く怯まなかったのがお兄ちゃんポジション希望の駿だった。彼はクスクス笑いながら風雅を宥める。


「風雅、やり過ぎだよ」

「すまない、婚約者だと言ったのに聞こえなかったバカが多くてついな」

『独占欲強過ぎだろ!?』


 部員達はそう心の中で突っ込んだが、中一組は口説いた瞬間に命を落とすとまで悟った。陸にいたっては杏にご愁傷様と心の中で合掌しているほどだ。


 だが、風雅の忠告はそれだけでは終わらなかった。当然、修平の一瞬だけの動揺にも釘を刺すことは忘れない。


「修平」

「な、何だよ……」

「杏が可愛いと思うのは当然だから許してやるが、他の奴らのように口説こうとしたら二軍に降格させるからな」

『副主将でスタメンなんだけど!?』


 杏一人でそこまで自由に降格させてもいいのかと部員達はまたもや心の中でツッコムが、中一組と駿の脳裏に過ぎった言葉は同じだった。


 そう、この部の鉄則の「風雅様の命令は絶対」である。


 しかし、一言だけ反論しても半分の確率で命の危険性がないのは副主将の特権らしく、修平は呆れたようにぼやいた。


「駿はいいのかよ……」

「オレはお兄ちゃんだから良いんだよ」

「そういうことだ」


 去年から同じチームメイトとして仲良くなりはしたが、風雅と駿のマイペースぶりに修平は未だに苦労していた。けっして性格が相容れない訳ではないが、時々全て投げ出してやりたくなるのは事実だ。


 そんなやりとりを傍観していた蓮は杏にはもちろん同情するが、修平にはそれ以上に同情した。これで自分達の面倒まで見ろとはとても言えないため、まずはこちらの問題をさっさと解決することにした。


「真理、そろそろあいつら黙らせてくれないか?」

「そうね」


 両腕にアームバンドを装着し、真理は未だにギャーギャーと言い争っている雅樹と昴の元に行くと、二人の腕をガシッと掴んだ。そして、ニッコリ笑って一言と一撃。


「黙れっ!!」

「ダアッ!!」

「ギャア!!」


 威力は鉄拳、おまけに蒸気の立ち上るたんこぶ付きがお見舞いされる。


「あんた達、いい加減にしなさい! いくら陸がいるといっても頼り過ぎるわけにはいかないんだからね!」

「真理……」

「真理ちゃん、痛いっス……」


 一撃で黙らせたことに蓮はこれでいいだろうと頷くが、何度か真理の鉄拳を受けたことがある涼は同情した。あれは半端なく痛い、おまけに心も折れる。


 ただし、心の問題といえば先程から弱いとばかり評されていた陸の方が涼は心配だった。いつものことだと本人は無表情で答えてくれるが、傷ついていない訳がないと彼は藍と共にいた陸の方に視線を向けた。


「りっくん、気にしてない? 大丈夫?」

「ええ、心配いりませんよ。慣れてますし、僕一人で勝てないのは事実です。でも、皆がいれば負ける気がしません」


 パアッと藍の周りに艶やかな花が咲いた! このこちらが悶えるような微笑みは反則以外の何物でもなく、彼女はハートを飛ばしながら陸をギュッと抱きしめた!


「当たり前だよりっくん! 私もりっくんさえいたら絶対負けないもん!」

「藍さん、嬉しいですけど涼君がヤキモチ妬いてしまいますから離して下さい」

「あっ、いけない! だけど涼にはあとから抱き着くから問題ないかな」


 そこは忘れないんですね……、と相変わらず涼に思いを寄せる藍に陸は感心する。


 恋する乙女は強い、といつも彼女は言っている訳だが、強過ぎるのもどうなんだと突っ込むのが雅樹。

 ただ、それだけの強い思いをいつも涼はきちんと受け止めている。藍が淋しがり屋だと知っているから、と妹のように見ているからではあるが……


 そんな喧騒が一段落し、部員達が各々集中力を高め始める。風雅も軽く柔軟を熟した後、試合の対戦表を確認している杏に告げた。


「さて、そろそろ時間だ。マネージャー、特にあいつらの動きと実力、きっちり見ておいてくれよ」


 緊張感を含んだその顔は魔法格闘技部の主将のもの。魔力も安定しており、いかに真剣に魔法格闘技に取り組んで来たのかが分かる。

 だからこそ、杏はその場の雰囲気に合わせて答えた。


「はい、主将」

「違う、そこも名前で呼べ」

「えっ!? では……風雅隊長、でしょうか」

「それはあいつらの呼び方だ。普段通りにしろ」

「ですが……」


 さすがにそれはまずいのでは……、といった表情を杏は浮かべた。修平の意見は部活の先輩後輩関係はある程度きっちりするべきだというもの。特に風雅は主将なのだから尚更だ。


 しかし、風雅は譲らないと言わんばかりか、さらにとんでもないことを言い出した!


「常に風雅と呼ばなければ、部活中でもキスするからな」

「なっ……!!」

「いや、寧ろやる気のためには常にしてもらった方が良いか……」

「部内を甘くすんじゃねぇ!! 全員集合!!」


 ふざけんなと言わんばかりの勢いで、修平はその甘ったるい空気を強制的に断ち切った。


 そして、ついにそれぞれの実力が試されるスタメンテストが開始される……




はい、お待たせしました☆

今回は魔法格闘技部がどんなところなのかという説明チックな話に……

しかもまた人増えてるし!


一応自己紹介として、体育会系副キャプテンの平岡修平、杏ちゃんのお兄ちゃんポジションを獲得した間宮駿です。

因みに二人とも中二でスタメン、風雅様とも同じ特進クラスの猛者ですよ〜。


そして次回はやっとバトルかと。

本当は今回持ってきたかったんですけど、残念ながら文字数やばいことになりそうだったので断念。

でも、風雅様や中一組が陸君を推す理由は明らかになりますので、お楽しみに☆




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