Magic
俺は悠とキスをした。
すっごくうれしくて、
だけど辛かった。
キスをしたのに、
付き合ってないなんて。
そんな事を思うと、
苦しかった。
付き合いたかった。
メールの音が部屋に響いた。
悠からだった。
[今何してる?]
おかしい…
悠は、自分からメールは絶対にして来なかった。俺が一方的に好きだっただけだから。
それに俺の事を気にかけてくれてる。
今ならこう思える。
あのキスから、
俺はもう片思いじゃなかったんだって。
それから毎日メールや電話をした。
毎日毎日、カップルみたいに。
そしてついに、
悠の気持ちを聞き出せた。
それはある日の学校での大掃除の事。
中庭の掃除中、落ち葉を拾いながら、
俺は悠と話していた。
そこへ邪魔するかの様に優子が来た。
「何?2人して~もしかしてそういう関係ですかー?」
やめて欲しかった。
悠が「違うよ」って言うのが目に見えていたから。
「……」
あれ?
何も言わない…
「悠好きなの?翔平君のこと!」
今度は真剣に質問する優子。
「わかんない。でも、認めたくないの。」
悠はそう言って他の掃除場所に行った。
「悠は翔平君の事好きだと思う。でも一年の時に香奈といろいろあったじゃん?まだ翔平君のこと信じれてないみたい。」
俺の事を好きなのか?
素直に聞きたくなった。
その夜、悠と電話した。
好きなのか確かめたかった。
「やっぱ俺の事好きになった?」
冗談を交えながらちゃんと聞いた。
「そうなのかな?好きなのかな?」
「どんな気持ち?」
「翔平君とは、どんな事でも出来ると思うよ。キスも、それ以上の事も。んー…出来ると思うって言うか…したい。」
俺は照れながらも相槌を打った。
「でもね、同じクラスに香奈が居るし、付き合ってるってクラスメイトに知られたくないんだ…」
「でも好きなんだよな?」
「多分好き。」
「多分?」
「…いすき」
「聞こえません!」
「だ い す き!!!!はい、もうおしまい!ばいばい!」
電話を切られた。
その瞬間、ふと笑った。
俺は多分相当気持ち悪い顔で笑ってたと思う。嬉しすぎて笑った。
悠と俺は、2人で遊ぶ事が多くなった。
休日はほとんど2人で過ごした。
「私ん家に来ない?」
新築だったからか、
悠が俺を家に誘った。
「行く!」
悠の家に到着。
リビングでテレビを観ながら寛いでた。
キスしたい。
悠が言った言葉を思い出した。
「好きなんだよな?」
「うん!」
「じゃあ、はい!」
彼女からさせようとした。
正直あまり期待してなかった。
だって彼女の方から出来ると思わなかったから。
「じゃあ…行くよー」
二度目のキス。
目を開けると彼女は下を向いてた。
顔を見ると真っ赤だった。
「かわい…」
ポロっと声に出た。
そこからは何回キスしたとか覚えてない。
ただ、たくさんした。
今までの一年間、
俺が片思いして来た分、
したんだと思う。
「幸せだな!」
「うん!幸せ。」
この子と付き合うのは分かってた。
好きになってからずっと分かってた。
そんな気がしたんだ。
この恋の始まりは、
あの時した一回目のキス。
魔法の様に彼女を変えて、
俺たち2人を幸せにしてくれた。
どんな事があっても、
2人ならやっていけるって思ってた。
悠は俺にとって天使だった。
天使だけが俺のそばにいると思ってたけど、
やっぱりいるんだ…悪魔のような女も。