Cheater
千尋の顔は怖かった。
でも同時に悲しそうでもあった。
「うん。クラスのみんなには、ちゃんと話そうと思ってるよ!」
「そーなんだ。」
なんで怒ってるのかは分からなかった。
「おはよう!」
香奈が教室に入ってきて俺のところまで来て言ってきた。
「おはよう!なんかあった?」
「ちーちゃんがね、おめでとうって言ってくれただよ!」
千尋がおめでとうかぁ…
俺もその時はすごく嬉しかった。
「今度の土曜日、家来る?」
香奈から言われてドキっとした。
「いいよ!でも遠いだろー?」
「めちゃくちゃ遠い!」
「んー…じゃあ行く」
って言う2人だけのばかみたいな会話が、
嬉しかった。一緒居れば居るほど好きになっていった。
土曜日。
香奈の家はホントに遠かった。
電車で一時間程度。
駅を降りたら彼女は迎えに来てくれていた。
「田舎って思った?」
「いや、俺のとこも十分田舎だから!」
香奈の家に着いていろんな話をした。
2人ともキスした事がない事、それに小さい頃の話。
帰りの電車を待つ間、
香奈は一緒に駅で待っていてくれた。
「お願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
突然香奈が言った。
「いいよ!何?」
「ハグして。」
「抱擁?」
「抱擁!」
笑いながらハグした。
電車の中、香奈とのメール。
[何で抱擁?(笑)]
[翔平背が高いから、したかった!]
素直に嬉しかった。
この子とずっと居たいって思えた。
あの事を知るまでは…