放課後、2人きりの文芸室で善人会長は毒を吐く
先輩後輩はクソ。
私が言いたいことは、ただ1つ。
産まれた順番が早いだけで偉ぶる先輩も、それに犬のように従う後輩も、クソだということ。
「おはようございます!」
叫ぶように大声を出し、勢いよく頭を下げる野球部の1年生。
それに対し、偉そうな顔をして「うむ」とうなずく先輩。
私は呆れながら通りすぎる。
今日から、この高校の1年生も部活をはじめる。見学じゃなく、正式に部員として。
そして同時にはじまる、クソな関係。
先輩後輩、というクソな関係。
なんで、産まれた順番が早いだけで偉ぶれるのだろう、つくづく私は思う。
かく言う私も1年生。
けど、私はカゲに徹しているから、そんなクソな関係は存在しない。部活にも入っていないし。
「げっ」
『ある先輩』が目に入ってしまい、思わず嫌そうな顔をしてしまう。
「おはよう。今日もいい1日にしようね」
あれは、3年生の生徒会長。
ニコニコと笑み、1年生に声をかける。
『善人』と周りから思われている、生徒会長の女子。
実に優しそうに。それが余計、私をうんざりさせる。
「はいっ」
何も知らず、1年生の女子は笑顔で返す。
まーたやってるよ、と横目に見ながら、私は無言で通りすぎる。
放課後。
「あー、だるっ。会長とかマジだるいわー」
ケッ、と会長、生徒会長。
『善人』と周りから思われている、生徒会長のアオグ先輩。
放課後の文芸室で、アオグ会長は毎日毒を吐く。
本が文芸室にはたくさんある。
しかし、今は文芸部は活動していなくて、誰も使っていない。
それを聞いたとき、私はウキウキしたというのに。1人きり、本屋にも図書室にもない本があるかも、と胸を踊らせたというのに。
入学して初日、アオグ会長が1人きりの文芸室で毒を聞いてしまったのが運の尽き。
「会長とかマジで誰か代わってくれないかなー。3年生とさマジでいい子しないとキツイし、後輩たちは頼ってきやがるし、マジで疲れる」
「善人なんでしょ」
「そ、皆の前では善人」
「じゃ、いいじゃないですか」
「生徒会長部とかないかなー、毎日生徒会長が変わる奴。アタシは顧問でいいや、内申にも問題なし。最高じゃね?」
あってたまるか、そんな部活。
私は本を読みながら適当に返す。
先輩後輩がだるいのもあるし、なんかこのぐーたら会長に真面目に返したくなくて。
「で、何で何も部活に入ってないのかなあ? 私といるのが嫌なんじゃなかったっけ?」
ニヤニヤ、と笑いかけてくる。
「…知りません」
「んー? 聞こえんなー?」
楽しそうな顔をしてくる。
『会長の毒に付き合うのは嫌です。仕方ないけど何か部活に入ります』
と、つい前に言ってしまった。帰宅部に入りますとか言えばよかった。
「アタシのことが好きなんでしょー?」
「大嫌いですよ、善人な会長も毒吐きの会長も」
「えー?」
部活に入らなくても、放課後になったらすぐに家に帰ればいい。それか、図書室に行けばいい。
そうすればいい、それだけなんだけど。
でも、なんでだろう。
先輩の毒を気持ちよく感じてしまう。
善人ぶる生徒会長が2人きりのときだけは、毒を吐いてくれるから、かもしれない。
ありがとうございました。




