最終話 現代の騎士
数か月後、獅子野内閣の支持率は驚異的な回復を見せた。
中世王の直感的なリーダーシップと、杉山の現実的な調整力が組み合わさり、ユニークな政策が次々と生まれていた。
「杉山、この『タブレット』というものは実に便利だな」とレオンハルトは執務室でタブレットを器用に操作しながら言った。「遠くの村の様子も、魔法のように見える」
「それはテレビ会議システムです、総理。ところで、本日はアルカディア――いえ、アルカディア地方の視察です。過疎化が進む村ですが、総理の地方創生政策でIT企業のサテライトオフィスが誘致されました」
ヘリコプター(レオンハルトは当初「空飛ぶドラゴン」と呼んでいた)で地方に向かう途中、彼はふと尋ねた。
「杉山、お前はなぜ私を支え続ける?最初の頃は、明らかに私はおかしかったはずだ」
杉山は少し考えてから答えた。
「総理は変わったかもしれませんが、人々を思う気持ちは本物だと感じました。それに…」
彼は少し照れくさそうに続けた。
「『中世王の現代改革記』というタイトルで、いつか小説を書きたいと思っているんです」
レオンハルトは豪快に笑った。
「よかろう!ただし、版税の十分の一は国庫に納めるのだぞ!かつての王国ではそうだった!」
「それはさすがに……まあ、また税金の勉強が必要ですね、総理」
ヘリコプターが村の上空に近づくと、広場に集まった人々が見えた。
子どもたちが小さな旗を振っている。
「見よ、杉山。あれが我が――私の新しい王国だ」
「はい、総理。でもまずは、着陸後のスピーチの原稿を確認しましょう。『農民たちよ』から始めるのはやめてくださいね」
「わかっておる!『市民の皆さん』だな!」
レオンハルトは窓の外の景色を見つめながら思った。
アルカディア王国は確かに消えた。しかし、ここ日本で、新しい形で国を治める機会を与えられた。
それも、有能な「騎士」のような秘書官に支えられて。
「さあ、行くぞ杉山。新たな領地――いや、地域の視察だ!」
「はい、総理。でもまず、安全ベルトをしっかりと……」
こうして、中世の王と現代の秘書官による、どたばたコメディながらもどこか心温まる改革劇は、まだまだ続いていくのだった。




