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第6話 秘書官の嘆き
杉山秘書官の一日は、戦いの連続だった。
「総理、『国民に直接訴えかけるため』と、街頭演説ではなく、城……官邸のバルコニーで演説なさろうというのは……」
「良いではないか!王は時に、バルコニーから民に語りかけるものだ!」
「警備上の問題が山ほどございます。そして、それは『君主国』の話です」
「では、馬に乗って巡幸は?」
「総理……」
「冗談だ、杉山よ。お前の顔が鉄面皮のようになるのは、なかなか面白い」
そう言ってニヤリと笑う総理の顔は、どこか少年のようでもあった。
杉山は、内心でため息をつきつつも、この異色の総理がもたらす「想定外」が、硬直化した官僚機構を、ほんの少しだけ揺さぶっているようにも感じ始めていた。
総理の「国民と苦楽を共にせよ」という方針(これもアルカディア時代の教訓だと言う)で、特別手当の見直しが進み、それがわずかながらも庶民の支持を集めているという報告を、彼は目にしていた。




