第4話 秘書官の奮闘
閣議後、執務室に戻ると、レオンハルトはぐったりとソファに倒れ込んだ。
「杉山よ、この国は統治が難しすぎる。農民――国民が王の言葉に従わない。貴族――大臣たちがことごとく反対する。アルカディアでは、不服従の者には即刻、地下牢送りだったのに」
「総理、まず『地下牢』という単語をボキャブラリーから削除してください」
と杉山はため息混じりに言いながら、タブレット端末を手にした。
「それと、本日のスケジュールですが、午後は地方創生に関する有識者会議、その後は経済団体との懇談会、夜はテレビ局のインタビューが入っています」
「テレビ?あの箱の中に人がいる魔術か?」
「違います。マスコミ対策です。ここに想定問答集を用意しました。特に『中世並み政策』発言についての釈明が必要です」
杉山はレオンハルトにタブレットを渡そうとしたが、彼は警戒して後ずさりした。
「その光る石板は何だ?魔術の道具か?」
「これはタブレット端末です。総理、本当に大丈夫ですか?昨日の階段での転倒、頭を打った影響がまだ残っているのでは?」
レオンハルトは思わず頭を押さえた。
確かに、獅子野春人の記憶では、2日前に官邸の階段で足を滑らせ、頭を強打したことになっている。
それがきっかけで、中世の王の記憶が融合したのかもしれない。
「……よい、杉山。私は少し調子が悪かったかもしれぬ。いや、悪いかもしれない」
「そうですね。では、今日のインタビューはキャンセルしましょう。代わりに、基本的な現代政治のレクチャーをいたします」




