第3話 中世の知恵、現代の常識
改革は、些細なことから始まった。
ある日、獅子野総理は、閣議後の茶菓子として出された「カステラ」に目を留めた。
「ふむ……これは、我がアルカディアで言うところの『蜂蜜菓子』に似ておるな。しかし、なぜ個々にプラスチックの小箱に入れておる? もったいないではないか。城では大きな台に載せ、皆で切り分けて食したものだ」
次の日、総理大臣官邸の共用スペースに、巨大な一枚カステラとナイフが現れ、
「節約と団結の心を養うため、皆で分けて食べよ」という総理直筆(と称する杉山秘書官の代筆)の通達が貼り出された。財務省の若手官僚が恐る恐る切り分ける姿は、何ともシュールな光景だった。
また、テレビ会議システムには常々不満を抱いていた。
「この鏡に映る者ども、礼もなく、こちらを見ずに書類をいじっておる! 謁見の際は、目を見て話すのが礼儀であろう!」
杉山秘書官は、淡々と但し書きを加えた。
「総理。あれは『資料を確認している』のであって、無礼を働いているわけではありません。また、『鏡』ではなく『テレビ会議システム』です。向こうも総理のお顔はしっかり拝見しております」
「そうか……ならばよい。しかし、わしの顔が見えぬと言うのなら、この玉座(椅子)を一段高くするのはどうだろう?」
「消防法およびバリアフリー法に抵触する可能性がございます。お控えください」




