第2話 中世式統治の失敗
閣議室に入ると、十数人の大臣たちが冷ややかな視線を向けてきた。
「獅子野総理、遅刻は今回で3回目です」と財務大臣が皮肉たっぷりに言う。
レオンハルトは本能的に王としての威厳を見せつけようと背筋を伸ばし、深々と椅子に座った。
「諸卿、集まってくれたことを賞する」
室内が一瞬静まり返った。
杉山がそっと咳払いをした。
「ええと……本日の議題は、少子化対策の追加予算案についてです」
「少子化?」
レオンハルトの眉が動いた。
「それは簡単ではないか。農民――国民に、より多くの子を産むよう命じればよい」
厚生労働大臣がコーヒーを吹き出した。
「総理、それはさすがに…」
「ではこうしよう」
レオンハルトは得意げに続けた。
「第一子を産んだ家庭には小麦1袋、第二子には2袋、第三子には――」
「総理!」
杉山が必死に袖を引っ張った。
「現代では小麦ではなく、児童手当です!それに命令ではなくインセンティブです※!」
(※)目標達成や意欲的な行動を促すための働きかけ
「なるほど…では、騎士――いや、公務員を各家庭に派遣し、子育ての指導にあたらせよう」
「それは保育士不足をさらに悪化させます!」
「個人の自由の侵害です!」
「憲法違反の疑いがあります!」
大臣たちの反対の声が一斉に上がった。
レオンハルトは思わず玉座(椅子)の肘掛けを握りしめた。
アルカディアでは、王の言葉に逆らう者などいなかったのに。
「静まれ!」
彼はつい王様口調で叫んでしまった。
室内が再び静かになった。今度は凍りつくような沈黙だった。
杉山が素早く立ち上がり、
「総理は少子化問題の深刻さを強調したかったのです。具体的な政策案は後日、事務方から提出させます」と取りなした。




